止まらない歩み

 昨日の長崎新聞文化章贈呈式。受章いただいた4人の皆さんのスピーチから印象的な言葉を▲「私はただ座っていただけ」。長崎純心大学長の片岡瑠美子氏は長く委員を務めた長崎市の文化財審議会のことをこう話した。「専門家の方々の発言から学ばせていただくのが楽しくて」と少し弾んだ口調で▲佐世保市教育会長の古賀良一氏は2004年と14年に起きた子どもの事件が忘れられない。子どもたちを「被害者」や「加害者」にしないために。「大人は何をしたらいいのか、もう一度考えなきゃならない」▲東京五輪の柔道で悲願の金メダルに輝いた永瀬貴規選手。母、小由利さんに託したメッセージで「自分の土台をつくってくれたのは長崎」「皆さんの温かい言葉が大きな力になった」と故郷への感謝を繰り返し、これからも日々精進を、と誓った▲長崎史談会前会長の宮川雅一氏を郷土史研究に誘ったのは9月に亡くなった長崎学の大家。宮川さんは「越中哲也先生が私の恩師。報告したかった。先生のようにはいきませんが、これからも勉強を」と静かに▲終わりのない学び、答えのない問い、さらなる高みを目指す道。「歩く」という字が「止まる」と「少し」でできているのは不思議だ-遠くて、止まらない歩みを思いながらそんなことを考えた。(智)


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