社説(11/28):中国の歴史決議/「習氏1強」長期化を危ぶむ

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 最高指導者が自らの権威を高め、権力基盤を強固にする狙いが明らかだ。独裁色を強め、国内外に力を誇示する強権姿勢をさらに強めないか懸念が深まるばかりだ。
 中国共産党は第19期中央委員会第6回総会(6中総会)で党創建100年を総括した「歴史決議」を採択し、決議全文を公表した。
 習近平氏が総書記(国家主席)に就任した2012年以降を「中国の新時代」と評し、多くの成果を挙げて「歴史的変革を起こした」と称賛している。決議全文と同時に公表した習氏による「説明」も同様に中国が「偉大な飛躍」の時期を迎えたと自賛した。
 歴史決議を主導した指導者はこれまで、建国の父である毛沢東、改革・開放政策を推し進め、経済成長の基礎を築いた故鄧小平氏の2人しかない。習氏は2人と並ぶ歴史的指導者の地位を固め、2期10年の慣例を破って3期目の政権を来年発足させる布石であろう。
 採択時に発表された総会コミュニケ(声明)が触れなかった天安門事件(1989年6月)に対する見解が、決議全文で明らかになった。
 事件を「動乱」と改めて認定。「党と政府は旗幟(きし)鮮明に反対し、政権を守った」と民主化要求運動を武力弾圧した判断を正当化した。
 さらに、党中央が長い間解決できなかった難題を解決したとし、成果として香港国家安全維持法の制定による香港の統治強化と軍の改革を列挙した。
 権力維持のため、歴史認識や過去の判断を自らに有利に働くよう見せるのは、独裁体制特有の独善的な手法だ。
 中国では共産党一党独裁の下、毛沢東に対する個人崇拝が進み、文化大革命につながった反省を踏まえ、集団指導体制を敷いてきた。
 現状は「習氏1強」体制である。学校で愛国心を刺激しながら、習氏への忠誠心を高める歴史教育を行うことなどは個人崇拝そのものだ。
 歴史決議は習氏を党の「核心」と持ち上げ、業績をたたえた。個人崇拝が一段と進むのは確実だ。
 権力の集中と個人崇拝は異論の封殺につながる。新疆ウイグル自治区やチベットで、少数民族の「中国化」を押し進め、人権を無視した政策を強行している。香港では民主派を弾圧し、台湾周辺では軍事行動を活発化させ、台湾海峡の緊張を高めている。
 急速な経済成長と軍事力増強で影響力を増す一方、国情の不安定は否めない。全ての国民が豊かになる「共同富裕」を打ち出したのは格差が深刻化しているからだ。
 日中国交正常化から来年で50年になる。覇権主義的な姿勢を取りながら長期政権を目指す習指導部と岸田政権はどう向き合うのか。中国が国際協調を重んじ大国の責務を果たすよう、日本政府の積極的な働き掛けに期待したい。