「ハードフォーク・ソフトフォーク」って何?暗号資産にたびたび起こる改善の仕組みを解説

ビットコインは11月16日に「タップルート」と呼ばれるソフトフォークによって仕様の改善をおこないました。2017年8月には「セグウィット」というソフトフォークを実施し、今回はおよそ4年ぶりとなる大型アップデートに注目が集まりました。また、ネムとシンボルという暗号資産も同じく11月にそれぞれハードフォークを実施しました。

このように暗号資産について調べていると「ソフトフォーク」や「ハードフォーク」という言葉を目にします。どちらも暗号資産を改善するものですが、仕組みに違いがあります。そもそもどのような時にソフトフォークやハードフォークはおこなわれるのでしょうか。以下では過去の事例を交えつつ、基本的な内容を解説します。


ソフトフォークとハードフォークの違い

ブロックチェーンはマイニングによって新しいブロックが随時追加されて伸びていきます。あるとき二者のマイナー(マイニングをする人)が同時にマイニングに成功すると、一時的にブロックチェーンが分岐してしまいます。これを「フォーク」と呼びます。このようなフォークは珍しくなく、その対策としてビットコインを含む多くのブロックチェーンでは「最も長いものを正規のチェーンとする」というルールなどが決められています。

そしてフォークはブロックチェーンにおけるルール変更の意味でも使われます。それが「ソフトフォーク」と「ハードフォーク」です。これらはブロックチェーンの分岐を伴うルール変更を指しています。

ハードフォークとはルール変更前後のネットワークに互換性がないアップデートを指します。互換性がないため、旧ルールを支持する者と新ルールを支持する者で別れた場合には、ブロックチェーンが完全に分岐することになります。ビットコインキャッシュはビットコインの開発方針を巡る対立からハードフォークによって2017年8月にビットコインから分岐して誕生しました。

一方で、ソフトフォークとはルール変更前後のネットワークに互換性があるアップデートを指します。互換性があるため、ルール変更の合意がとれていなくても、ブロックチェーンが完全に分岐することはありません。いずれは旧ルールと新ルールのどちらかに収束することができます。冒頭で触れたビットコインの「セグウィット」についても直後は支持が少なかったですが、今では過半数が変更後のバージョンに移行しています。

このように比べるとブロックチェーンのルール変更は全てソフトフォークで行うのが良いようにみえますが、ソフトフォークでは互換性を保つ範囲での変更ができません。ハードフォークのほうがより柔軟に大規模な変更を加えることができます。たとえば、イーサリアムはハードフォークを段階的に繰り返すことで大規模なアップデートを実施しています。

ソフトフォークとハードフォークがおこなわれる理由

ここまでハードフォークとソフトフォークの違いについて述べてきましたが、暗号資産にとってブロックチェーンが分岐することは基本的に望ましくありません。そのため、大多数のマイナーや開発者らが賛成しない限り、どちらも安易に実施されることはありません。しかし、それでもハードフォークやソフトフォークが定期的におこなわれるのはなぜなのでしょうか。

暗号資産の取引の利便性は基盤となるブロックチェーンに依存します。ブロックチェーンの取引処理性能を上まわる取引が発生すると取引の遅延や手数料の高騰などが起こります。この問題を「スケーラビリティ問題」と呼びます。また、暗号資産では取引のプライバシーも重視されます。一般にソフトフォークやハードフォークはこれらを改善するためにおこなわれます。

しかし、暗号資産ではアップデートの方針を巡ってコミュニティ内で対立が起こってしまうケースがあります。その場合にはハードフォークによってブロックチェーンが分岐し、これまでの暗号資産とは別に新しい暗号資産が誕生します。このとき旧暗号資産の保有者に対して同量分の新暗号資産を付与することでユーザーを引き継ぐことが多くなっています。ビットコインキャッシュが誕生したときもビットコインの保有者に対してそれが無償で付与されました。

2017年の頃にはハードフォークによって新しい暗号資産が次々に誕生し、一部では無償の付与をねらって投機的な動きも見られました。そのため今でもハードフォークを好材料として捉える人はいます。イーサリアムのようにコミュニティ内の賛成を前提としたアップデートであれば価格の上昇も期待できますが、なかには中身のないものや対立によって生じるものもあるため、その背景を慎重に見極めなければなりません。

今回のビットコインのソフトフォーク「タップルート」は90%以上のマイナーが支持したうえで実施されました。スケーラビリティやプライバシーの向上とともにビットコインのユースケースが拡大していけば価格にもポジティブな影響が及ぶこともあるかもしれません。

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