会社員が転職時・退職時に注意したい「iDeCoの自動移換」とは

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そもそも、自動移換とは?!

確定拠出年金は原則として60歳までは引き出すことができません。そのため、企業型確定拠出年金(以後企業型DCと表記)に加入している方が、60歳の前に転職や退職し企業型DCの加入資格を失った場合、移換手続きをせずに6ヶ月以上放置していると、図1のように自動移換(仮預かり)という処理が行われます。これはその人の企業型DCで積み立てた資産を保護する目的もあるのですが、いろいろなデメリットがあります。

図1 企業型DC加入者の資格喪失時の自動移換 (筆者作成)

自動移換のデメリット

自動移換された場合、次のようなデメリットがあります。

__●資産の運用がされない(運用の指図ができません)
●管理手数料の負担が発生する(表1 自動移換で発生する費用を参照)
●自動移換中の期間は、老齢給付金の受給要件となる通算加入者等期間に算入されない。そのため、受給可能年齢が遅くなることがある
__

表1 自動移換で発生する費用 (iDeCo公式サイトより筆者加筆)

自動移換に伴い、発生する管理手数料は表1のようになっています。運用指図ができない上に、自動移換された資産からこれらの手数料が差し引かれますので、DC資産が確実に目減りします。

適時お知らせが来る

退職や転職の1ヶ月後、4ヶ月後に日本レコード・キーピング・ネットワーク株式会社(以降NRKと表記)から、以下のお知らせが届きますので、放置せずに手続きをしてください。

◆1ヶ月後

企業型DCに加入していた場合、退職の翌月にNRKから「確定拠出年金の資格喪失のお知らせ」が届きます。このお知らせには資格喪失後の手続きが書かれています。

◆4ヶ月後

資格喪失時に手続きをしないと、4ヶ月後に「確定拠出年金に関する重要な手続きのご案内」が届きます。資格喪失後に移換・給付手続きを行っていない方に、自動移換となる期限が近づいていることをお知らせするご案内です。

◆6ヶ月後

多忙など何らかの理由で、2度のお知らせが来ても手続きをしないと、6ヶ月後に「自動移換完了のお知らせ」と「確定拠出年金に関する重要なお知らせ」が届きます。自動移換となった方に、自動移換のお知らせとともに、自動移換手数料についても記載してあります。

また、この自動移換完了のお知らせが宛先不明となった場合は、NRKのホームページに氏名が公開されます。退職と前後して住所変更があった場合など、何かの理由でお知らせが届かないケースも考えられます。もし、これらのお知らせが来ない場合は、NRKに問い合わせてみましょう。

自動移換された場合の対応

もし自動移換されてしまった場合は以下の選択肢があります。
(図1の資格喪失時の自動移換も参考にしてください)

__\(1\) 企業型DCのある企業に転職した場合は、その企業の企業型DCに資産を移換する。
(2) iDeCoに資産を移換するとともに、掛け金を拠出する(iDeCoの加入者になる)、または支給開始年齢(原則60歳)まで運用のみを行う(iDeCoの運用指図者になる)。
(3) 脱退一時金として受け取る(脱退一時金の受給要件を満たしていること)。__

なお、60歳を過ぎて受け取りをしようとしても、自動移換の状態では受け取ることができません。一度iDeCoなどに移換をした上で、受け取りの手続きが必要です。自動移換の状態を放置せず適切に手続きをしてください。

また、自動移換されている本人が死亡した場合は、遺族が死亡一時金の請求を行うことができます。詳細は特定運営管理機関のコールセンター(03-5958-3736)まで電話で問い合わせてください。

最後に

令和元年度の国民年金基金連合会業務報告書によると、令和2年3月末時点で企業型DCの加入者は約750万人ですが、それと比較して、転職や退職による自動移換状態の人は約90万人となっています。いかに自動移換状態の人が多いかがわかります。

企業型DCに加入している方は、転職や退職の時にiDeCoまたは企業型DCへの移換手続きが必要です。自動移換は決して他人ごとではなく、退職や転職する方は、意図せずにその中の1人になってしまう可能性があります。大切な確定拠出年金を自動移換されないよう十分注意してください。

なお、国民年金基金連合会では自動移換者の減少に向けた、以下の取り組みが行われています。

企業型DCの資格喪失後6ヶ月以内に新たにiDeCoの加入者になったことが確認できた方や、自動移換の状態で新たにiDeCoの加入者になったことが確認できた方は、移換の申し出をすることなく、企業型DCや特定運営管理機関からiDeCoへの移換処理が行われるようになりました。

出典
iDeCo公式サイト「転職・退職された方へ」
日本レコード・キーピング・ネットワーク株式会社 ホームページ
特定運営管理機関 ホームページ

執筆者:植田周司
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)