保護者の負担ゼロ、謎の声出し禁止… 練馬アークスJr.ベースボールクラブが投じる一石

練馬アークスJr.ベースボールクラブの中桐悟代表【写真:川村虎大】

今春発足した練馬アークスは「保護者の時間的負担一切なし」を掲げる

今春に発足した少年野球チーム「練馬アークス・ジュニア・ベースボールクラブ」。お茶当番など保護者の時間的な負担をなくし、「ばっちこーい!」などの野球独特な“謎の声出し”もしない。革新的な取り組みで、一石を投じようとしている。

「野球をやりたいのにできない子どもが一定数います」。チームの代表を務める中桐悟さんは、少年野球を取り巻く現状に危機感を感じていた。お茶当番、車出し、試合の審判……。夫婦共働きの家庭には時間を確保するのが難しく、子どもの意欲に応えてあげられないケースもある。

中桐さんにとっても他人事ではなかった。「私の妻も、親の負担が重すぎると、息子に野球をやらせるのは反対でしたからね」と苦笑い。ただ、せっかく子どもが野球に興味を持っているのに、保護者側の都合がハードルになってはいけないと感じた。

練習は週1回で、4時間以内に設定。たとえ保護者が常に練習を見ていられなくても安心できるように、看護師資格を有する人材をコーチに招集。怪我をした際にも適切な処置ができる体制を整えた。さらに子どもたちの健康を考え、スポーツ医科学を専門とする大学講師に教えを請いながら、肩肘の故障をはじめとしたスポーツ障害防止にも取り組んでいる。

野球未経験の保護者が感じる“肩身の狭さ”

保護者の男性は「ここなら安心して子どもを入れることができました」と言う。野球経験はなく、ルールを知っている程度だった男性。「自分はキャッチボールすらできないですからね……。子どもに野球をさせてあげるのは、なかなか難しいと思っていました」と不安もあった。

「他の競技より親の負担が大きい」「野球経験があるお父さんがコーチを務めるため、未経験だと肩身が狭い」というイメージを持っていた中、チラシで見つけたのが練馬アークス。保護者が野球未経験でも困ることはなく、所用で練習を休んでも肩身が狭い思いをしないでいい環境がありがたい。

「負担は一切ないですからね。今は共働きの家庭も多いし、土日が仕事だという保護者さんもいます。私も含め、そのような環境だとなかなか野球をやるハードルが高いですから」

子も、親も、無理なく楽しめる環境の提供が、中桐さんの目指すチーム像。勝利は二の次。「今は結果がでな意かもしれないが、高校生や大学生になっても、怪我なく“競技野球”が続けられる。そんな選手を輩出していきたいです」。あくまで考えていることは長期的なスパンだ。時代に即した取り組みが、人口減少に直面する野球界を草の根から変えていく。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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