香港、オミクロン株で水際対策を一段と強化

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香港でも新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染者が確認されたことを受けて、感染ケースが出た南アフリカ共和国や英国、日本などの国・地域からの入境を香港居民に限定するなど、水際対策を一段と強化している。この2カ月近く市中感染0(ゼロ)が続き、クリスマスムードも高まってきているだけに、入境制限とその後の検疫体制をより厳格化することで、市中感染を食い止めていきたい考えだ。

香港はこれまで、空港到着時のウイルス検査で陰性でも、滞在していた国・地域の新型コロナの感染状況や入境者のワクチン接種の有無などに応じて、一定期間、政府指定の検疫ホテルで強制隔離とPCR検査を実施。ウイルスの潜伏期間が長いケースや、無症状感染者も検疫期間中に見つけ、こうした人たちによる市中感染の広がりを封じている。

この水際措置が奏功し、今春第5波が沈静化して以降、感染者は「輸入型」と呼ばれる、海外から入境・帰省してきた人たちがほとんど。渡航歴がない市民の感染が最後に確認されたのは10月8日、香港国際空港に勤務する男性の感染源不明のケースで、これも約50日ぶりに出た1件だった。

まだ情報が少なく実体がつかめないオミクロン株だが、12月2日現在、香港では4人の感染が確認された。

最初に感染が確認された南アからやってきた男性(36)と、2例目のカナダから来た男性(62)は、同じ強制検疫ホテルの向かい部屋同士だった。最初の男性は11月11日に入境。2日後に受けたPCRテストで陽性反応だった。2例目の男性は、11月10日に入境。2日後と4日後のPCRテストは陰性だったが、8日後の検査は陽性だった。

現地を視察した専門家は、南アから来た男性がマスクをしないか換気口があるマスクをして部屋のドアを開け、廊下にウイルスが滞留中に、向かいの部屋の男性がドアを開けたことで感染した可能性が高いと分析した。二人はそれぞれ、6月と5月にビオンテックワクチンの2回目を接種済みだった。

3例目の男性(37)は、ナイジェリアとエチオピア、タイを経由して11月24日に来港。27日の検査で陽性反応が出た。この男性は、10月初旬にモデルナワクチンの2回目を終えたばかりだった。4例目は乗り換えのために空港に待機中だった38歳の男性。パプアニューギニア、ナイジェリア、カタール経由で来港し、ワクチンは接種していなかった。

4人のうち3人が無症状だったという。

香港政府は、ホテル内感染を警戒し、検疫ホテルでは換気口があるマスクの利用を禁じた。感染していた場合、換気口からウイルスを外に出してしまう可能性があるからだ。

また、日本も含め、オミクロン株の感染者が確認されたアフリカ以外の国・地域を「高リスク」に位置づけ、香港に入境できるのはワクチンを完全接種済みの香港居民に限定。入境後も21日間、検疫ホテルで隔離し、その間に6回、隔離後も指定日に、PCR検査をする。

!<1303599>PCR検査の結果を待つ場所。机の上にはごみ袋も用意されている

!<1303600>無料の水やスナック。PCR検査の結果待ち時間用に用意されていた

「高リスク」の中でも、南ア、アンゴラ、エチオピアなど、アフリカから戻って来た香港居民に対しては、政府の検疫専用施設で7日間隔離し、毎日PCR検査をする。そこで陰性なら、その後検疫ホテルで14日間隔離し、1日置きにPCR検査をするという厳しい措置に踏み切った。

!<1303601>隔離ホテル別に分かれたシャトルバスの列

折しも、香港で最初のオミクロン株の感染者が隔離中だった頃、私も日本から香港に戻ってきて別のホテルで隔離の日々だった。当時日本は「中リスク」国だったことと、私が2回のワクチン接種済みだったので、14日間の隔離と7日間の自己観察となっていた。

この間、空港到着から隔離・自己観察までに目にしたものは、日本とは比較にならない、香港の水際対策の徹底ぶりだった。

空港の入境審査では、隔離中の注意事項などが書かれた小冊子とともに、毎日の体温測定用に電子体温計が支給された。手荷物を受け取る際には、除菌シートを手渡された。ホテル行き無料シャトルバス乗り場は屋外にもかかわらず、大型の扇風機が回り、防護服姿の女性に、スーツケースを思いっきり消毒された。

!<1303602>空港からシャトルバスに乗って隔離ホテルに向かう入境者。スーツケースは徹底消毒

ホテルでは裏口の駐車場で降ろされ、ゴーグルと防護服で徹底装備の女性がその場でチェックイン手続きをした。食事は毎食、ドアの前の椅子の上に置かれる。ごみは毎日指定の時間に部屋の外の床に置く。廊下には監視カメラが備え付けられ、部屋から出たら最高罰金2万5000香港ドル(約36万円)が科せられる。

!<1303603>部屋の前の椅子に置かれたお弁当

部屋にはあらかじめ14日分のペットボトル水が置いてあったが、陶器のカップやお皿などは一切なく、使い捨ての紙コップやプラスチック製のスプーンやフォークしかなかった。タオルは、要求すれば、部屋の外に新しい物が置かれて交換できた。外部からの郵便物や差し入れは部屋の外まで届けてくれるが、その逆は禁じられた。

!<1303604>ホテルのドアに貼られた警告書。違反したら最高2万5000香港ドルの罰則

!<1303605>隔離ホテルの部屋のドアに貼られた隔離中の注意事項

隔離中、接触したのは、PCR検査の検査官だけ。その検査官も、ゴーグルとマスクにフェイスシールド、防護服にゴム手袋の重装備で、毎回2人でやってきた。検査は、ドアの入り口で行い、検査員が使ったゴム手袋や検査キットの空袋などはすべて、後で私が他のごみと一緒に処分した。掃除機のような機械も持ってきていて、検体を取る時にその先端部分を口と鼻の近くに当て、ウイルスが放出されるのを警戒した対策のようだった。

チェックインから部屋までの移動には裏口の業務用エレベーターを使ったが、チェックアウトは、客用エレベーターで降りて正面ロビーで手続き。入退出の動線は分けていた。結局、すべての検査から解放されるまで、空港で1回、14日間の隔離中に4回、7日間の自己観察期間中に2回、合計7回もPCR検査を受けた。

「輸入型」の感染者は、こうした小さな防疫・検疫の積み重ねの中で見つけ出され、市中感染が食い止められていたのだと、身をもって知った。水際対策とは、入国制限だけでなく、入国後の対応も重要だったのだ。

!<1303606>空港で検査官から毎日測定するようにと支給された電子体温計

この点、日本の防疫対策は緩かった。成田空港では、途中から感染者が多い国からやってきた人たちに交じって手続きの列に並んだし、各手続き会場での消毒の徹底は、香港と比べてはるかに低かった。女子トイレの利用も不安だった。香港では、トイレ感染があったため、香港政府が、使用前後は必ずふたを閉めて水を流すよう呼び掛けていて、今や公共トイレはふたをする習慣が定着している。ところが、成田空港の女子トイレの便器にはふたがついておらず、トイレ感染しないか冷や冷やした。自主待機中は毎日、スマートホンに居場所確認が入ったがこれは日中だけ。行動は個々の良識と危機意識に任せる感じだった。

香港は今、クリスマスから翌年の春節にかけて、一年で一番街が活気付き、消費が活発化する時期を迎えている。この時期に合わせて、イギリスなど高リスク国の留学先や滞在先から、多くの香港人が帰省することも予想されている。市中感染がゼロの中で続いている市民生活と経済活動を持続させるためにも、水際対策が大きな鍵を握っている。(了)