新体制で取り組む日本の放送コンテンツの海外PRの課題は配信時代への対応【国際ドラマフェスティバル in TOKYO実行委員会・丸山公夫副委員長独占インタビュー】 / Screens

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日本の放送コンテンツの海外展開を推進する国際ドラマフェスティバルin TOKYO実行委員会は新たな組織体制をもとに、事業の継続とさらなる発展を目指している。10月はフランス・カンヌ現地で「MIPCOM Buyers‘ Award for Japanese Drama」を継続させ、東京では最大イベントである「東京ドラマアウォード」を実施。11月はTIFFCOMとの連携企画なども展開した。そんななか、組織をリードする同実行委員会・丸山公夫副委員長(民放連副会長兼コンテンツ海外展開委員長/中京テレビ放送社長)に国際ドラマフェスティバルin TOKYOの最新の取り組みから日本の放送コンテンツの海外PRの課題と今後の可能性について、話を伺わせてもらった。

■「アウォード統括会議」と「アウォードPR部会」を新設

民放連とNHKが中心となって組成する国際ドラマフェスティバルin TOKYO実行委員会は2021年度から新たな運営体制に移行し、現在、委員長を大久保好男民放連会長が、副委員長を丸山公夫民放連副会長と若泉久朗NHK理事が、エグゼクティブプロデューサーを香月純一日本映画テレビプロデューサー協会副会長が務める。

また同実行委員会が最も力を注ぐ「東京ドラマアウォード」の選考統括と最終審査を行う「アウォード統括会議」が新たに設置され、香月エグゼクティブプロデューサーが選考全般を統括し、中立的立場から担う。

さらに「東京ドラマアウォード」受賞作品PR施策を行う「アウォードPR部会」も新たに設置された。「アウォード式典部会」や「コンテンツ展開部会」と連携しながら、それぞれの部会を在京5社とNHKの6社が持ち回りで幹事社を務める体制で年間の取り組みが実施されるかたちへと変更された。

具体的には、2年ぶりにフランス・カンヌ現地で10月に開催された世界最大級のテレビコンテンツ見本市MIPCOMにおいては、同実行委員会の恒例企画となる「MIPCOM Buyers‘ Award for Japanese Drama」授賞式イベントもいち早く現地で復活させた。その模様については既報の現地レポートの通りである。

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会場では「MIPCOM Buyers Award Lounge」を設定し、ラウンジ内常設モニターでノミネート作品10作品のダイジェスト映像や受賞結果の告知動画を上映するなどし、現地参加者への訴求を図った。実際にラウンジに足を運ぶ各国のバイヤーに対して、案内スタッフが各局セラーとの商談を促す対応も行われていた。

2021年10月カンヌ開催のMIPCOM会場 Copyright© S.d;’HALLOY/IMAGE&CO

MIPCOM会場内の国際ドラマフェスティバルin TOKYO実行委員会ブース(筆者撮影)

同実行委員会にとって最大イベントである「東京ドラマアウォード」の授賞式は10月27日にグランドプリンスホテル高輪で開催された。従来のアウォードで重視された芸術性、番組の質の高さといった基準に加えて、市場性や商業性にも焦点を当て、「日本人として海外にみせたい」と思う魅力あるドラマを表彰した結果、『俺の家の話』(TBSテレビ)が作品賞/連続ドラマ部門グランプリを受賞した。なお、本授賞式の模様はBSスカパー!にてスカパー!無料の日にあたる12月5日(日)11時から放送予定である。

「東京ドラマアウォード」の授賞式の様子

さらに日本で唯一の国際コンテンツマーケットであり、国際映画製作者連盟公認の国際映画祭である「東京国際映画祭(TIFF)」併催の「TIFFCOM」では2021年の「東京ドラマアウォード」受賞結果を振り返りながら、受賞作品の多様な魅力やトレンドを紹介するセミナーがオンラインで配信された。TIFFCOMにてセミナーを企画するのは今回初の試みとなった。

