流行語大賞は大谷旋風

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 街角かどこかで耳にしたのだろう。永井荷風は1934(昭和9)年の日記に「当世青年男女の用語」を書き留めた。「どうかと思うね」「顔まけした」「参ったヨ」「憂鬱(ゆううつ)だヨ」…▲わざわざ書き記したのだから、耳になじまない、奇妙な流行語に聞こえたのだろう。作家には奇っ怪な言葉でも、やがて普通の言い回しになり、今なお生きている▲言葉の寿命は測りがたいが、はやり廃りに左右されず、心のどこかで長生きしてほしい言葉もある。今年の新語・流行語の年間大賞もそうだろう。大リーグの大谷翔平選手の躍動を表す「リアル二刀流/ショータイム」が選ばれた▲「リアル二刀流」とは1試合で投手も打者もこなすことらしいが「漫画の世界でも絵空事でもなくて、現実(リアル)に存在する二刀流」にも思える。「まさか」と日米の国民が目を丸くした▲昨年の年間大賞は「3密」で、今年の上位にも「人流」「黙食」と新型コロナにまつわる言葉がある。「参ったヨ」「憂鬱だヨ」の心持ちが広がったぶん、ショータイムがいっそう光を放ったのだろう▲今季を終えて大谷選手はこう語った。「純粋にどこまでうまくなれるかという思いで頑張れたのが良かった」。高みにいても、なお上を向く。新語でも流行語でもないが、心の養分にしたい言葉がある。(徹)