環境問題への関心深めるベッテル、連戦の合間に元F1ドライバーが営む有機農場を訪問

 環境問題に強い関心を持つ4度のF1世界王者セバスチャン・ベッテルは、第19戦ブラジルGPに先立ち、元F1ドライバー、ペドロ・ディニスが経営する有機農場を訪れた。ベッテルは環境に配慮した形での農業に触れ、強い印象を受けたという。

 ディニスは1995年から2000年までの間、フォルティ・コルセ、リジェ、アロウズ、ザウバーといったチームでF1に参戦した。ドライバーとしてのキャリアを終えた彼は、現在、家族経営の農場を管理している。彼は伝統的な農法を大きく変革したいと考え、地球に優しく持続可能な取り組み方により、この農場をブラジルにおける有機卵、酪農製品、果物などの主要な生産者のひとつにまで成長させた。

 ベッテルは、そういったアプローチを採るディニスの農場に関心を持ち、それまで会ったことがなかった彼のもとを訪れたのだという。

「F1時代のペドロのことは知っていた。最近になってモーターレースとはつながりのないところで彼の名前を見た。彼が農業でやろうとしていることを読んだんだ」と現在アストンマーティンからF1に参戦するベッテルは述べた。

1996年スペインGP ルーベンス・バリチェロとペドロ・ディニス

「そこは魅力的なフィールドだと思った。正しい方向に物事を進めるためには大きな責任が伴うし、様々な関係もある。間違った進め方がとても多いからね」

「世界の状勢を見ていると、正しい方向に進もうとすればするほど、より大きなプレッシャーがかかってしまうようだ」

 ディニス家の農場はアグロフォレストリーによって営まれている。アグロフォレストリーとは、農作物の栽培や家畜の飼育と、木に代表される木質作物の生産とを組み合わせて同じ区画で行う土地利用のシステムで、栄養素を効率的に再循環させ、より良く生態系を守っていくための方法だ。

「いろいろなものを取り去るのではなく、土に戻そうとする考え方だ。実際に見てみて、感銘を受けたよ」と、ベッテルは付け加えた。

「F1の後、レースを離れてからのキャリアの在り方を見ることも刺激になった。喜びと情熱と意義を感じられる仕事だ。より良い世界を作ろうというのだからね」

「僕は自分のことを活動家だとは思っていない。けれど、人は誰も自分自身のことを積極的に考えなければならない。そうしなければ、未来を明るいものにはできないからだ」

「人類は今、これまで経験したことのない難題と向きあっている。声を上げられる人はそれも良いと思うけれど、何よりも行動が前面にあるべきだ」

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