【あの人の溺愛店】パスタも人も「温度」が決め手の最愛イタリアン

ふとしたときに食べたくなる、あの料理。
いるだけで幸せな気持ちになる、この空間。
会いにきて良かったと思わせる、店主の笑顔。

お気に入りのレストランで過ごす時間は、いつだって私たちの人生を豊かにしてくれる…。

そんな自分だけのとっておきの店を、お招きしたゲストが紹介するシリーズ企画〈あの人の溺愛店〉

2年ぶりの連載となる今回は、加賀市大聖寺のカフェ「FUZON KAGA」オーナー・山根大徳さんと、漆器アーティストとして国内外で活躍する田中瑛子さんご夫妻に、愛するお店への熱い想いを語ってもらいました。

木と漆の魅力を海外に発信するため、世界各国で展示会の開催や技術指導を精力的に行なってきた瑛子さんと、その活動をサポートしてきた大徳さん。コロナ前までは、南米やヨーロッパ、アジアなど、訪れた先々で「食」を楽しんでいたそうです。

山根大徳さんの活動内容はこちら
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地元に愛される人気レストラン

そんなおふたりが溺愛するお店が、小松市大領中町にあるイタリアンレストラン『ARU(アル)』

地元の生産者から仕入れた無農薬の有機野菜や朝獲れの魚介など、素材の持ち味を生かした料理は、季節感たっぷりで見た目も鮮やか。ランチからディナーまで予約必至の人気店です。

小松市郊外の住宅街に位置する『ARU』。店前の駐車場が埋まっている場合は、最寄りの第2駐車場へ。
木の温もりを感じる落ち着いた空間。オープンキッチンの臨場感を堪能したい人はカウンター席がおすすめ。

大徳さんと瑛子さんが『ARU』と出会ったのは5年前、これからお店がオープンしようとする頃でした。

「魚津悠さんという陶芸作家さんの展示会で〈自分の器を使ってくれるお店が近々オープンする〉という話を聞いて。好きな作家さんの器にどう料理を盛り付けるのか、とても興味があったので足を運んでみたんです」と大徳さん。

それから次第に『ARU』の魅力に惹き込まれていくふたり。その理由とは…?

溺愛する理由 その①

ひとつ目は「いつでも熱々のパスタが食べられる」こと。麺の温度には人それぞれ好みがありますが、パスタ好きな大徳さんにとっては、これくらいの熱々がベストなんだとか。

どれくらい熱々かというと、取り分けるさいに天井に登る勢いで湯気が立つくらい。シェフ自身も、ソースをバランスよく乳化させるため、麺の温度にはこだわっているそうです。

加賀市の橋立港で水揚げされたワタリガニのトマトソースパスタ。熱々のパスタに旨味たっぷりのソースが絡み合う。

大徳さん:パスタは熱々が一番!僕が知っている限りでは、これだけ熱々のパスタを提供してくれるお店は、県内でも『ARU』さんともう一軒くらい。茹で加減も自分好みのアルデンテで、このパスタを食べてお店のファンになったと言ってもいいくらいです。

溺愛する理由 その②

ふたつ目の理由は「素材と料理に対する姿勢が真面目である」こと。

上條さん夫妻が経営する同店は、奥様の唯さんがシェフとして料理を、ご主人の侑弘さんがソムリエとしてワインと接客をそれぞれ担当。ふたりとも超がつくほど研究熱心で、料理や素材はもちろん盛り付ける器や空間づくりにも妥協を許さない。そんなところに、ものづくりを生業とする瑛子さんは魅力を感じているそうです。

戻りガツオの藁焼きとカラフルトマトのカルパッチョ。信頼する地元の農家から仕入れた有機野菜が彩りを添える。
数種類のペッパーをまぶした鴨肉をじっくりロースト。仕上げに加賀棒茶の香りを纏わせた、地元色あふれる一品。
侑弘さんが厳選したイタリア産のワインを中心に、常時200本近くのボトルを取り揃えている。

瑛子さん:地元の旬を大切にされていて、季節ごとに新しい発見ができるのもポイント。それでいて一皿ごとのボリュームもあるので、お腹いっぱい楽しませてくれます。お酒が好きな私にとっては、侑弘さんがセレクトするワインと料理とのペアリングも楽しみのひとつになっています。

溺愛する理由 その③

そしてもうひとつ「上條さん夫妻の温かい人柄」も愛すべきポイントだと言います。

「一皿一皿から唯さんの温かい人柄と、料理への愛情が伝わってくる」。オープン当初からお客さんの心を掴んできたホスピタリティは、そんな瑛子さんの言葉からも汲み取ることができます。

信頼するスタッフと共に、二人三脚でお店を切り盛りする上條さん夫妻。開店5年目となる今年は、ミシュランガイドのビブグルマンも獲得(実際の営業中はマスクを着用しています)。
今年10月には合同で日本酒イベントも開催。大徳さんがセレクトした秋田の酒と、唯さんの料理が共演した。

大徳さん:それと侑弘さんのいい意味でのフランクさ。初めて訪れた日にグッと距離が縮まった気がして、2回目以降も通いやすかったのを覚えています。とはいえ、接客中は絶妙な距離感とさりげない気遣いで、食事と会話に集中させてくれる。周年をお祝いに来てくれる義理堅さも男前ですね。

「これからも協力しあって、新しいことにチャレンジできたら」と話す、山根さんと上條さん。瑛子さんが手がける漆器と、唯さんがつくる料理が共演する日はいつか来るのか。今後の展開が楽しみです。

ARU
アル
石川県小松市大領中町1-227
TEL.0761-46-5761
営業時間/11:30~14:00(L.O.)、18:00〜21:00(L.O.)
定休日/水曜、第1・3木曜日
席数/カウンター6席、テーブル10席
駐車場/10台
※こちらの情報は取材時点のものです。

(取材・文/ヨシヲカダイスケ、撮影/林 賢一郎)

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