諫干差し戻し審 国、開門派 双方の溝埋まらず 福岡高裁で結審 3月判決

横断幕を広げ法廷に向かう開門確定判決の原告や弁護団ら=福岡市、福岡高裁前

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防開門を命じた2010年の確定判決を巡り、開門を強制しないよう国が訴えた請求異議訴訟の差し戻し審は1日、福岡高裁(岩木宰裁判長)で最終弁論があり、結審した。判決は来年3月25日。
 同高裁は4月、和解に向けた話し合いを開門派と国に提示。だが、国は「開門の余地を残した協議の席には着けない」との姿勢を崩さず、打ち切りとなった。
 約7カ月ぶりに再開された口頭弁論では開門確定判決原告の漁業、平方宣清さん(69)=佐賀県太良町=が意見陳述。「(有明海での)漁業被害に目を背け、漁業がなくなるのを待つような態度を取る国には怒りしかない」と訴えた。国は「必要な主張、立証は尽くした」として陳述などはしなかった。
 結審後、開門派弁護団の馬奈木昭雄団長は「(漁獲量は開門確定判決の口頭弁論終結後の12年ごろに底を打ち、その後は増加傾向だとする)国の主張が全てうそだったというのが明らかになった裁判だった」と指摘。国には和解に向け、訴訟外での話し合いに応じるよう働き掛けていくとした。農水省の担当者は会見で「(漁獲量が)13年から増加傾向にあるのは統計上、明らか」だとし、開門の強制は権利乱用だとの認識を重ねて示した。訴訟外での話し合いについては、非開門が前提だと国の見解をあらためて強調した。
 開門確定判決を巡っては、国が14年1月、漁獲量の増加傾向など「事情の変動」を理由に請求異議訴訟を起こした。福岡高裁は18年7月、請求を認めたが、最高裁は19年9月、国が主張した共同漁業権の解釈に誤りがあるとして二審判決を破棄。事情の変動で開門の強制執行が権利乱用になるかなどについて審理を尽くすよう、差し戻した。
 差し戻し審で同高裁は「統一的、総合的かつ抜本的に解決するためには、話し合いのほかに方法はない」として、前提条件なしの和解協議の場を設けることを提示。国には協議での主体的、積極的な関与を強く求めたが、実質的な話し合いに至らないまま打ち切られた。


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