<南風>年中行事と通過儀礼

 冠婚葬祭は、人が生まれてから亡くなった後までの人生におけるイベントを順番に並べた四字熟語だ。

 本来の意味は、冠が成人式、婚が結婚、葬が葬式、祭が三回忌など亡くなった人をまつる祖先祭祀のことを指す。現在では、正月から大みそかまでの年中行事を含め「祭」としている。

 成人式を指す冠はかんむりのことで、昔は一人前になると冠か烏帽子(えぼし)をかぶっていた。奈良時代以降、数え年で12歳から16歳の男子が大人になる際に行われた元服の儀式が、今の成人式へと変わった。成人年齢が20歳になったのは1876年で、平均寿命が延びたことなどが理由と言われる。

 2022年に民法改正で成人年齢が18歳に引き下げられるため、成人式を「20歳のつどい」に名称変更する所もある。多くの自治体では、これまで通り20歳になる年に開催すると予想されている。

 また、内地の長寿祝にあたる沖縄の「生年祝」は高齢ほど盛大で、合同の生年祝を実施する地域も多い。数え年97歳のカジマヤーの由来は「この年齢になると童心に戻るので風車を持たせたから」「模擬葬式として死装束を着せて集落を回ったから」など諸説ある。

 成人式や生年祝といった通過儀礼も結婚式場で行うが、「祝い祝われること」はその人の人生を肯定することにつながる。人が幸せに生きていく上で重要な文化なのだ。

 さて、コロナ禍が数年続くことで「儀式はしなくてもよい」という雰囲気になってしまう恐れがある。しかし、人間はさまざまな時限を区分して、初めて時間というものを意識する。その中でも儀式は重要な区切りの場であり、人生の意味合いを認識する場となる。

 年中行事や通過儀礼は、暮らしの節目であり人生の節目である。感謝や祈りを学べて、人間関係を豊かにする冠婚葬祭は必要だ。

(佐久間康弘、株式会社サンレー代表取締役社長)

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