立憲民主党代表選・逢坂誠二氏インタビュー「人への投資、教育への投資にシフトしなければ日本の再生は有り得ない」

選挙ドットコムは11月30日に実施される立憲民主党代表選に関連し、立候補者へのインタビューを行いました。

人への投資、教育への投資にシフトしなければ日本の再生は有り得ない

Q. 今回の立憲民主党代表選に立候補された理由を教えてください。

日本は今、非常に厳しいところに直面しています。

例えば経済ですと、日本はGDPが世界3位の国ですが、個人のGDPに換算すると30位に近い国です。

教育の水準についても、大学の自然科学の論文ランキングがずっと下がってきているなど、非常に厳しい状況にきています。

そういう中では、やはり政策をシフトしなければなりません。特に私は人への投資、教育への投資にシフトをしなければ日本の再生は有り得ないという風に考えています。

しかしながら、我が党がそれを今やれる力があるかどうかというと……。残念ながら、前回の選挙でも小選挙区では多少議席を増やしましたが比例では大幅に減らしました。党としての体制の立て直しをしなければならないでしょう。

枝野幸男氏が立ち上げて55人でスタートし、今では100人を超える状態になった立憲民主党を、さらに政策のウイングを広げて価値観の多様な方々が集えるような政党にしなければなりません。

そうして与党と野党が拮抗する状態をもう一度取り戻す、という強い思いを持って立起(立候補)しました。

まずはコロナ対策、それから教育への投資

Q. 実現したい個人としての政策、また、代表に選出されたときに実現したい政策を教えてください。

個人であろうと代表であろうと、やはりコロナ対策です。これをしっかりやらなければいけません。私は政調会長やコロナ対策本部長を歴任してきましたが、今も生活に困窮していられる人たちが大変数多くいらっしゃいます。

今回政府は経済対策を出しましたが、18歳以下に10万円では困窮者は救えないと考えています。それをしっかり直していきます。事業者の方々等も大変苦慮していらっしゃいます。

ですので、1番目にやりたいことはコロナ対策です。

その上で、教育に対して投資をします。現在の日本では教育の機会均等が壊れているんですね。教育に投資をすることは効果が出るのは少し先で、遠回りに見えるかもしれません。しかし、教育に投資をしないことには、将来に対する備えや余力ができません。そこは党としてしっかり主張していきたいと思っています。

また、「実現しないだろう」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、今政府が「学校の授業料を下げないとならない」あるいは「最低賃金を引き上げないといけない」と言っていますよね。これらは2009年の民主党政権のときに言われていたことなんです。

ですから、立憲民主党は小さな野党ですけれども、我々が声をあげることによって、与党や政府に気づきや選択肢を与えることはできると考えています。結果的に我々の言ってることが実現しているわけですから。

そういう意味では諦めないで政策を主張していきたいと思いますね。

与党と野党が拮抗した状態を作らないといけない

Q. 2022年の参議院議員選挙に向けて、他党との協力体制について教えてください。

他の野党のみなさんと前提条件を確認する必要があると思っています。

現在は与党一強体制です。2012年からの9年間で公文書の改ざん・廃棄、国会での嘘の答弁、憲法53条を守らない等の行為が起こっており、こんな状況の中で政策議論どころではないと思っています。

与党と野党が拮抗した状態を作らないとこの状況は直せない、ということを他の野党のみなさんと共有できるのであれば、与党野党1:1の構図を作ることをする必要があると思います。

例えば衆院選の小選挙区で、与党は複数候補は出しません。でも野党は複数候補出ちゃうんですよね。そうなるとこれは算数の問題で、どっちが有利かということはすぐに分かりますよね。与党に少しでも太刀打ちできる体制を作る必要があります。

その際に、連携・共闘・調整等、色々な言葉があります。

しかし、それについては選挙区ごとにそれぞれ事情が違いますので、あくまで大きな方向を確認した上で、それぞれの選挙区または地方レベルで調整をするというパターンがあると私は思っています。

今回の衆院選での野党も、実情はそうだったのではないでしょうか。

衆院選では「野党共闘」と1つにくくった表現をされましたが、現実とは少し違うと感じます。

実務能力、現場での課題解決、ITが強み

Q. 今回代表選に立候補している他の3名と比べて、自身の強みはどこだと考えていますか。

私は24年間組織の中で仕事をしてきました。また、組織のトップも務めましたので、いわゆる実務能力――実際に物事を進めていくこと、それはもしかすると多少違った目線で見ていただけるのかなと考えています。

