2023年のWRC日本ラウンド開催に向け、豊田市が運営主体に名乗り。補正予算案提出へ

 11月26日、豊田市は2023年から3年間のWRC世界ラリー選手権“日本ラウンド”について、同自治体が運営主体となって大会を開催する準備を進めるため、12月市議会定例会に補正予算案を提出すると発表した。

 2017年からWRCに参戦しているトヨタの本社所在地である豊田市は、2022年11月10~13日に開催されるWRC第13戦『フォーラムエイト・ラリージャパン2022』の舞台となる自治体のひとつ。大会ではスペシャルステージ(SS)と呼ばれる競技エリアが市内に設定される他、ラリーの中心となるサービスパークやヘッドクオーター、さらにメディアセンターが豊田スタジアムに置かれることになっている。

 その豊田市は26日、令和5年から令和7年(2023~2025年)のWRC日本大会について、大会の運営主体を握る準備を進めることを発表。そのための予算を確保するため、令和3年12月市議会定例会に補正予算案を提出し、審議を経て来年1月にJAF日本自動車連盟にWRC開催申請を行うなどの手続きを進める予定であることを明らかにした。

『世界ラリー選手権開催負担事業』として審議されることになる補正予算の限度額は12億8700万円。実際には、これに為替変動に伴う増減額を加算した額となる。事業期間は令和4年から7年、この間にユーロでの分割支払が予定されている。

 豊田市の太田稔彦市長は、同市がWRC日本ラウンドの運営主体に乗り出すことについて、記者会見の場でその経緯と目的を語った。

「令和5年(2023年)以降の日本での開催については現在、白紙の状況です。そうしたなか豊田市が運営主体となってWRCを継続して開催することとしました。その準備を進めるため、12月市議会定例会に補正予算案を提出してまいります」

「この経緯ですが、WRCの開催候補地をFIA国際自動車連盟に宣言する権利を持つドイツに本拠があるプロモーターから、今回の3年間の開催地のひとつであり、2019年のラグビーワールドカップの開催経験を持つ豊田市に『主催者にならないか』という打診がございました」

「豊田市としてもWRCの日本開催を継続したいという気持ちが強いものですから、その申し出を受けることといたしました。一般的にモータースポーツについて地方自治体が主催者になるということは、これまでになかったと思います。ただ、このWRCについては、豊田市としては単なる興行イベントとは捉えておりません」

「山間地の振興、交通安全の推進、自動車産業の振興といった極めて公益性の高いイベントと捉えておりますので、豊田市が主催する意義はそういったところにあると考えております」

豊田市の旭高原元気村に設けられたフィニッシュには太田稔彦豊田市長も駆けつけ、選手を祝福した

■WRC開催によって期待される3つの地域還元

 豊田市は今回の発表に際し、WRCの開催によって期待される効果について次の3点を挙げている。

●大会を通じて山村の価値を発信し、世界から共感を得ることで、市民が愛着と誇りを持ってその価値を守るなど、『豊田市山村地域の持続的発展及び都市と山村の共生に関する条例(案)」』理念と目的の実現に寄与する。

●国内外から多くの観客が訪れることにより、大きな経済効果が期待できる。

●地域に利益を還元するとともに、開催のノウハウ等を蓄積することにより、地域資源をいかした地域内の経済循環を高める。

 これについて太田市長は次のように述べた。

「本市でのWRCの継続的な開催については、今回の12月市議会に提出しております条例案『豊田市山村地域の持続的発展及び都市と山村の共生に関する条例(案)』の理念と目的に沿った取り組みにもなっております」

「大会を通じ、世界に日本の原風景としての山村の価値を発信し、共感を得ることで、私たち(市民)が愛着と誇りを持ってその価値を守り、生かし、次の世代につないでいくための契機となると考えております」

 債務負担行為として補正予算案を提出する豊田市は議決後、年明け1月にJAFに令和5年大会の開催申請を提出する予定。その後、4月に庁内に開催準備のための組織を立ち上げ、JAFの審査後にFIAへ開催申請を提出するという。FIAによる2023年のWRCシーズンカレンダーは、ラリージャパン2022年大会が開催される11月に発表される予定だ。

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