「オミクロン」はWHOが中国に配慮説 習近平主席の姓と同じ発音の語避け

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南アフリカで見つかった新型コロナウイルスの変異株は、WHO(世界保健機関)によって「オミクロン株」と名付けられた。これまでの「アルファ」「ベータ」「ガンマ」「デルタ」などと違って、日本人にはあまり聞きなれない名称だ。なぜ「オミクロン」なのか。そして、なぜ「株」というのだろうか。

人名を疾患名にしない

命名理由については各メディアが報じている。朝日新聞によると、新型コロナウイルスは当初、確認された国や地域の名前を使って「英国株」「ブラジル株」などと呼ばれていた。WHOは差別や偏見を避けようと5月末以降、ギリシャ語のアルファベット(24文字)を1番目の「アルファ(α)」から順に用いるようになった。直近は「ミュー(μ)」だった。

この後に続くのは、「ニュー(ν)」、「クサイ(ξ)」だが、それらを飛ばして今回、「オミクロン(ο)」になった。

「クサイ」は英語で「xi」と表記する。中国の習近平(シーチンピン)国家主席の「習」の字も英語で「xi」と記されることから、WHOが中国に配慮し「クサイ」を飛ばしたのではないかといった見方が出ていた。 WHOは、「ニュー」(英語表記nu)は英単語の「new」と混同しやすいと説明。「xi」は姓として使われ、WHOのガイドラインは、新しい感染症に名前をつけるときに地名や人名を疾患名に含めてはならないとしているため、「クサイ」を避けたという。

専門家の指摘で「株」に

英語では、今回の新たな変異株は「The Omicron variant」。日本語では「オミクロン株」と表記されることが多い。なぜ株というのだろうか。

これについては、日本感染症学会が1月29日、英国で出現した変異株の表記に関連して、報道機関にあてた「変異『種』の誤用について」が根拠になっている。

「国内の報道においては、変異"種"という表現が一部報道機関で統一して用いられているようですが、これは学術的には誤用となりますので、今後は変異"株"と正しく表記していただきたくお願い申し上げます」

「突然変異はすべての生物において、遺伝子の複製過程で一部読み違えや組み換えが発生し、遺伝情報が一部変化する現象です。

この中で、新しい性質を持った子孫ができることがあります。この子孫のことを変異"株"と呼称します。変異株は、変化した遺伝情報の影響を受けた一部の性質が変化していますが、もともとの生物の種類は変化していません。この場合、同じウイルスの複製バリエーションにすぎませんので、ウイルスの名称は変化しません」

「しかしながら、極まれに近縁の生物種の間で多くの遺伝子の交換(組み換え)が起きると、2つの生物種の特徴を併せ持った新しい生物種が誕生することがあり、その場合には変異"種"と呼称します。この場合、新型のウイルスが誕生することになるので、新しいウイルスの名前が与えられます」

「今回の変異株は、新型コロナウイルスのスパイクタンパクにN501Yという特異的な変異が起こり、宿主細胞への感染力が強くなったという性質の変化がありますが、元来もっていた新型コロナウイルスの基本的特性はほとんど引き継がれておりますので、依然として新型コロナウイルスのままですので、変異"株"と呼称すべきです」

「誤った知識は、些細なものであってもしばしば誤解を生じ、差別や偏見につながっていくものもあります。ましてや科学的専門用語については、たとえ1文字の違いであっても、大きく意味がことなることがあり、より一層の注意が必要です。今回の新型コロナウイルス感染症では、これまでにも感染者や医療従事者に対する様々な差別が起きており、新型ウイルスが発生したかのような用語を用いることは、今後に新しい差別を引き起こす可能性もあります。このような場合には、単なる誤"用"ではなく、誤"報"と同じ意味を持ちかねません。

以上のことから、国民の科学リテラシーを正しく引き上げるためにも、正しく用語を用いていただければと存じます」

日経は「オミクロン型」

この要望を受けて、NHKもウェブサイトで、「変異株」とした理由を説明している。

「変異ウイルスは英語では新型コロナウイルスの「variant」(バリアント)と表記され、これを日本語訳する形で国内では「変異種」や「変異株」、「変異型」などなどさまざまな呼び方がされてきました」

「これについて2021年1月に日本感染症学会が報道機関に対して見解を示しました」。

「NHKでは、『変異ウイルス』と『変異株』という表現を使っています。」

以上の流れから、日本では「変異株」と表記されることが多くなった。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、共同通信、時事通信なども「オミクロン株」と書いている。

ところで、新たな変異ウイルスが登場すると、最初に反応するのは株式市場だ。今回も「オミクロン株」が世界の株式市場を揺るがしていることが報じられている。

「オミクロン」という聞きなれない名称に「株」が付いていると、中には戸惑う人もいるかもしれない。「オミクロン」という、ハイテク企業にありそうな銘柄の株が何か問題を起こしたかのような感じもしかねないからだ。

そのせいか、株式記事の多い日経新聞は独自の表記を続けている。27日の一面トップの見出しは「WHO命名『オミクロン型』」。「株」ではなく「型」を使っている。日経は、記事の本文中でも常に「オミクロン型」としている。