なぜ西武は38歳の中村剛也と2年契約を結んだか? 渡辺GMが語った理由と思い

西武・中村剛也【写真:荒川祐史】

昨年オフには同い年の栗山と3年契約

西武の中村剛也内野手が3日、埼玉・所沢市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、38歳にして2023年までの2年契約を結んだ。年俸は2000万円減の2億円となるが、2年総額4億円ベースとみられる保証はベテラン選手の新規契約としてはレアケースともいえる。球団が来季プロ21年目を迎えるベテランとの複数年契約に踏み切った理由とは──。(金額は推定)

今季の中村は123試合に出場し、リーグ7位の打率.284、チームトップの74打点、18本塁打をマークした。渡辺久信GMは「とりあえず2年間は安心して野球をやってもらおうと思う。ウチの象徴であり、長年頑張ってもらっている。そういう意味も込めての複数年です」と語った。

これまでの功労に報いる意味もあるが、もちろんそれだけではない。中村は昨季、右手首痛の影響もあって打率.213、9本塁打31打点の大不振に終わり、衰えを指摘する声も挙がった。しかし、今季はチーム断トツの94試合で4番を張るなど、改めて不可欠な存在であることを実証している。ドラフト1位ルーキーの渡部、同6位のブランドンはいずれも即戦力タイプの三塁手だったが、中村を脅かす競争相手にはなれなかった。

球団は昨年オフにも中村と並ぶチーム野手最年長の栗山巧外野手とも3年契約を結んでいる。栗山は当初今季中の達成が微妙と見られていた通算2000安打に、9月4日の楽天戦で到達したばかりか、シーズンを通して活躍し期待に応えた。

自己最高位リーグ7位の打率.284「毎年キャリアハイを狙っている」

若手や外国人選手が複数年契約を結んだ場合は、慢心や安心感から成績が急降下するケースもある。しかし、現役生活の“終着駅”が近づいていることを肌で感じ、1試合1打席に魂を込める中村と栗山に、その心配はないだろう。

渡辺GMは「中村は今年凄く頑張ってくれたが、全盛期に比べれば数字的に落ちる。年齢を重ねて故障も出てきている。そこでクリ(栗山)を含め、複数年を与えられることによって、さらに上を目指してくれたらと思う。福留はいくつだっけ?」と、44歳にして来季現役続行が決まっている中日・福留の名前も挙げて奮起を促した。

中村自身も「毎年毎年、キャリアハイを出したいと思っている」と請け合ったが、直後に「あまり真に受けないでくださいよ」とおどけたところが“おかわり節”だった。

実際のところ、中村の今季打率.284は、自己最高の.286(2019年)に限りなく近く、リーグ7位は自己最高位。自己最多のシーズン48本塁打(2009年と2011年)、124打点(2015年)はさすがにハードルが高いが、一方で今季はここぞの場面で右方向への軽打など、若い頃にはあまり見せなかった技術も披露した。来季、複数年契約の効果が“奇跡のキャリアハイ”を生むかもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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