<レスリング>【2021年東日本学生秋季選手権・特集】1年生大学王者が貫録の優勝…男子フリースタイル79kg級・小柴伊織(日体大)

 

 11日前の2021年全日本大学選手権74kg級で1年生王者に輝いた小柴伊織(日体大)が、東日本学生秋季選手権・新人戦フリースタイル79kg級で優勝。来月の全日本選手権へ向けて最高の上り調子をつくった。

全日本大学選手権に続き、新人戦も制した小柴伊織(日体大)=撮影・矢吹建夫

 「決勝は最初から攻めて勝てたので、内容的によかったです」と、2分5秒の快勝を振り返る。決勝前、湯元健一コーチから「どんどん攻めて、自分を高めろ」と言われていたそうで、その通りの試合ができて気持ちよさそう。

 1年生とはいえ、大学王者ならば無理に出場せず、全日本選手権へ向けてのコンディションづくりに集中してもいいだろうが、「自分のレベルアップのため」と、1階級上で挑戦。前日のグレコローマンにも出場しているのだから(2回戦敗退)、闘うことが楽しくて仕方ないのだろう。

 大学王者として「負けられない」「負けてはならない」ということは全く考えなかったそうで、「強くなるために闘っています」。出場する試合すべてが練習の一環であり、課題を見つける場。4試合を無失点で勝ち抜いたこの優勝でも、「準決勝は後半、攻め切ることができずに4-0で終わってしまった」と反省の弁が出てきた。

 決勝でも、最初のタックルでアンクルホールドを決めていれば、もっと早く試合を終えられた。「まだまだ克服することがあります、もっと技を覚えて、全日本選手権で優勝を目指したい」と言う。

インカレ決勝での黒星が飛躍の大きな原動力

 今年は、1年生にとっての登竜門とも言えるJOCジュニアオリンピックが中止となり、全日本選抜選手権が大学生としてのデビュー戦。ワールドカップ出場の経験も持つ三輪優翔(ALSOK)に敗れて上位進出はならかなかった。「優勝を目指していたので…」と、強豪社会人選手が相手であっても、負けたのは悔しかった。

決勝はアンクルホールドを中心に攻めて圧勝だった=同

 そこで見つかった課題に取り組み、10月の全日本学生選手権(インカレ)では2位へ。一気に学生のトップレベルの実力を見せたが、「決勝で負けたのは悔しかった」と、ここでのV逸も飛躍の大きな原動力だった。相手の深田雄智(早大)は、2019年インターハイで敗れた相手。インカレでの黒星で連敗となり、悔しさは増したようだ。

 全日本大学選手権では、優勝したとはいえ深田との対戦はなかった。その大会には、2019年全国高校選抜大会決勝で敗れていた佐藤匡記(山梨学院大=今年の世界選手権代表)も出ていたが、佐藤が途中で敗れて、やはり対戦はなかった。

 対人競技である以上、順位で上回っても「勝った」「リベンジした」という気持ちになれないのは当然。大学王者となっても、“まだ学生のナンバーワンではない”という気持ちがあるのも、もっともだろう。

 全日本選手権では、負けっぱなしになっている2人にリベンジし、上位を目指したいところだが、世界での実績のある選手が多い階級。壁は高いと思われる。それでも、「まだ1年生なので、さほど研究されていないでしょう。もっといろんな技を使えるようになって相手をほんろうし、勝ち抜いていきたい」ときっぱり。

 グレコローマンで大学王者に輝いた兄・亮太(日体大4年)の存在も大きなパワー。差しなどのグレコローマンの技術を教えてくれるそうだ。兄弟優勝も視野に入れ、年末の決戦に挑む。

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