幽霊のような物質「ダークマター」のマップ アメリカ自然史博物館プラネタリウムで紹介

【▲アメリカ自然史博物館のヘイデンプラネタリウムで紹介された「ダークマター」のマップ(Credit:Tom Abel & Ralf Kaehler (KIPAC, SLAC), AMNH)】

目に見えない幽霊のような物質「ダークマター」(暗黒物質)!

いまやダークマターなしに宇宙を語ることはできなくなっています。例えば、銀河の回転速度や銀河団の高速度移動、重力レンズ現象などはダークマターによる強い重力が主な原因と考えられています。また、宇宙マイクロ波背景放射との関わりも指摘されています。

アメリカ自然史博物館のヘイデンプラネタリウム(Hayden Planetarium)の宇宙ショー「ダークユニバース」で紹介されている画像は、ダークマターがわたしたちの宇宙の至る所に広がっている様子を示しています。

詳細なコンピュータシミュレーションによるこの画像では、黒で示されたダークマターの複雑なフィラメントがクモの巣のように宇宙に散らばっている一方で、比較的まれなバリオン物質(原子からなる通常の物質)の塊がオレンジ色で示されています。これらのシミュレーションは、天文学的な観測結果と統計的によく一致しています。

ダークマターはまだまだ解明すべき未知の存在ですが、もはや宇宙で最も奇妙な重力源ではないと考えられています。この「名誉ある地位」は、現在ではダークエネルギーに引き継がれています。ダークエネルギーは、反発力(斥力)を持つ重力源であり、宇宙全体の膨張を支配しているように思われています。

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ところで、冒頭の画像は2021年10月31日付けのAPOD(Astronomy Picture of the Day)に掲載されました。

10月31日といえばハロウィン。ハロウィンといえば幽霊を連想するので、幽霊のような物質「ダークマター」とかけたのでしょうが、近年10月31日を「ダークマターデイ」(DARK MATTER DAY)として祝い、さまざまなイベントも行われているようです。

日本でも、高エネルギー加速器研究機構では特設サイトを設け、ダークマターの説明とともに、とても可愛い「ダークマター」が動き回っています。

Image Credit: Tom Abel & Ralf Kaehler (KIPAC, SLAC), AMNH
Source: APODDARK MATTER DAY高エネルギー加速器研究機構
文/吉田哲郎

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