実務の現場にいるということは、理念や理屈に関係なく、現場での課題解決が求められます。理念とは違う状況でも、そこに困ってる人がいたら助けなきゃならない。そういったことに対応できる現実性は私のほうが他の3名より強いのではないでしょうか。

理念ばかり述べていて現実が動かないままだと、国民のみなさんが困ってしまうわけです。

災害が発生した場合、目の前で川が溢れそうなのに予算がないから土嚢を積めませんなんて対応はできません。現場にいたら予算なんか関係ないんですよ。「なんでもいいから土嚢を集めて積め!お金は後からなんとかする!」と。

予算計上していません、契約していません、と言われても、現場にとっては「いちいち契約してたらその間に水没するだろ!」という話です。そういう現実が現場にはあります。

2012年の消費税の議論でも、深夜まで議論をしていました。いっぱい議論するのは大事なんですけれども、火災が発生しているのに消火に行かなかったらそれはだめなんですよね。現実性というのはそういったことです。

それから、私は立候補者の中で年齢は一番上なんですけども、実はITデバイスが大好きで。

1983年以前からITデバイスを使って、インターネットが始まる前からネットワーク通信をやっていました。その部分では他の方を見ていると私の方がそこには通じているかもしれないなというふうに思いますね。

逢坂氏から見る立憲民主党代表選立候補者

Q. 今回代表選に立候補している他の3名について、逢坂さんから見た印象を教えてください。

西村さんは女性であるということで、私たちにない感性を持っているのは事実ですね。

比較的高い年齢になってからお子さんをもうけられて今子育てをしていますし、我々にない感覚があると思っています。政策的にも非常に知恵のある方です。文章を書かせても上手ですし、極めて能力が高い方。外国語も堪能です。

泉さんとは一緒に政調会長をやっていました。彼も政策に非常に長けてますし、党内、他党ともに国会でも人脈が広いです。若者に対するネットワークもあるのではないでしょうか。地元でも過去に消防団に参加していたりと、地域活動もやってこられた方です。

広範囲にネットワークのある方だと思います。

小川さんは物事を切り取るのが上手ですね。切り取って「これはこうだ」という分類をして、ワッと発信をする。そして、瞬間的に人を説得して人に対して深いインパクトを与える。そんな切り取りは天性のものがありますね。

それから言葉遣いです。国会議員の発言とは思えないくらい多種多様な修飾語を散りばめてくるんですね。文学的な、というか。ドキュメンタリーを作っているような切り取りができる、他の3人にはない能力だと思いますね。

公文書管理法を世界基準に追いつかせたい

Q. これまでの経験で1番嬉しかったこと、1番大変だったことを教えてください。

嬉しかったことは、2010年、2011年、2012年と地方交付税を増額させることができたことです。3年間で1兆6000億増額させることができました。それが地方財政の基礎になっています。

なんでそれが嬉しかったかというと、小泉政権で地方交付税が大幅に減らされて、都道府県市町村が全国でとんでもない思いをしたということがあったんですね。それが私が国会に行くきっかけのひとつでもあったんです。

当時は総理補佐官をやっていました。交付税を自分の手で回復させることができたということが本当に嬉しいし、今もその効果が継続しているということも嬉しいです。

こんな出来事があったことを多くの人は知りませんが、全国の自治の現場が今回っていることの出発点になっているのは嬉しいですね。

反対に大変だったこと、後悔していることは、2009年に制定された公文書管理法についてです。

私が国会にきたいくつかの目的の1つは、日本の公文書管理制度をしっかりさせたいということでした。

衆参でねじれ国会であった福田内閣のとき、法案は野党の協力がないと成立しませんでした。福田総理から「野党の中で逢坂さんが野党の中で公文書管理法に関心を持っていると聞いた、なんとか協力してくれ」と言われたんですね。

私としては喜ぶべきことですが、制定した公文書管理法は十分ではないと思い、その時にそう主張もしていました。しかし、「小さく生んで大きく育てよう、とにかく世に出すことをやろう」という説得があり、私はそれを飲み込んだのです。その後、公文書管理法は麻生内閣のときにやっと成立しました。

今、その法のもとで公文書が改ざんされたり廃棄されたりしているわけです。私が主張していた不足の部分です。そこをもっときちんとしていれば対処できたのではないでしょうか。

後悔ですよ、これは。あの時、もっと主張していれば、自分自身が強ければ。非常に残念です。

公文書管理法、これは地味なものですが、自分でなんとかして世界の標準に追いつかせたい課題です。

(編集部注:本インタビュー記事は立憲民主党代表選挙の各候補者の方全てに取材依頼をし、インタビューの調整をいただけた方から順次掲載しています。)

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