ソフトバンク・孫オーナーが新庄監督を〝挑発〟してでも訴えたかったこと

スポンサーパーティーにビデオメッセージを寄せた孫正義オーナー(球団提供)

鷹の総帥はニヤリと笑っていた。ソフトバンクは2日に福岡市内のホテルでスポンサーパーティーを開催。多忙を極めるためVTR出演した孫正義オーナー(64)は「王イズムの継承」徹底と来季の覇権奪回を厳命した。

冒頭に8年ぶりのBクラス、13年ぶりのシーズン負け越しに終わった今季の戦いを「悔しくて、悔しくてしょうがない!」と感情たっぷりに振り返った総帥。徐々にエンジンがかかると、藤本新体勢への全幅の信頼を表明し「常勝復活」へのみなぎる思いを打ち明けた。10月から「特別チームアドバイザー」の肩書を加えて〝現場復帰〟した王貞治球団会長(81)の情熱に敬意を表し「〝王イズム〟をなんとしても王会長が元気な間に、チームに徹底的に浸透させていただきたい」と熱望。王イズムの根底にある「常勝」への意思統一を改めて求めた。

世の中の〝風〟を読み、ビジネスの分野で常に先頭を走ってきた男は、野球界の〝新風〟にも当然のごとく敏感だった。「選手のケガだとか、相手チームが思いのほか頑張るとか、いろいろありますから毎回優勝するわけにはいきませんが…」と前置きした上で「どっかの新監督にですね『優勝にはこだわらない』という方もおられますが、それはそれで尊敬しますけれども、我々は優勝にこだわりましょう!」と大号令。日本ハムのビッグボス・新庄剛志監督(49)が就任会見で「優勝なんか一切目指さない」と発して話題を呼んだ発言を引き合いに出して〝挑発〟しつつ、チームに猛ハッパをかけた。

スポンサーパーティーという身内向けの場。孫オーナーは、毎年タイムリーな話題を盛り込んだユーモアのあるスピーチで楽しませてきた。今季はチームがリーグ連覇と5年連続日本一を逃し、4位と低迷。どんなVTRメッセージでチームを鼓舞するか注目を集めたが、話題をさらうビッグボスに〝戦い〟を仕掛け「常勝回帰」「王イズムの徹底」を強く訴えて、今年もしっかりとインパクトを残した。

ソフトバンクグループ関係者は「新庄さんが唯一ツイッターフォローしているのが孫オーナー。オーナーはそのことも知っているはずですし(新庄監督が)野球界に大きな話題を振りまいていることも知っている。自分で言った後にニヤリと笑っていたところがオーナーらしく、王イズムの継承を今一度訴える上でもってこいの話題だったということだと思います」と総帥の意図を推測した。

生粋の〝王信奉者〟である孫オーナー。総帥のメッセージを受け取った王会長は「我々は前に進むしかありません。今年の悔しさを晴らすには、来年勝つ! このことでしか気持ちを晴らすことはできません」と呼応。孫オーナーの熱い思いを受け、鷹が一丸となり新シーズンへ向かう。

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