「とにかく現場が好き」で、芸歴26年。菅野莉央「何が起きるか分からないのが、生きていて楽しいなと思うんです」【ロングインタビュー後編】

放送中の連続ドラマ「SUPER RICH」(フジテレビ系)に出演中の菅野莉央さん。江口のりこさん演じる氷河衛が社長を務める、電子書籍を扱うベンチャー企業「スリースターブックス」のCMO(マーケティング責任者)・鮫島彩を演じています。インタビュー後編では、女優を志すきっかけとなった出会いや、映画「ジョゼと虎と魚たち」のオーディションでのエピソード、韓国語を習得した理由などをお聞きしました(前編はこちらhttps://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1233597/)。

女優を続ける理由は「とにかく現場が好き」

――菅野さんは2歳の頃から子役として活動されていたとのことですが、どのようなお仕事をされていたのですか?

「始めた頃は、赤ちゃん雑誌のスチール撮影が多かったです。それから5歳の時に初めてドラマに出演させていただいて、8歳の時に『仄暗い水の底から』(2002年)という作品で初めて映画に出演させていただきました」

――その頃のことは、覚えていますか?

「覚えてます! 映画の撮影で1カ月半ほど毎日現場で過ごす日々を送っていたのですが、その頃から、現場にいることが大好きになったんです。子どもながらにその日々がすごく印象に残って、『また映画のお仕事をやりたいな』と感じていました。小学生の頃は、映画のお仕事をさせていただくことが多かったです」

――当時から、「芸能界の道で生きていきたい」という思いを抱いていたのでしょうか。

「当時はあまり芸能界というものを意識していなかったというか、『芸能人になりたい!』とは考えていませんでした。現場で大人のスタッフの方と一緒に作品を作ることや、職人さんがたくさんいて、みんなで一緒に作っていくという過程に興味が湧いて、ただただ『楽しい!』『また現場に行きたい!』という感覚だったと思います。習い事のようなイメージもありつつ、漠然と続けたいなと思っていました」

――その中で、ご自身のターニングポイントになるような作品はありましたか?

「小学6年生の時に、『いちばんきれいな水』(06年)という加藤ローサさんが主演の映画に出演させていただいたんです。加藤さんが姉で、私が妹役という姉妹のお話だったのですが、この作品でも、ひと夏の間ほぼ毎日現場にいるという日々を過ごして。その頃、年齢的にそろそろ子役の事務所にはいられなくなるというのもあったんですけど、今後のことを考えた時に『やっぱりこの先も女優を続けていきたい』と再認識したんです。それくらい、やっぱり現場が好きだなとあらためて感じたのを覚えています。その翌年、中学生になった年に、現在所属しているアミューズにお世話になることになりました」

――小学6年生の時に大きな決意があったのですね。今ではさまざまな映画やドラマにコンスタントに出演されていますが、ご自身としては、“その頃描いていた未来像に今の自分がいる”という感覚なのでしょうか。

「いえいえ!(笑)。私はあまり先々の計画性がないというか、『絶対こうするぞ!』っていうビジョンがなかったんです。ただただ『とにかく現場に行きたいな』『お仕事楽しいな』と思いながら、一つ一つを積み重ねてきた感覚なので、まさかこんな感じの28歳になっているとは思ってなかったです(笑)。皆さんもあると思うんです。『もっと大人だと思ってた』『こういう感じだと思ってなかった』みたいな。私もそんな感じで生きてきました」

――「現場が好き」という純粋な思いが、菅野さんを突き動かしているのですね。

「そうですね。予測していなかった経験も含めて、何が起きるか分からないのが、すごく生きていて楽しいなと思うんです。それは留学に行ったこともそうなんですが、元々は自分が留学に行くとは思っていませんでした。大変なことがあっても、全部お仕事で生かせるなと思うんです。すべての経験が、自分の血肉になると思っています」

韓国の作品が大好きで、1年間留学へ

――菅野さんは韓国への留学経験があり、特技は韓国語と英語と拝見しました。

「元々韓国映画が好きで、1年間留学しました。留学したばかりの頃は韓国語を全く話せない状態だったので、英語で授業を取らないといけなかったんです。自分が悪いんですけど(笑)。そこで英語のリスニングも鍛えられて、かつその授業とは別で韓国語のクラスも取っていたので、同時に履修して、という感じでした」

――留学前から、英語は話せたのですか?

「大学受験レベルの英語でした。リスニングはなんとなくでしたし、書くのも苦戦しました。レポートの提出が重なると、英語でレポートを書いて、韓国語の試験も解いて。二つやるのが大変でした」

――留学したのは、お仕事に役立てたいという思いもあったのでしょうか。

「それは本当になかったんです(笑)。ただ『留学がしたい』というのが目的だったんですが、韓国作品が本当に好きなので、韓国のお仕事ができる機会があればうれしいです。日本の作品でも、韓国語を使う役もやってみたいですね」

――本当に韓国の作品が好きなんですね! Instagramでも、たくさん作品を紹介されていましたね。

「このコロナ禍で輪をかけて韓国作品を見たので、Instagramはあれでも厳選して載せているんです(笑)。以前は韓国に年に何回も行って、現地で映画を見に行っていました。今はその分日本でいろんな作品を見あさっていて、分析している本を読んだりとか、韓国語と字幕の両方を見て、字幕が意訳されている部分を発見したりして楽しんでいます。すっかり沼にハマってます(笑)」

