SUBARU BRZが悲願のタイトル獲得。レースはSYNTIUM GR Supraが制する【第8戦GT300決勝レポート】

 11月28日、2021年シーズンのスーパーGT最終戦となる第8戦『FUJIMAKI GROUP FUJI GT 300km RACE』の決勝レースが、富士スピードウェイで行われ、GT300クラスは60号車SYNTIUM LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹/河野駿佑)がシーズン2勝目を手にした。2位には65号車LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟)が続いている。

 2021年シーズンのシリーズタイトルは、3位でチェッカーを受けた61号車SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)が手にし、スバル、R&D SPORT、そして井口、山内にとっても初のGT300シリーズチャンピオンに輝くこととなった。

 5月に開催された第2戦以来、およそ半年ぶりのスーパーGT開催となった富士スピードウェイ。2021年シーズンの最終戦となる第8戦決勝は全車がノーウエイトで挑む戦いとなる。この一戦でチャンピオンが決することもあり、熾烈な接近戦が繰り広げられることが予想された。27日に行われた公式予選ではシリーズランキングトップにつける61号車SUBARU BRZ R&D SPORTが今季4度目となるポールポジションを獲得し、スバル悲願のGT300初タイトル獲得に向けて王手をかけた。

 予選2番手に52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)、3番手に60号車SYNTIUM LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹/河野駿佑)と、GTA-GT300車両がトップ3を占めた。4番手に88号車JLOC ランボルギーニ GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)、5番手に65号車LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟)が続いた。

 シリーズ4番手につける244号車たかのこの湯 GR Supra GT(三宅淳詞/堤優威)は10番手から、シリーズ2番手の56号車リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)は17番手から、そしてシリーズ3番手につける55号車ARTA NSX GT3(高木真一/佐藤蓮)は20番手から逆転タイトルに挑むことこととなった。

 なお、今回のレースではタイヤ4輪交換が義務付けられている。今期GT300で広く見られたタイヤ無交換、タイヤ2輪交換といった作戦が展開できなくなったため、コース上でのポジションアップが大きな鍵となる一戦となる。決勝当日は快晴に恵まれ、気温13度、路面温度22度、湿度23%と、昨日より比較的暖かめのコンディションとなるなか、2周のフォーメーションラップを経て、66周の決勝レースは13時6分にスタートを迎えた。

 ホールショットは61号車SUBARU BRZ井口が守るも、トップ4台は0.4秒以内の僅差で隊列を形成し、オープニングラップを終えた。スタートからトップの61号車SUBARU BRZの背後にピタリと続いていた52号車埼玉トヨペット川合だったが、2周目の最終パナソニックコーナーで60号車SYNTIUM GR Supra河野にかわされ、3番手にポジションを落としてしまう。

 2番手争いは加熱する間に、61号車SUBARU BRZ井口は1分37秒前半というペースで徐々に後続とのギャップを広げることに。しかし7周目のダンロップコーナーで、87号車グランシード ランボルギーニ GT3と7号車Studie PLUS BMWが接触。足回りにダメージを受けた7号車Studie PLUS BMWはコースサイドにマシンを止めてしまう。このアクシデントにより、セーフティカー(SC)が導入され、61号車SUBARU BRZ井口が築いた約2秒のギャップは一気に縮まることとなる。

 12周目にリスタートを迎えると、トップ61号車BRZと2番手60号車SYNTIUM GR Supraのギャップは0.603秒。その後も1秒以内の僅差で周回が続いた。そんななか、19周目に3番手につけていた52号車埼玉トヨペットが真っ先にピットインを敢行。上位2台に対し、アンダーカットを狙う作戦に。

 一方、テール・トゥ・ノーズの戦いを繰り広げたトップの61号車BRZ、2番手60号車SYNTIUM GR Supraだったが、22周目のTGRコーナーで60号車SYNTIUM GR Supra河野がイン側からオーバーテイクに成功。これでGRスープラがラップリーダーへと変わった。

 その直後から61号車BRZのペースが徐々に下り始め、60号車と4.356秒のギャップが広がった27周目にピットインを敢行。続く28周目には60号車SYNTIUM GR Supraもピットイン。停車時間で約4秒早いこともあり、60号車SYNTIUM GR Supraが61号車BRZ山内の前方のままコースに復帰した。

