「打率にこだわったら本塁打は無理」 2軍でHR&打点の2冠、西武ドラ1がこだわる長打力

西武・渡部健人【写真:宮脇広久】

桐蔭横浜大4年秋季リーグで8本塁打、プロ1年目の今季は2軍で19本塁打

2021年シーズンは42年ぶりの最下位に終わった西武。2020年ドラフト1位の渡部健人内野手は2軍で19本塁打&64打点をマークし、イースタン・リーグの2冠王に輝いた。来季は1軍で結果を残し、希望の星となることができるか。22歳の大砲が、これまでの野球人生や自らの課題と向き合ったこの1年を語ってくれた。

渡部は小学生の時に野球を始め、神奈川・横浜商大高へ進学した。しかし1年時に家庭の事情で日本ウェルネス高へ転校。日本高野連の規定により、転入学した選手は1年間公式戦に出られないため、2年生の1年間はチームのサポートに徹した。「部員も少なかったですが、野球を続けたかったので、新しいところで頑張ろうと思いました。試合に出られない期間は、野球の基礎を勉強して、スコアを付けたりチームのサポートをしながら、練習試合には出させてもらっていました」。

3年秋にプロ志望届を提出したが、ドラフト指名されることはなかった。その後、桐蔭横浜大に進学。1年春から4番を任され、3年の冬には侍ジャパン大学代表選考合宿にも参加した。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響で、予定されていた国際大会や4年の春季リーグは中止になった。

「日の丸を背負って試合をしたことがなかったので憧れていました。今年こそはと思っていましたが、仕方ないかなときっぱり諦めて秋のリーグ戦に向けて集中しました。春のリーグ戦も中止になりましたが、逆に準備できる期間が長くなって秋に一発勝負ができると前向きに捉えました。バッティングもまだまだだったので、数多く振りました」

野球部の活動休止期間は自宅で身体を動かし、近くの公園で友人とキャッチボールをするなどした。そして、秋のリーグ戦では神奈川大学野球連盟タイ記録の1シーズン8本塁打に加え、リーグ新記録の23打点をマーク。チームの優勝に貢献し、最優秀選手賞を受賞した。「悔いなく終わることができた」と自身も納得のいく最高の結果を残し、ドラフト会議で西武から1位指名を受けた。

4・4に鷹和田からプロ初HRも安打はこの1本だけだった

「まさか1位で呼ばれるとは思っていなかったので、びっくりしました。山川(穂高)さんのバッティングを動画で見ていたので、一緒にやれるのは嬉しいです。実際に近くで見て『迫力あるな、スイングがすごいな』と思いました。山川さんには『1年目は自分の思うようにやったらいいよ』と声をかけていただきました」

4月に1軍で6試合に出場。4月4日に行われた敵地でのソフトバンク戦で左腕・和田からプロ初本塁打を放ったが、安打はこの1本のみだった。16打数1安打、7三振、打率.063で、4月19日に出場選手登録を抹消されると、その後、昇格の機会はなかった。しかし、2軍ではシーズン19本塁打、64打点で2冠に。打率は.228に終わったが、本塁打を追い求めていきたいという。

「1軍の投手は球の質が全然違います。ボールを真っすぐ前にはじけなかった。2軍では、ボールを1発で捉えられるように動作の確認をして振る量を増やしました。自分は打率にこだわったら、ホームランは無理です。まずはホームランと打点を伸ばしていきたい。自分の一打でチームの流れを変えられる選手になりたいと思っています」

今季まで2軍監督を務めた松井稼頭央ヘッドコーチは「長打力が魅力」と評価する一方で「守備、打撃ともに課題があるので、その克服をしてほしい」と話す。

「調子に波があるのが課題だと思っています。まだまだ練習の量が足りないと思います。来シーズンに向けて波をなくしていくことが課題です。少しでも安定して結果が出せるようにしたいです」

憧れの存在でもある山川は2014、2016年にイースタン本塁打王を獲得。その後、2018、2019年に本塁打王に輝いた。先輩の背中を追い、1軍で本塁打を量産することができるか。来季の飛躍が楽しみだ。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

© 株式会社Creative2