明治の街並みすごろくに 佐野の和菓子店社長が修復、展示

修復したすごろくの原本を広げる野部さん

 【佐野】明治後期~大正初期とみられる市中心部の建物などを鮮明に描いたすごろくがこのほど修復され、吉水町の和菓子店「味噌(みそ)まんじゅう新井屋」に28日まで展示されている。停車場や商店、銀行、神社など約100の建物や施設で構成され、市郷土博物館の茂木克美(もてぎかつみ)館長は「当時の街並みの記録はありそうでなく、明治後期の市中心部の様子を知る上で貴重な資料」としている。

 修復されたすごろくは横約95センチ、縦約75センチで、「佐野市中繪入(えいり)案内雙六(すごろく)」とある。

 同社社長の野部武典(のべたけのり)さん(51)は、本町の佐野本町店の貸主宅に原本があることを2年前に知ったという。ただ傷みが激しかったため貸主の家族に許可を得た上で、市内の表具師に修復を依頼。「佐野の昔の姿はもう、こういうものでしか見られない。ぜひ次の世代に残したかった」と話す。

 すごろくの振り出しは佐野停車場(佐野駅)。佐野銀行をはじめとした当時の銀行や理容店、菓子店、薬局などを描いた100近くのこまを通り、上がりは佐野公園地(城山公園)となる。石版印刷で定価は12銭。具体的な製作の時期や経緯は不明のままだが、茂木館長は「描かれている建物から、明治後期から大正初期のものと推測される」としている。

 野部社長は「原本は28日まで開いている『工場祭』で公開し、大家さんにお返しする。その後はコピーを店に展示したい」と話している。

© 株式会社下野新聞社