越中さんに栄誉市民授与 遺族「長崎に尽くした」

越中哲也さんの栄誉市民証を受け取った桐さん(右)と賢さん(中央)=長崎市役所

 長崎学の発展に尽力し、9月に99歳で亡くなった長崎市の郷土史家、越中哲也さんに対し、同市は25日、その功績をたたえ「栄誉市民」の称号を授与した。栄誉市民証を受け取った長女桐(きり)さん(58)は「長崎のために尽くした父が一番望むこと」として、市民に長崎への興味を深めてもらうよう願った。
 越中哲也さんは長崎学の基礎を築いた故・古賀十二郎氏らの研究を継承し、市立博物館長などを歴任。新長崎市史の編さんにも携わった。長崎くんちや精霊流しなど伝統芸能を分かりやすく解説し、市民から「越中先生」と呼ばれて親しまれた。
 市役所での顕彰式で田上富久市長は「先生がいなければ長崎学の裾野(すその)はもっと狭くなっていただろう」と称賛。次女賢(さかき)さん(52)は取材に「(父は)戦争に行き、長崎の焼け野原を見て『どうにかしないと』という気持ちで長崎のために尽くしてきた」と回想し、「父が残したものを引き継いで、長崎の発展のために役立ててもらえたら」と市民らに期待を寄せた。
 栄誉市民は福祉や産業、経済、文化などで特に功績がある人に贈る。長崎原爆被災者協議会長などを務め、2017年に授与された故谷口稜曄(すみてる)さんに続き、越中哲也さんは12人目。

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