飲みニケーションの行方

  (1)ネクタイをおもむろに外す(2)外したネクタイを頭に巻く(3)ふらふらと歩く。勤め人の悲しいおきてを、笑いを含みながら解説する「サラリーマン生態図鑑」(大和書房)という本は懐かしい「ネクタイ鉢巻き」のやり方を教えている▲昭和の頃、「宴たけなわ」になるとよく披露された。本は「三本締め」や「おごろうとするふり」のポーズなども写真で紹介していて、そこはかとなくおかしい▲勤め人のこの“生態”はコロナ禍で一変し、職場で懇親の場が大きく減った。それはもうしばらく変わらないらしく、先月の企業アンケートでは、7割が忘年会や新年会を「開かない」と答えている▲開きたくてもまだ油断は…と、迷い迷いの回答だと想像するが、これとは別に、働く人の「意識の変化」もあるという▲日本生命保険の調査では、お酒を飲んで職場の親交を深める「飲みニケーション」を「不要」とする答えが6割に達した。「気を使う」「仕事の延長」という理由は、これまでの「悲しいおきて」に物申すようでもある▲コロナ収束で「飲みニケーション」は“再評価”されるのかどうか。昔のサラリーマン川柳に〈ただでさえ無礼な部下の無礼講〉というほほ笑ましい秀作があるが、これも「平成の懐かしくて、遠い風景」になるとすれば、いくらか寂しい。(徹)

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