星野一樹、ラストレースを終え涙。「ずっと、レーシングドライバーの気持ちは忘れない」

 11月28日、静岡県小山町の富士スピードウェイで行われたスーパーGT第8戦富士。このレースは、2003年から長年JGTC全日本GT選手権/スーパーGTで戦ってきたGAINER TANAX with IMPUL GT-Rの星野一樹にとってのラストレースとなった。レース後、所属するGAINERはピット内で星野のスーパーGTラストレースを盛大に祝い、星野は涙とともに感謝の言葉を述べた。

 TEAM IMPUL星野一義監督の息子で、2003年から長年スーパーGTで戦ってきた星野は、2008年、2010年と二度のGT300チャンピオンを獲得。トップドライバーとして活躍する一方、若手ドライバーやタイヤを育てる存在として信頼を得てきた。

 そんな星野は、9月7日に2021年限りでスーパーGTから退くことを自身のSNSで報告しており、そのラストレースがいよいよ11月28日にやってきた。予選では22番手と苦戦を強いられたGAINER TANAX with IMPUL GT-Rだったが、序盤から星野はバトルを展開しポジションを上げると、25周の自らのスティントをしっかりとこなし、石川京侍に交代。終盤、石川はタイヤが厳しくなったYogibo NSX GT3をかわすと、最後はタイヤトラブル後ハイペースで追い上げた埼玉トヨペットGB GR Supra GTに僅差でかわされはしたものの、カーナンバーと同じ10位でフィニッシュ。ポイント獲得を果たしレースを終えた。

 フィニッシュ後、星野は他のドライバーたちとともにグランドフィナーレに参加したが、その間にGAINERのピットでは、チームスタッフやレースクイーンたちが、星野のラストレースを祝うべく飾り付けを行った。

 ピットに石川、GAINER TANAX GT-Rの平中克幸、安田裕信とともに戻った星野は「すごいな!」と驚きながらも、家族、そして父である星野一義監督、チームメイトとともに写真に収まり、チーム、レースクイーンたち、ダンロップから花束やプレゼントを渡された。

 ここまでは笑顔で振る舞っていた星野だったが、「ではひと言」とチームマネージャーに促されると、「最後まで寒いなか、残って集まっていただいてありがとうございました。思えば19シーズンもの長い間……」まで話した後、我慢してきた涙があふれ、しゃべれなくなってしまった。

「もうしゃべれないですよ」という星野だったが、周囲からの声援に押されるように、言葉をしぼり出した。

「悔いはないです。長い間ありがとうございました。4年間も同じチームでお世話になったことはなかなかなくて、GAINERさんに結果は残せなかったですけど、2019年に京侍と1勝できて、同じクルマではなかったですが、安田と、ずっと仲が良かったカツ(平中)と4人で一緒にやってこられて、自分の人生にとって素晴らしい財産になりました」

「1勝しかできませんでしたが、GAINERの皆さん、ダンロップタイヤの皆さん、関係者の皆さん、本当にありがとうございました!」

「でも、これで終わりじゃないんで。自分もいちレース人としての挑戦はまだまだ続くと思っています。もっと大きなチャレンジが現役生活より待っていると思います。TEAM IMPULの一員として来年から頑張りますけど、ずっとずっと、レーシングドライバーの気持ちは忘れないで頑張っていきます」

「本当に皆さん、最後までありがとうございました」

 最後まで“らしい”言葉を残し、多くの関係者から盛大な拍手を送られた星野は「あ〜すいません。絶対泣かないって思ったんだけど!」と苦笑い。その後、グランドフィナーレの最中から熱い声援を届けたニッサンファンのもとに向かい、いつまでも名残惜しそうに手を振る姿が印象的だった。

レース後、GAINERのピットで星野一樹のラストレースが祝われた。
GAINERのチームメイトたちと写真に収まる星野一樹
父・星野一義監督と写真に収まる星野一樹
花束を受け取り笑顔をみせる星野一樹
スピーチの最中、言葉に詰まる星野一樹
グランドフィナーレで、スタンドのファンから大きな声援を浴びる星野一樹

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