新賞金女王・稲見萌寧 気になる「無観客の女王」のレッテル&腰痛の深刻度

今年は東京五輪でも銀メダルと、大活躍だった稲見萌寧(東スポWeb)

新女王の「2つの課題」とは――。国内ツアー今季最終戦「JLPGAツアー選手権リコーカップ」最終日(28日、宮崎・宮崎CC=パー72)までもつれた女子ゴルフの賞金女王争いは、東京五輪銀メダルの稲見萌寧(22=都築電気)が史上2番目の若さで女王の座に就いた。古江彩佳(21=富士通)とのデッドヒートを制しての戴冠。国内30勝以上で獲得できる大目標の永久シード取りへ、来季はさらなる飛躍を狙うが、完璧に近い今季の戦いぶりから何を克服するべきなのか――。

新型コロナウイルス禍で2020年と21年シーズンが統合され、2年にわたる長い戦いは最終戦最終日の最終18番ホールで古江がバーディーパットを外して決着。最後までもつれた賞金女王争いは、稲見に軍配が上がった。

決まった瞬間には涙を流したものの、会見では「賞金女王をとれたのはうれしいですが、一番はやりきった感。今までよりも試合数が多かったので、達成感というか疲労感でいっぱいです」と安堵の表情を浮かべた。

米ツアー志向はないだけに、今後の目標は永久シード取りだ。現在ツアー通算10勝で、永久シード獲得条件の30勝まで残り「20」の勝利を重ねる必要があるが、そこには「2つの課題」がある。

1つは〝無観客の女王〟という聞こえの良くないレッテルはがしだ。今季はコロナ禍にあって、無観客で開催された試合が多い。昨年の14試合は全て無観客で、今年は38試合中23試合が無観客だったが、稲見は今季9勝中、有観客での優勝は4月の「フジサンケイレディス」のみだった。

今年に限れば無観客と有観客の試合割合がおおむね6対4だということを考えると、アンバランス感は否めない。本人は「偶然だと思います」と、ギャラリーの有無と成績の因果関係を否定。ギャラリーの前で優勝を披露したい思いが強い。

しかし、銀メダルの東京五輪も無観客だったこともあり、口さがないゴルフ関係者からこんな見解も漏れてきた。「無観客開催のほうがよりゴルフに集中できるのではないか。それが結果へとつながっている可能性もある」。絶対的な根拠はないとはいえ、ツッコミの余地を残したわけだ。

今季最大のギャラリーを動員した9月30日開幕の「日本女子オープン」は予選を通過した大会でワースト順位(52位)だった。もっとも通常開催へと向かうであろう来季もしっかり強さを発揮すれば、いとも簡単に雑音をシャットアウトできるのは確かだ。

さらに厄介な課題もある。今季終盤に抱えた腰痛を治すことだ。練習のセーブや痛み止め服用で欠場試合を最小限にとどめ、乗り切った方法を来季も続けるわけにはいかない。治療を含めて今オフの過ごし方は重要になってくる。

J1鹿島のチームドクターで西大宮病院院長を務める整形外科医の関純氏は「痛み止めを飲んでゴルフができるのであれば、今すぐどうこうということはない状態でしょうが、オフにしっかり治していただきたい」とアドバイス。稲見にヘルニアの症状が出ていることには「どの程度の症状かにもよるが、悪化するとお尻から足にかけてしびれが生じることもある」と指摘した。

もちろん本人もオフにしっかり治療するなど、やるべきことは自覚しているだろう。シーズンを通して万全なら今年以上の結果を期待してもよさそうだ。

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