市川森一さん顕彰碑 名誉館長務めた図書館に建立 諫早市民ら完成祝う

市川さんの顕彰碑のそばに立つ森さん=諫早図書館

 NHK大河ドラマ「黄金の日日」など多くの名作を世に送り出した長崎県諫早市出身の脚本家で、本県の文化振興にも尽力した市川森一さん(1941~2011年)の業績をたたえる顕彰碑が、名誉館長も務めた市立諫早図書館(東小路町)の敷地一角に建立された。事業費として地元有志らによる建立委員会が呼び掛けた募金には、目標とした800万円を超える寄付が県内外から集まった。27日、現地で除幕式があり、関係者や市民らが完成を祝った。
 市川さんは幼少期から自宅前の映画館に通い、映像世界に強く興味を抱いた。鎮西学院中、県立諫早高、日大芸術学部と進学。ウルトラマンシリーズ、諫早を舞台にした「親戚たち」など生涯で手掛けた作品は800本以上を数える。郷土愛が強く、本紙に「蝶々さん」や島原の乱を描いた「幻日」を連載。長崎歴史文化博物館の名誉館長、演劇を志す人材を育成する県の「長崎座俳優工房」の講師なども務めた。
 顕彰碑(高さ1.8メートル、幅1.5メートルの御影石製)は没後10年の節目に合わせて計画。文化、経済、観光、自治会連合会、老人クラブ連合会など市内の多様な分野の関係者の賛同で建立委員会を立ち上げ、募金を呼び掛けた。親交のあった長崎市の版画家、小﨑侃さんによる肖像レリーフと、諫早出身の俳優、役所広司さんが演じた市川さん作品の修道士のせりふで役所さんが揮ごうした「魂よ 元気を出せ」をあしらった。
 除幕式は、市川さんの命日(12月10日)に近い毎年11月最終土曜日に関係者らが営んでいる森一忌に合わせて実施。妻で俳優の美保子さんも出席した。市川さんのいとこで、建立委委員長の森長之さん(85)は「市川さんの作品は寂しさの中にもほのかな希望、人間の心の広さ、機微が描かれていた。この諫早から市川さんの遺志を継ぐ人材が生まれてくることを願う」と話した。

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