【日本S】オリックス日本一へ、迫られる決断 専門家が分析、8回は「“1人1殺”でもいい」

オリックス・中嶋聡監督【写真:荒川祐史】

ヒギンスは第1戦でも村上に一時勝ち越しの2ランを浴びた

■オリックス 6ー5 ヤクルト(日本シリーズ・25日・東京ドーム)

「SMBC日本シリーズ2021」は25日、東京ドームで第5戦が行われ、オリックスが6-5でヤクルトを破った。3点リードで迎えた8回、山田哲人内野手に同点3ランを浴びて追いつかれたが、9回に代打アダム・ジョーンズ外野手が左翼席中段へ決勝ソロ。1点差の接戦を制して対戦成績を2勝3敗とし、第6戦は27日にオリックスの地元・ほっともっとフィールド神戸で行われる。史上稀に見る大激戦のシリーズで、有利に立ったのはどちらのチームか? 現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が分析した。

目まぐるしい展開だった。オリックスは8回、セットアッパーのヒギンスをマウンドに送ったが、先頭の塩見、青木に連続四球を与え無死一、二塁。続く山田に対しても、カウント1-3とボールが先行した。そして苦し紛れに投げた5球目の真ん中のチェンジアップを、左中間席上段まで飛ばされたのだった。ヒギンスは第1戦でも同点の8回に登板し、村上に勝ち越しの2ランを浴びている。

「ヒギンスの調子が悪すぎました。僕が監督なら、第6、第7戦でヒギンスは2度と使わない。使えないと思います」と野口氏。そうなると、基本的に8回をヒギンス、9回を守護神の平野佳に任せてきた“勝利の方程式”が崩れることになるが、「8回は右の比嘉、K-鈴木、左の富山、能見らを駆使し“1人1殺”でもいい。右肘のクリーニング手術から復活し、この第5戦で5か月ぶりの登板を果たした山岡にも、再び登板機会があるかもしれない」と見る。

ヤクルトのスコット・マクガフ【写真:荒川祐史】

2度目の苦杯をなめた燕守護神マクガフはどうなる?

一方、同点の9回、先頭の代打ジョーンズに決勝ソロを被弾したのは、ヤクルトの守護神マクガフだった。こちらも第1戦の9回に2点リードをひっくり返されサヨナラ負けを喫したのに続く“背信投球”だ。ただマクガフの場合は「元々たまに突然炎上するタイプ。実際、第3戦では1点差の9回を無難に抑えたし、この第5戦も決勝弾の後は3人で片づけた。高津監督の性格から言っても、守護神交代はないと思います」と野口氏は言う。

ヤクルトが3勝2敗と、日本一に王手を懸けている状況は変わらない。とはいえ、第1戦に先発して7回1失点の快投を演じた奥川は、高卒2年目の弱冠20歳。今季は最短でも中9日以上の間隔を空けて先発してきた。第6戦に先発するとすれば中6日、第7戦へ回るとしても中7日で、未知の領域となる。さらに第2戦に先発してオリックス打線を完封した高橋も、プロ6年目で自己最多となる133球を投げており、回復度に不安が残る。

「高津監督の判断次第だが、第6戦には高梨を先発させ、第7戦に奥川をスタンバイさせる手もある。ただ実際に投げさせてみたら、奥川も高橋も中6日で意外にすんなり好投するかもしれない。未知数としか言いようがない」と野口氏も頭を悩ませる。

一方のオリックスの先発投手は、シーズンを通して活躍した山本と宮城が、満を持して中6日でそれぞれ第6戦、第7戦に備える。野口氏は「山本が完璧に抑えて第6戦を取れば、第7戦は逆にオリックスへ流れが行く気がする」とも語る。

京セラドームから東京ドームへと舞台を移してきた今年の日本シリーズは、第6戦以降、屋外のほっともっとフィールド神戸で行われる。12月を目前にしたこの季節の屋外でのナイターは間違いなく寒い。「これは地元のオリックスが有利とも言い切れない。いかに準備をして臨むかにかかっている」と野口氏。日本一の行方はどうなるのか。歴史上稀に見るシリーズであることだけは間違いなさそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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