社説:核禁会議参加 日本の姿勢も問われる

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 核の「抑止力」を名目とした大国の安全保障の在り方に一石を投じることになりそうだ。

 来月上旬にも新政権を発足させるドイツの社会民主党(SPD)など3党が、核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加を政策合意書に盛り込んだ。

 米欧の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、米国の戦術核兵器が配備されているドイツがオブザーバー参加を表明した影響は小さくない。NATOではノルウェーに次いで2カ国目で、他の加盟国が追随する可能性もある。

 「核なき世界」を目指す態度を鮮明にしたドイツ新政権には、会議に参加する意義を国際社会に広く訴え、核軍縮への流れを先導してもらいたい。

 抑止力を含めて核兵器を全面的に違法とする核禁条約は今年1月に発効し、来年3月にはウィーンで初の締約国会議が開かれる。9月時点で56カ国・地域が批准しているが、ドイツや日本のほか、米国やロシアなどの核保有国は入っていない。

 核の軍備管理の根幹をなす核拡散防止条約(NPT)は核保有を米英仏ロ中の5カ国だけに認め、非保有国からは抑止力を盾に核に依存し続ける大国の姿勢に批判が高まっている。

 ロシアとの対峙(たいじ)を理由に欧州での核抑止力を維持したいバイデン米政権は、会議不参加への働きかけを強めるとみられる。NATO加盟国間で激しい議論になるとみられるが、過熱する核競争の局面を変えるきっかけになることを期待したい。

 ドイツの決断によって、同じく米国の「核の傘」の下にある日本の姿勢が改めて問われる。

 松野博一官房長官は「参加よりも、唯一の戦争被爆国として核兵器国を核軍縮に一層関与させるよう努力しなければならない」と従来の説明を繰り返し、オブザーバー参加に慎重な姿勢を崩していない。

 10月に開かれた国連総会の委員会では、日本が毎年提出している核兵器廃絶決議案が賛成多数により28年連続で採択されたが、核禁条約への言及がないことへの不満も各国から相次いだ。

 オブザーバーに議決権はないが、参加は核廃絶への強い意思表示となり、被爆国としての経験や取り組みを述べる機会にもなる。「核なき世界」の実現を掲げる岸田文雄首相は、その本気度を行動で示すべきだ。