ホンダ内の3台のタイトル戦い。STANLEY山本尚貴「ネットの情報を遮断して気にしないようにしました」【第8戦富士GT500プレビュー】

 いよいよ、2021年シーズン最後の戦いとなるスーパーGT、第8戦『FUJIMAKI GROUP FUJI GT 300km RACE』。GT500クラスのチャンピオン争いは、実質、ランキングトップ3のホンダNSX-GTの3台の戦いがメインになる。ランキングトップの1号車STANLEY NSX-GT(60pt)、実質のランキング2番手で8号車ARTA NSX-GT(55pt)、実質3番手の17号車Astemo NSX-GT(52pt)のNSX3台がどのような戦いを見せるのか。

 ホンダ陣営の3台のタイトル候補はガツガツ争う展開になるのか、それともリタイア、またはノーポイントという最悪のリスクを避けてお互いの様子を探るような展開になるのか。タイトルが掛かっていないチームに比べ、タイトル候補のチームとドライバーは相手の様子と状況を見極めての判断が必要になってくる。

 ホンダ陣営を統括する佐伯昌浩GTプロジェクトリーダーも、今週末の陣営内でのタイトル争いには複雑な心境のようだ。

「今はもう、本当に何も考えられない状態です。このカテゴリーはメーカーオーダー、チームオーダーは出さないと規定で決められていますし、昨年から6回目の富士なので各チーム、セットアップなどのデータはそれぞれ持っていますので、それを活かして頑張ってもらえればと思います。みんなフェアに戦ってもらえると思います。こちらからはホンダ同士で競り合って当たることがないように、という注意事項くらいです」と佐伯氏。

 昨年に続いてのチャンピオン争い、そして2年連続のタイトルが掛かるSTANLEYの山本尚貴も、今年は実質、ホンダ陣営内でのタイトル争いとも言えるなか、いい緊張感で富士に来ることができたようだ。

「(ホンダ同士の戦いについては)あまり気にしないように……している時点で気にしているのですけど、気にしているからこそ、気にしないようにしました。最近はオートスポーツwebも見ていないですし(苦笑)、インターネットの情報を遮断して『何点取ったらチャンピオン』とかを気にしないようにしました」と、オートスポーツwebの取材に応える山本。

「その点数を気にした時点で守りに入ってしまうので、どのクルマよりも前に行かないとタイトルは獲れないという覚悟で来ています。勝たなければタイトルが獲れないという気持ちでいうと、去年と同じですね。その強い気持ちでいられたからこと昨年はタイトルが獲れたと思っているので、その強い気持ちがないといけないと思っています」

 最終戦のポイントには、大きくふたつの要素を挙げる。

「たくさんあるのですけど、あえてふたつ挙げるなら、まずは持ち込みのセットアップが今回のコンディション、富士での戦いにどこまでフィットしているのか。予選を終えて決勝に対してのアプローチが合っているか合っていないか。そこがひとつと、もうひとつはタイヤと路温(路面温度のマッチング)ですね。この1週間は少し想定よりも低い方向で推移しているので、路温は太陽が出てくると上がるので、どのくらいお日様が出るか。そこで選択するタイヤがどのくらい機能させられるのかが勝負だと思います」と山本。

「去年の最終戦を見ても、予選で中団になっても決勝のペースさえあれば、富士のコースは這い上がってくることができる。逆に予選で前に行ったからといって、最終ラップの最終コーナーまで何が起こるかわからないというのを身をもって身近で経験しているので、最後まで気を抜かないようにしつつ、やはり勝ちたいですね。今年の中盤以降は我慢のレースが続いているので、気持ちよく勝って終わりたいです」と週末への抱負を続ける。

 もちろん、3台のホンダのチャンピオン候補以外でも数字上の可能性が残る36号車au TOM’S GR Supra(44pt)、12号車カルソニック IMPUL GT-R(43pt)がどう絡んでくるのか、さらにチャンピオン候補以外この一戦の優勝に懸けるチームがどんな勝負を仕掛けて来るのかも見逃せない。

 まだまだ、昨年の最終戦のまさかの展開の記憶が残るスーパーGT500クラスのチャンピオン決定戦。今年もスーパーGTらしく、一筋縄で決まるような展開にはならなさそうだ。

2021年スーパーGT第8戦富士搬入日STANLEY NSX-GT

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