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日本の今を見逃すな!TBS『TOKYO MER』と東海TV『顔だけ先生』の海外PR展開【TIFFCOM2021レポートⅡ】

日本の今を見逃すな!日テレ『錬金バトル』/YTV『THE完全犯罪』/カンテレ『ニッポン満足旅』の海外PR展開【TIFFCOM2021レポートⅢ】

BEAJマチュー・ベジョー氏に聞く、日本の海外PRの課題は市場変化への対応力【TIFFCOM2021レポートⅣ】

■海外マーケットで日本作品PRのチャンスを活かす必要性

事業の継続と更なる発展を目指すなか、国際ドラマフェスティバルin TOKYO実行委員会・丸山公夫副委員長は新たな運営体制での取り組みについてこのように説明する。

「東京ドラマアウォードは14年の歴史が実を結び、選ばれる放送局の人間もその価値を認識していることを実感しています。立ち上げ当初から海外で売れるドラマを選んでいこうという方針がありましたが、今年から改めて商業的に成功する作品に焦点を当て、選んでいます。またMIPCOMやTIFFCOMなど海外マーケットでもアウォード作品を積極的に紹介することで、受賞の価値をさらに高め、日本の作品のPRのチャンスを活かしていく必要性はあると感じています」。

一方、海外マーケットの場では韓国をはじめ各国が国を挙げてプロモーションに力を入れている。国際ドラマフェスティバルin TOKYO実行委員会の立場から日本のプロモーションの課題についても考えを示した。

「東京ドラマアウォードは国内で完結している部分は否めません。この課題をもう一度確認しながら、喚起していく必要があると認識しています。例えば、アウォード受賞作を“日本イチオシの今年のドラマ”というかたちでPRしていくなど、PR部会を中心に新たなPR施策を練る必要もあるでしょう。また個人的な想いとしては、日本のドラマ全般の課題として、そもそも世界に配信していくことを前提に作られていないことが海外展開を考える上で、厳しい状況にあると思っています。韓国のドラマは放送と同時に配信されています。それはつまり、原作・脚本・音楽・実演家など契約の段階から海外展開を考えられているのです。ですから、放送で完結するドラマを作っている限りは、海外に広げていく上で同じ方向に進みにくい問題が残されたままです。可能性を感じるのはTBSがDisney+やNetflixに放送後すぐに配信する試みを始めたこと。こうした動きによって、プロモーションに関しても意識が変わっていくのではないかと期待しています。海外に向けてプロモーションを行うことが当たり前になることがひとつの理想のかたちにあります」。

■海外展開のハードルが下がった今、チャレンジする意味は高まっている

また海外市場における日本のドラマの強みを考えることもプロモーションを推進する上で重要なポイントにある。

「TVerに並んでいるドラマのラインナップを見れば一目瞭然。日本のドラマは数そのものもバリエーションも多いです。深夜ドラマの『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京)がアジアで売れているように、海外展開を積極的に行うことでヒットするドラマもあります。かつて、尺の短さや話数の足りなさが海外展開のネックの要因と考えられていましたが、配信が主流となる今はそれも関係ありません。いかにしてパワーのある配信先に売っていくべきか、考える時にあります。また『Mother』(日本テレビ)のように世界のドラマ市場で影響力のあるトルコでリメイクされ、世界でヒットするケースもあります。さらに、韓国映画の『パラサイト』がアカデミー賞を受賞したことで根底から覆されました。ストーリーとして面白ければ、どの国でも受け入れられる可能性は確実に広がっているのです。海外展開のハードルは下がったわけであり、チャレンジする意味はますます高まっていくのではないでしょうか。東京ドラマアウォードの取り組みを通じて、この機運を高めていく役割を担っていきたいと思います」。

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今年度はアジア諸国における日本ドラマのプロモーション展開のひとつである「Jシリーズ・フェスティバル」の実施も計画されている。初のハイブリッド形式で、台湾のClapper Studioにて12月4日(土)に開催される予定がある。新体制が構築されたことを活かし、継続的な取り組みと共に、配信時代に合わせた横断的なプロモーションの展開も期待されるところだ。