――このコロナ禍で、韓国のドラマや映画がすごく身近なものになりましたよね。

「『SUPER RICH』の現場でも、韓国ドラマを見ていらっしゃる方が本当に多いんです。みんなで誰が一番に見終わるか競っています(笑)。先に見終わった人は『見たよ』って自慢したり、『早く話したいから、みんな早く見て!』って盛り上がってます」

「自分がその時いいと思ったものを選ぶことが、一番後悔がない生き方なのかなって」

――個人的なことで恐縮ですが、一番好きな映画が「ジョゼと虎と魚たち」(03年)でして…。幼少期のジョゼ役で出演されていますが、当時の思い出があれば教えてください。

「『ジョゼ』は、オーディションがすごく印象に残っています。関西弁でオーディションだったんですけどよく分からなくて、なんとなくの関西弁でセリフを言っていたんです。『これでいいのかな?』と思いながらしゃべっていたのですが、監督の犬童一心さんが、部屋の隅で何も言わず、ずっとほほ笑みながら見ていらっしゃって。子どもながらに『この大人の人は、何を考えているのだろう?』と思った記憶が強く残っています」

――犬童監督は何も言わないままだったのですか?

「そうなんです。普通監督さんって『もっとこうしてください』とか、いろいろ話してくださるんですけど、犬童さんは部屋の隅で笑っていました(笑)」

――そんなオーディションを経て、菅野さんがジョゼ役に決まったのですね。貴重なお話をありがとうございます! これまでのお話を聞いて、菅野さんは丁寧に役に向き合う部分を持ちながら、性格としては結構大胆な部分がある方なのかなと感じたのですが、ご自身では、どのような性格だと捉えていますか?

「結構ネガティブというか、落ち着いているとか暗い感じに見られることが多いんですが、自分では、割と図太いのかなって(笑)。図太いというか、楽天家? なんとかなるって思うタイプです(笑)。ポジティブなのかもしれないです」

――「SUPER RICH」で鮫島彩役を菅野さんが演じることが発表された際、「自分の価値観で物事を選択して生きていくところが自分と似ている」とコメントされていましたよね。今日お話させていただいた中でも、女優を志したきっかけや、留学、オーディションなど、一つ一つの選択に、大事に向き合っているんだなと感じる瞬間が何度もありました。

「衛さんと海外旅行で出会って『うちに来ない?』と誘われた彼女が、『行きたいから行く』という理由で入社を決めたというのを読んだ時、『自分とベースが似てるのかも』と感じて、そのコメントを出させていただいたんです。このお仕事をずっと続けていくという選択もそうなんですけど、いろんなことを現実的に考えると、時には周りを見て迷ってしまうこともあると思うんです。生きているとたくさん選択肢があるんですけど、結局はたぶん、自分がその時いいと思ったものを選ぶことが、一番後悔がない生き方なのかなって今の自分は思っています」

――最後に、今後の展望を教えていただけますか。

「韓国の作品を見ていると、役者さんの熱量というか、内面からにじみ出るエネルギーみたいなものがすごく大きいなと感じることが多いんです。そうやって海外のものに刺激を受けながら、自分としては常々レベルアップしたお芝居を出していけるように、ずっと変化し続けたいなって思います。それが一番大きい目標です。今後どんな役に挑戦できるか分からないですが、毎回毎回、前とは違う自分を見つけながら、新しい一面を出していけたらいいなと思います」

子役としての活動や、韓国への留学で得た経験、演じる役への理解の深め方、そして今抱いている思いと、現時点での菅野さんにじっくりお話をしていただきました。インタビューを通して印象的だったのは、幼い頃に感じていたことや、オーディションでの光景など、10年、時には20年以上前のことも、質問を投げ掛けるとすぐに当時を振り返って話し始めてくださったこと。

「SUPER RICH」における鮫島彩の“履歴書”を読み込み、その背景を想像してお芝居に落とし込んでいくお話を聞きながら、菅野さんは一つ一つの物事に丁寧に向き合い、自分のものにしているからこそ、何年も前のこともしっかりと自分の“財産”にできているのだろうなと感じさせられました。そんな菅野さんが言う「何が起きるか分からないのが、すごく生きていて楽しいなと思うんです」という言葉には、未来を照らす確かなパワーが宿っていました。

【プロフィール】

菅野莉央(かんの りお)
1993年9月25日生まれ。埼玉県出身。O型。2歳から子役として活動をスタートし、5歳で「校長がかわれば学校が変わる」(TBS系)でドラマ初出演。2002年、8歳で「仄暗い水の底から」で映画デビューを果たす。女優として活動を続けながら法政大学に進学、さらに韓国の延世大学校に留学し、韓国語と英語を習得。主な出演作は、映画「ジョゼと虎と魚たち」「世界の中心で、愛をさけぶ」「いちばんきれいな水」「悪の教典」「生贄のジレンマ」「星降る夜のペット」「RUN!-3 films-」「人数の町」「地獄の花園」、NHK連続テレビ小説「風のハルカ」「とと姉ちゃん」、NHK大河ドラマ「風林火山」「青天を衝け」、ドラマ「下町ロケット」(TBS系)、「ラブコメの掟~こじらせ女子と年下男子~」(テレビ東京ほか)、「エロい彼氏が私を魅わす」(FOD)など。

【番組情報】

木曜劇場「SUPER RICH」
フジテレビ系
木曜 午後10:00~10:54

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【締切】2021年12月29日(水)正午

取材・文/宮下毬菜(フジテレビ担当) 撮影/尾崎篤志

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