ロッテ井口監督が早くも宣言「2022年は『優勝争い』ではなく『優勝』にこだわる」

ロッテ・井口資仁監督【写真:荒川祐史】

ロッテ井口監督のリアルな声を届ける月イチ連載・第10回

プロ野球2021シーズンは、史上稀に見る接戦となった日本シリーズでヤクルトがオリックスに4勝2敗で勝利し、20年ぶりの日本一に輝いた。全6戦のうち5試合が1点差ゲームで、第6戦は延長12回での決着。12球団の頂点に立ったヤクルトの選手の多くが涙を浮かべていた姿からも、日本一への道のりが容易いものではなかったことが窺い知れる。

リーグ優勝、そして日本シリーズ制覇の難しさを知る人物がここにもいる。ペナントレースとクライマックスシリーズ(CS)でオリックスに行く手を阻まれたロッテの井口資仁監督だ。今季は一時リーグ首位に立ったり、優勝マジックを点灯させたり。優勝に手が届くところまで近づきながらも掴みきれなかったシーズンを率直な言葉で振り返ってもらった。【取材・構成 / 佐藤直子】

◇ ◇ ◇

まずはじめに、皆さん、今シーズンも1年を通じて熱い応援をいただき、ありがとうございました。残念ながら、リーグ優勝、日本一には届きませんでしたが、選手はみんな「この1点を、つかみ取る。」というスローガンを胸に刻み、よく戦ってくれたと思います。同時に、まだまだやることはいっぱいあると改めて実感しています。

もちろん、昨シーズンよりもいい戦いができた手応えはあります。でも、やはり勝ち切れなかったのは事実。短期決戦のCSで敗れたのも、総力が足りなかったからです。そこをどうやって改善していくか。今シーズンに集まった様々なデータをアナリストに細かく解析してもらい、監督・コーチの肌感覚や反省も合わせながら、選手を含めたミーティングを秋季練習中に開催しました。

投手、野手それぞれについて振り返りたいと思います。

まず、投手陣の収穫は後半になって小島(和哉)が長いイニングを投げられるようになったこと。そして、(佐々木)朗希が先発として1軍でしっかり投げられるようになったことです。朗希は(来季以降)1年間ローテーションを守れるという自信がついたのではないでしょうか。CSでもエース級の投球をしてくれました。ここ一番で自分の力を出せるのはエースの条件。来季の期待度は高まります。

一方、課題は先発陣で貯金をほとんど作れなかったことですね。クオリティスタート(6回以上自責点3以下)の数を見ても、うちは65回でパ・リーグでは下から2番目。ハイクオリティスタート(7回以上自責点2以下)となると、さらに数を減らします。体力面も含め、エースを争えるような投手を複数育てていかないといけません。

秋季練習で若手にメッセージ「自分でポジションを勝ち取れ」

野手に関しては、チーム打率は.239と低かったものの、リーグ最多の584得点、1試合平均4点以上を挙げることができました。凡打でも走者を1つ前の塁に進めたり、四球や盗塁を多く積み重ねたり、1点にこだわる野球を実践できました。荻野(貴司)と(中村)奨吾で得点圏に走者を進め、マーティン、レアードで返すという得点のパターンが生まれたことに手応えを感じました。

ただ、相手がエース級のピッチャーとなると簡単には点を取らせてもらえない。CSでは特に、スピードボールへの対応に苦戦しました。打点とホームランで外国人選手に頼り過ぎているところがあるので、若手の長距離砲を育てることは必須です。

可能性を秘めた選手は多くいますが、すぐには育たない。我慢強くどうやって使っていくか。その中でも、今年は山口(航輝)が波はありましたが1軍に定着し、佐藤都志也も昨季以上にキャッチャーとしての出場機会を増やしました。ここからレギュラー争いするレベルまでどう育てるかは、我々の仕事でもあります。

監督として4年目のシーズンでしたが、今季は貯金10(67勝57敗19分け)とすることができました。勝率を見ても1年1年しっかり積み上げられている実感があります。最後は失速したものの、優勝争いができるチームのレベルまで来ているのではないかと感じています。あとは優勝するために何をすればいいのか。選手には毎年課題を与え、それをクリアさせながらここまで来ているので、当然来季はこれまで以上のことを求めます。

秋季練習を締めくくる前に、参加していた若手選手には「1人1人が自分でポジションを勝ち取らなければいけない」とメッセージを伝えました。なんで秋季練習をしているのか、勝ち取るためにはどうしなければいけないのか、しっかり考えてほしいからです。

マリーンズは石垣島でキャンプを行うので、2月中旬には練習試合やオープン戦のために沖縄本島へ渡ります。つまり、遠征メンバーに入るにはそこまでに結果を出さなければならない。キャンプインする2月1日には競える状態でなければなりません。レギュラー陣に追いつき追い越すためにはオフの過ごし方が大事。自覚を持ってポジションを取るように話をしました。

幸い、コンディショニングチームがしっかりプログラムを組み、個々の選手が取り組むべき課題やメニューを提示してくれています。あとは選手次第。2月1日に合流すれば、誰がやってきたか誰がやってきていないか、一発で分かるので非常に楽しみです。

2022年にこだわる“優勝”の2文字「厳しさを持って戦う」

オフの選手補強ですが、レアードが早々に残留を決めてくれたのは心強いですね。大きな補強ポイントでもある中継ぎは外国人選手も含め、積極的に動いてもらっています。その他のポジションもトレードを含め、検討しています。

新入団選手も楽しみな存在です。ドラフト1位指名の松川(虎生)は“打てるキャッチャー”を目指してほしいので、どういうプランで育てていくのがいいのか、球団や清水(将海)バッテリーコーチと考えています。かなり高いレベルの選手だと思いますが、即戦力としては考えていません。体力面を伸ばしたり、ピッチャーとのコミュニケーション能力を磨いたり。高校生とプロではレベルが違いますから、合同自主トレで様子を見ながらキャンプの振り分けなど考えていきたいと思います。

監督に就任して以来、常に優勝争いできるチームを作ることを目標にしてきました。その目標はある程度達成できたと感じています。なので、5年目を迎える来シーズンは、優勝争いではなく、優勝にこだわります。来年こそ、優勝します。そのためには、非情な采配も含めた厳しさを持って戦っていかなければなりません。選手もみんな、それに耐えうるレベルまで育ってきたと感じています。

今季141試合目で優勝を逃したことは、選手にとって本当に堪える経験だったと思います。毎年一段ずつ階段を上がってきたけれど、優勝には一歩足りなかった。何をすれば優勝できるのか。それは選手たちが身を持って学んだと思いますし、我々にとってもいい経験となりました。

優勝。来シーズンこそ、この2文字を手に入れます。そして、その戦いはすでにスタートしています。(佐藤直子 / Naoko Sato)

© 株式会社Creative2