オコエが受けた「関節軟骨欠損症」の手術とは? 専門家が解説…復帰へ数か月の場合も

楽天・オコエ瑠偉【写真:荒川祐史】

オコエは「左膝関節軟骨欠損症」に対する自家軟骨移植術を行った

楽天は1日、オコエ瑠偉外野手が「左膝関節軟骨欠損症」に対する自家軟骨移植術を行ったと発表した。今年2月に左手首の手術を終えたばかりの期待の大器に襲った怪我、そして、手術とはどんなものなのだろうか。芝浦田町スポーツ整骨院・はり治療院の新盛淳司院長が解説してくれた。

軟骨は骨と骨、関節の滑らかな運動をサポートし、体重が掛かった時に衝撃を吸収するといった役割があります。いくつかの層が重なって形成されているために、圧迫力には強い一方で、捻った際などに生じる擦れる力には弱いという特徴があります。

膝の場合、靭帯を切るような怪我の際に半月板と一緒に軟骨も損傷したり、繰り返される外力により徐々に損傷したりするケースがあります。プロアスリートだけでなく、子どもや中高年のスポーツ愛好家も損傷する場合があるので注意が必要です。

症状は、膝を曲げ伸ばしした際に引っかかりを自覚したり、ジャンプの着地や、切り返し動作などで痛みを感じたりします。進行すると、歩行や階段での痛みや膝に水が溜まることもあります。オコエ選手は2月に手首の手術を受けています。膝の痛みをかばうあまりに、手首を痛めるケースは考えられますが、左手首をかばうことで、膝を痛めるということは考えづらい印象です。以前から抱えていた痛みなのか、バッティングで捻る動作を繰り返した影響で膝軟骨を負傷した可能性もあると思います。

普段から、膝の痛みを訴える方に関しては、軟骨損傷の有無はマストなチェック事項です。なぜなら、軟骨は血管がないために、血流がないので治りにくいからです。損傷が初期で軽度の場合は、軟骨修復も期待できるのでヒアルロン酸注射やPRP(多血小板血漿)などの注射をしながらリハビリを行い、経過をみる場合もあります。早期発見が非常に重要です。長引く膝の痛みは専門医の診察が必要になります。

軟骨移植は慎重なリハビリが必要で復帰まで6か月~1年かかることも

損傷の範囲が広く、注射やリハビリで効果がなかった場合は、今回のオコエ選手のように手術が検討されます。軟骨の手術には、骨髄刺激法、骨軟骨柱移植、自家培養軟骨移植術が行われます。他にも整復内固定術もあります。

骨髄刺激法とは、損傷している軟骨の下の骨に穴を開けて骨髄から出血を促し、軟骨修復を図る手術です。骨軟骨柱移植は、負担のかかりにくい箇所の自分の軟骨を移植する手術です。自家培養軟骨移植術とは、自分の軟骨を採取し4週間培養させた後に移植する手術です。整復内固定術とは、はがれた軟骨片を元の位置にもどして固定する手術です。

オコエ選手の移植術式の詳細はわかりませんが、骨軟骨柱移植が考えられます。自家培養軟骨移植術よりも競技への早期復帰が期待されています。小さい軟骨損傷の場合、適用されます。軟骨を移植すると、慎重なリハビリが必要になります。一般的に復帰までは6か月から1年要するという報告もあります。

オコエ選手の状態はわかりませんが、軟骨を損傷したアスリートの多くは、まず注射やリハビリなどで痛みをコントロールできないかを試します。それでも効果が限定的な場合、シーズンオフに手術を選択する場合があります。長期のリハビリを要する事が予想されますが、オコエ選手は今後のパフォーマンスの為に最善の選択をしたのだと思います。フィールドで活躍する日が一刻も早く訪れることを祈っています。

○新盛淳司(しんもり・じゅんじ)
新浦安しんもり整骨院入船院代表。柔道整復師、鍼灸師。元日本代表の中村俊輔(横浜FC)をセルティック時代から10年以上パーソナルトレーナーとして支えている。関東リーグ・ブリオベッカ浦安のチーフトレーナー。昨年、JR田町駅前にオープンした芝浦スポーツ整骨院・はり治療院の院長も務める。

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(Full-Count編集部)

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