IoTでの活用が期待される「Wi-Fi CERTIFIED HaLow」の現状をWi-Fi Alliancが説明

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米Wi-Fi Allianceは11月2日に「Wi-Fi CERTIFIED HaLow

」を発表したが、これに関する説明会をオンラインの形で12月2日に行った。この内容をご紹介したい(Photo01)。

Photo01:説明を行ったKevin Robinson氏(SVP, Marketing)

Wi-Fi Allianceはご存じかと思うが、Wi-Fiのプロモーションを行う団体である。Wi-Fiの仕様そのものはIEEEの802.11分科会で定められ、その仕様は例えばIEEE Get 802 Programを利用すれば無償で入手可能だが、IEEE 802.11はあくまでも無線規格の策定のみであって、例えば相互接続性の検証であるとか暗号化技術(WPA/WPA2/WPA3)、アクセスポイントにおける相互運用性の担保などはもちろんカバー範囲外である。

こうした事柄に対しての取り組みを行っているのがWi-Fi Allianceであり、Certified Programという形でさまざまな仕様の策定や相互接続性のPlugFest、認証プログラムの実施やプロモーションなどを行っている。2019年には、この後Wi-Fi 6Eも対象に追加されていたりする。

さて、そうしたプログラムの最新のものが今回発表されたWi-Fi CERTIFIED HaLowである。HaLowという名称はちょっと馴染みが薄いが、仕様としては「IEEE 802.11ah-2016」として策定されており、これをWi-Fi HaLowという名称でプロモーションを行っている。

このWi-Fi HaLowだが、これはIoT機器向けのWi-Fi規格として当初から有望視されていた(Photo02)。

Photo02:Wi-Fiを使うIoT機器はかなり増えてきたが、今後はさらに伸びると予測され、ここがWi-Fi HaLowの主なターゲットとなる

理由はその長距離到達性と省電力性である(Photo03)。

Photo03:ここに掲げられたポイントはWi-Fi HaLowそのものの特徴と、Wi-Fi CERTIFIED HaLowの特徴の両方が混在しているので注意

ポイントはSub 1GHz帯を利用する事だ。これにより、省電力でも2.4GHz/5GHzを使う従来のWi-Fiより到達距離が伸ばせることになる。最近だと、鉄筋コンクリートのマンションの玄関にスマートロックを入れたらアクセスポイントに接続できなかった、とか1Fに置いたスマート家電が3Fのアクセスポイントに接続できなかった、なんて笑い話をしばしば聞くが、こうした事がWi-Fi HaLowだと解決しやすくなる。また性能よりも省電力に焦点を置いた規格なので、電池駆動で数か月~数年の稼働が不可能ではない(アプリケーションの要件次第ではある)。

Photo04はSpeed/Range Enveropeを他の規格と比較したものだが、Wi-Fi HaLowは最大なら80Mbps、最長なら1Kmの到達距離が実現可能、としている。

Photo04:もちろんこの数字は理論限界であって、例えば日本だと1kmの到達距離は不可能ではないが、80Mbps以上は論外(最良のケースでも4.4Mbps)である

Photo05はもう少し各方式の特徴を細かく比較したものであるが、Sub 1GHzのISM Bandを使う他の規格(Z-WaveとかWi-Sun LoRAなど)と比較しても性能と到達距離の選択の自由度が高い事が判る。理由の1つは変調方式がWi-Fi譲りの多様な方式がサポートされていることで、特に256QAMを使った場合は最低でも4Mbps、最大で86.7Mbpsのピーク速度が得られることになっている。もう1つの理由はバンド幅で、Wi-Fi HaLowでは最大16MHzのチャネル幅が定義され、またWi-Fi 5(IEEE 802.11n)で追加されたShort GI(Guard Interval)も取り込まれており、これを組み合わせた形だ。

Photo05:出典はWi-Fi AllianceのWi-Fi HaLowのWhitePaperである

もっとも日本では当然帯域の制限がある。Photo06はIEEE 802.11-2020に記されたWi-Fi HaLowの法規制の状況で、日本国内だと915.9MHz~929.7MHzを利用できるがチャネル幅は1MHzで出力は20mW+3dBi。920.5~923.5MHzは250mW+3dBiまで出力をあげられるが、チャネル幅そのものは変わらない。この結果、256QAMでShort GIを使っても4.4Mbps、Long GIだと4.0Mbpsに抑えられてしまう。

Photo06:IEEE 802.11-2020のAnnex D(Regulaory references)より。16MHzの帯域を使えるのは米国と韓国のみであるが、韓国は今度は出力が3mWないし10mWと低めで、到達距離が厳しそうだ。結局手放しでメリットを享受できるのは米国だけである

まぁ、それでも競合規格に比べれば十分高速であり、逆に言えばデータ量が少なければ送信時間を最小に抑えられることになる。この結果として省電力性も実現できる(Photo07)ので、IoT機器に最適、という訳だ。

Photo07:こちらもWi-Fi HaLowのWhitePaperより。競合規格と比べて圧倒的に送信のエネルギー効率が高く、結果としてより長いバッテリー寿命が得らえるとする

ただWi-Fi HaLowそのものにはセキュリティの対策とかConnectivityへの配慮などは何もない。そこで、Wi-Fi 6/6Eと同等の機能を盛り込んだ形でCertificationを構築したのが今回発表されたWi-Fi CERTIFIED HaLowという訳だ(Photo08)。

Photo08:この結果として、Wi-Fi HaLowは利用する周波数帯が違うだけのWi-Fi規格として、従来のWi-Fiと互換性を保つ形で利用できるようになる、としている

Photo09はIDC Researchによる予測であるが、2022年には1000万個のモデムチップが市場に出荷される、としている。

Photo09:これはあくまでもIDC Researchの見込みであるが、Robinson氏によれば「我々は楽観的に捉えている」としており、この数字が実現するかどうかはともかく、割と早期に立ち上がる見込みであるとした

さて、問題は本当に立ち上がるか? である。実は国内では2018年11月に「802.11ah推進協議会」が発足しているものの、まだ普及への道のりは遠い。実際本国でも、現時点でWi-Fi CERTIFIED HaLowを取得したのは現状Methods2Business、Newracom、Morse Microの3社6製品に過ぎない。世界で最初にWi-Fi Halow(当時はまだこの名前が無かったのでIEEE 802.11ah)対応IPをアナウンスしたのはギリシャのAntcor(Advanced Network Technologies)(2014年にu-bloxが買収)であるが、結局マーケットには出てきていない。また既存の大手モデムベンダーでWi-Fi HaLowの対応を表明しているところは筆者の知る限り存在しない。

この辺りをRobinson氏に尋ねたところ、「現在はまだEarly Adaptionが始まったばかりの時期だ」としたうえで、先に挙がっている3社以外にAdapt-ipHugeIC

ただ、例えばAntcorを買収したu-bloxがWi-Fi HaLow対応モデムを出していないという辺りは、まだ卵と鶏の状況が続いている様に思われる。このあたりを打破するようなキラーアプリケーションが出てくるかどうか、に掛かっている様に思われる。少なくとも今回の説明会では、これに関しての答えは得られなかった。