 しかし、冷えたタイヤを履いた60号車SYNTIUM GR Supra吉本はTGRコーナーでコースオフ。その間に52号車埼玉トヨペット吉田が先行し、実質のトップに浮上。埼玉トヨペットのアンダーカット作戦が成功したかたちとなった。

 一方61号車BRZ山内は、65号車LEON PYRAMID AMG、4号車グッドスマイル 初音ミク AMG、88号車JLOC ランボルギーニ GT3にも先行されてしまい、実質6番手まで後退。山内は88号車JLOC ランボルギーニ GT3の小暮をテール・トゥ・ノーズで追う展開に。さらに、42周目には55号車ARTA NSX、56号車リアライズ GT-Rが61号車BRZの3.5秒後方に接近。タイトル争いを繰り広げる3台が直接対決を繰り広げる状況となった。

 45周目、ホームストレート上に落ちたデブリの回収のためフルコースイエロー(FCY)が導入される。デブリ回収後すぐさまFCYは解除されたがその直後、88号車JLOC、4号車初音ミクAMG、61号車SUBARU BRZの5番手争いの隊列に55号車ARTA NSX GT3佐藤が急接近。タイトル獲得のチャンスを残す55号車ARTA佐藤は47周目のTGRコーナーで61号車SUBARU BRZにオーバーテイクを試みる。

 しかし、55号車ARTA佐藤はブレーキングで止まりきれず、GT500クラスのランキングトップにつける1号車STANLEY NSX-GTに接触してしまう。55号車ARTAはコース復帰も24番手にポジションを落とし、タイトル戦戦から離脱。さらに1号車は一時ガレージにマシンを納めることに。両クラスのタイトル争いを繰り広げる2台の接触にサーキットは騒然とするなか、アクシデントは続く。

 50周目、ライバル勢を5秒以上リードしトップを守っていた52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GTが、360号車RUNUP RIVAUX GT-Rと接触。その影響で右リヤタイヤがホイールリムから外れてしまいスピンを喫してしまう。これにより、60号車SYNTIUM GR Supraの吉本がトップに浮上。さらに、54周目には3番手を走行していた88号車JLOC ランボルギーニ GT3も右リヤタイヤのトラブルで戦線離脱となってしまう。

 終盤ライバル勢が続々と戦列を離れるなか、終始危なげない走りを見せトップを守った60号車SYNTIUM GR Supraが61周目のトップチェッカーを受けて今季2勝目を飾った。2位には65号車LEON PYRAMID AMG、3位には残り2周というところで4号車グッドスマイル 初音ミク AMGをかわした61号車SUBARU BRZ R&D SPORTが続き、スバル、そしてR&D SPORT、井口、山内の両ドライバーにとっても初めてとなるGT300クラスのシリーズタイトルを獲得した。

 4位には4号車グッドスマイル 初音ミク AMGが続いている。5位にはリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rが入り、こちらは12ポイント差のシリーズ2位でシーズンを終えた。なお、シリーズ3位には今大会を含め富士2連勝をマークした60号車SYNTIUM LMcorsa GR Supra GTが続いている。

 2021年シーズンも熾烈かつドラマチックな8戦が繰り広げられたスーパーGT。果たして2022年にはどんな戦いが待っているのだろうか。

2021スーパーGT第8戦富士 GT300クラス スタートの様子
序盤、首位SUBARU BRZ R&D SPORTから4番手JLOC ランボルギーニ GT3までひとつの隊列を形成
グッドスマイル 初音ミク AMGを先頭とした 暫定4番手争い。FCY後にはARTA NSX GT3も加わることに。
接触の影響で右リヤタイヤがホイールリムから外れてしまった埼玉トヨペットGB GR Supra GT
終盤、3位表彰台をかけたグッドスマイル 初音ミク AMGとSUBARU BRZ R&D SPORTのバトル
2021スーパーGT第8戦富士 SYNTIUM LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹/河野駿佑)
2021スーパーGT第8戦富士 SYNTIUM LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹/河野駿佑)

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