オミクロン株で12月のボクシング、GPファイナルも開催中止か 専門家「特別扱い難しい」の見解

村田諒太(左)と羽生結弦(東スポWeb)

無事に開催できるのか。新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の世界的な感染拡大を受けて、岸田文雄首相は29日に全世界を対象に外国人の入国を30日午前0時から原則禁止する方針を発表。そこで深刻な影響が懸念されている業界の一つが、スポーツ界だ。12月はボクシングの世界戦やフィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルなど注目イベントがめじろ押し。関係者が情報収集に奔走する中、専門家の見解はズバリ――。

今回の政府の決定ではビジネス目的の渡航者や留学生の新規入国も禁止。厳格な水際対策に、SNSなどではスポーツイベントへの影響を心配する声が上がっている。ボクシングでは12月に豪華カードがめじろ押し。WBA世界ミドル級スーパー王者・村田諒太(35=帝拳)と、〝GGG〟ことIBF世界同級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の統一戦(29日、さいたまスーパーアリーナ)がその筆頭格だ。

WBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(32=志成)もIBF世界同級王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)も統一戦(31日、東京・大田区総合体育館)を行うほか、WBO世界フライ級王者・中谷潤人(23=M・T)も同級9位クリスチャン・ゴンザレス(メキシコ)とのV2戦(29日、さいたま)を控える。いずれの試合も外国人選手が相手で、今後に来日予定。日本に入国できないとなれば、興行そのものが成立しなくなる。

井岡陣営は早急に政府、スポーツ庁から情報を集めているとして「もちろんビジネス(目的)ではあるが、興行やスポーツはまた別のカテゴリーという認識もある中、それもどうなるのかも分からない。不確定な部分が多くて、今の時点では何も言えない段階」と困惑の色を浮かべる。中谷陣営も「できる、できないは仕方ない。情報を待っている現状だが、しっかり(調整を)進めていくしかない」という状況だ。

師走の注目のイベントはボクシングだけではない。フィギュアスケートのGPファイナル(9日開幕、大阪)には、羽生結弦(ANA)の最大ライバルの世界王者ネーサン・チェン(米国)、女子では世界最高得点を連発する15歳の〝怪物ルーキー〟カミラ・ワリエワ(ロシア)が出場予定。日本スケート連盟は「まだお答えできるレベルのことが決まっていない」とした。

今回の決定を、専門化はどう見ているのか。感染症に詳しい医療ガバナンス研究所副理事長で内科医の上昌広氏(53)は「(選手らの)特別扱いというのは現実的には難しいでしょう。入国後の隔離期間を長くするなど対策すればいいと思うけど、線引きするのは政治的に難しい。スポーツと観光やその他で何が違うんだと言われたら、正当化できないんですよ」との見解だ。

つまりアスリートも区別なく入国禁止になる可能性が高く、上氏も「そうなるでしょうね。ただ、早めに規制を緩和することもやり方次第ではできると思う。とにかく今は様子を見ていくしかない」と指摘した。

外国の注目選手が入国できないとなれば、各イベントに与える影響は甚大。しばらくは関係者も落ち着かない日々を過ごすことになりそうだが…果たしてどうなるのか。

© 株式会社東京スポーツ新聞社