8月以降は防御率1.22、奪三振率10.70 ロッテ佐々木朗希が見せた劇的進化の理由とは?

ロッテ・佐々木朗希【写真:荒川祐史】

佐々木朗は今季11試合登板で3勝2敗、防御率2.27の成績を残した

ロッテ佐々木朗希投手にとって、2021年はプロ2年目にして大いに存在感を示したシーズンだった。高校時代に最速163キロを記録した剛腕は、プロ1年目の昨年は2軍でも登板せず、身体づくりを含めた基礎固めに専念。満を持してデビューを飾った今季の成績は11試合、63回1/3を投げて3勝2敗、51安打、68奪三振、16四球、防御率2.27だった。

ロッテ・佐々木朗希の年度別各種指標【表:パ・リーグ インサイト】

奪三振率は9.66。この数字にも快速球と鋭く落ちるフォークの質の高さが表れているが、速球を最大限に活かしたパワーピッチで押していくというタイプではない。優れた制球力に下支えされた、「四球を出さず、球数が少ない」という投球スタイルを若くして確立しつつある。実際に制球力を示す各種の指標を見てみると、与四球率は2.27。一般的に3.50を上回れば優秀とされるK/BBも4.25と優秀な数字を残している。WHIPも1.06と優れた水準だ。与四球の少なさに加え、被打率も.216と低く、痛打されるケースも少なくなっている。

また、登板した11試合でいずれも5回以上を投げきり、自責点3以下に抑えていた点も見過ごせない。失策が絡んで4失点以上した試合は3度あったものの、試合を壊さずに後続の投手につなげる確率が高かった点は、強力なリリーフ陣を擁していたロッテの戦力にもマッチしていた。

ロッテ・佐々木朗希の月別成績【表:パ・リーグ インサイト】

3月と4月は登板がなく、プロ初登板は5月16日の西武戦。その5月は2試合で防御率4.50だったが、6月は3.18、7月は3.60に。8月は大きく良化して1.80だった。そして、9月までは基本的に中10日の間隔で登板していたが、優勝争いが佳境を迎えた10月には中6日での先発も経験した。登板間隔が変化しても投球内容は乱れるどころか、成績はさらに改善。10月は勝ち星こそ1勝どまりながら、3試合すべてで6回以上を投げ、19イニングで自責点1という驚異的な投球を披露した。8月以降の6試合の成績は、37回を投げて2勝0敗、21安打44奪三振、5四球、防御率1.22。楽天との「パーソル CS パ」の初戦でも6回を4安打10奪三振1失点(自責0)と好投した。

ロッテ・佐々木朗希の月別指標【表:パ・リーグ インサイト】

10月は奪三振率12.79、与四球率1.42、K/BB9.00と圧倒的数値を記録

与四球率は5月から7月まで4.50、2.38、5.40とやや高く、制球面に課題があった。しかし、後半戦は大きく改善。8月が1.80、9月が0.00、10月が1.42となり、奪三振率も9月が10.13、10月が12.79だった。9月は腰の張りの影響で1試合の登板にとどまっており、8回9奪三振無四球投球だった9月10日の楽天戦の内容が、そのまま月間成績として示されている点には留意する必要がある。そういった意味でも、3試合でK/BBが9.00(27奪三振、3四球)という圧倒的数値を記録した10月の投球内容が進化をより明確に示していると考えられる。

ロッテ・佐々木朗希の捕手別成績【表:パ・リーグ インサイト】

ではバッテリーを組んだ捕手によって投球内容に違いはあったのだろうか。プロ初登板から2試合はドラフト同期入団の佐藤都志也捕手とバッテリーを組んだが、捕手別防御率では佐々木朗と組んだ4人の捕手の中で最も悪い4.50だった。奪三振率は9.00と高かったものの、与四球率が捕手別で唯一の4点台(4.50)となっている。田村龍弘捕手と組んだ2試合でも防御率4.36。佐々木朗が今季喫した2敗はいずれも田村と組んだ際に記録されたものだった。

柿沼友哉捕手と組んだのは6月10日のヤクルト戦だけだったが、6回4安打5奪三振2四球1失点と好投した。そして、最も相性が良かったのが加藤匠馬捕手。6試合で防御率1.22、奪三振率10.70、与四球率1.22だった。実際、8月以降の6度の登板ではいずれも加藤とバッテリーを組んでおり、月別成績が大きく改善されたタイミングとも符合している。

デビュー当時から一定以上の奪三振率を記録していたが、当時はまだ球速が抑えめであり、制球面にも多少の乱れが見られた。しかし、登板を経るごとにスピードが増し、フォークの精度も上がり、制球力も持ち合わせるように。「令和の怪物」は、これからどんな成長曲線を描いていくのだろうか。

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