ノアの〝プロレスリングマスター〟ことGHCタッグ王者の武藤敬司(58)が、ノアvs新日本プロレスの対抗戦ムードが過熱する中で意外な緊急提言を放った。来年1月8日、ノア勢は新日本・横浜アリーナ大会に参戦する。両団体の選手が舌戦を展開し、ファンを巻き込む形で早くもヒートアップしているが、かつて〝史上最大の対抗戦〟で主役となった男は少し複雑な思いを抱える。その理由は――。
大会の決定以降、対抗戦ムードは両団体のファンを巻き込んで過熱の一途をたどっている。新日本のオカダ・カズチカが「興味がない。オリンピックに出ている選手が、近所でやってる高校の(選手の)話、知らないでしょ」などと不穏発言を連発すれば、ノアも清宮海斗が「ノアのプロレスが一番だと思ってます」と負けん気をあらわにするなど、両団体の選手が早くも〝こちらが上〟と言わんばかりの舌戦を展開している。
しかし、武藤は「今は昭和じゃねえんだ。どっちが潰れるとか、そういうものを見せる時代ではない気がするんだよ」とピシャリ。〝殺伐とした対抗戦〟は時代にそぐわないのではないかというのだ。
武藤と言えば、1990年代に勃発した「新日本対UWFインターナショナル」の抗争で最前線に出た。〝負けたほうが潰れる〟という緊張感の中、95年10月9日に東京ドームで行われた両団体の全面対抗戦では、メインで高田延彦とIWGP王座をかけて一騎打ちし、見事勝利している。当時と今を比べつつ、武藤はこう続ける。
「昭和の時代はそれでよかったかもしれないけど、今度は未来に続く対抗戦にしたいよな。今はプロレス界も含め、あらゆる業種がコロナで追い詰められてさ。また(オミクロン株の感染拡大により)外国人が入れるかどうかも分からなくなったわけじゃん。そんな今、見せるは団結…とまでは言わないけど、見てる人がハッピーになるようなものがいいと思う。今までの対抗戦って、応援してる団体が負けたファンは悔しくて帰ったじゃん。そうじゃなくてさ。フタを開けてみなきゃわかんねえけど、そうあればいいなと俺は思う」
ハッピーな対抗戦…。矛盾する言葉に見えるが、天才の脳内にはそれを実現するプロレスがすでに見えているのかもしれない。
さらにはノアが来年元日に東京・日本武道館大会を行うことを挙げ「年明けから1週間? そりゃ、俺も大変だよ。本当は正月は家で酒、飲んでたいもん。昭和の人間だから。でもいい意味で、正月からの1週間くらいがアメリカの4月のレッスルマニアウイークみたいになればいいよな」と毎年正月の〝プロレスウイーク〟が定着することを熱望。その上で「〝Go Toトラベル〟のプロレス版〝Go To プロレス〟だよ。それなら日本もプロレスも活性化するだろ」と力説した。
23日で59歳を迎えるアラカン王者はなお未来を見据え、マット界の先頭を突っ走るつもりなのは間違いなさそうだ。