香港政府、警察への襲撃を「単独テロ」と断定

現地では襲撃犯であるリョンの死を悼み、事件現場周辺に白い花を供える者も現れた。写真は許可を得て掲載。

2021年7月1日、香港で中国共産党創立100周年と香港返還24周年を記念する式典が開かれたが、警察官襲撃事件とともに劇的に幕を閉じることとなった。犯人は梁健輝(リョン・キンファイ)50歳で、当日の夜10時頃コーズウェイベイ(銅鑼湾)で 警察官の背中を刺した。

負傷した警察官(28)は事件後病院へ運ばれ、手術後、現在の容態は安定している。一方、犯人は事件後、自らの胸を刺し、病院に運ばれたが死亡した。

新任の保安局長クリス・タンは、この事件を「国内テロの単独犯」と断言し、男はヘイトスピーチに影響され過激な行動を起こしたと主張した。今回の一連の警察の動きは、香港市内で抑圧的な政策がますます強まっていく予兆であると危惧する者もいた。博士課程の学生、エドワード・チャンはそのような懸念を最初に表明した中の一人だ。

香港の警察はこの事件を単独テロと断定したけれど、それなら、彼を駆り立てたのは一体誰なのか?それに、NSL(香港国家安全維持法)が香港を今までより安全な場所にしたはずじゃなかったのか?

私の懸念は、1.さらに弾圧が強まること 2.人々が真似をすること

警察当局は、新型コロナウィルスの感染対策として2年連続で7月1日に集会を開くことを禁止した。この集会は、市民が政策に対して抗議の意思を示すためのものであり、1997年から毎年開催されていた。

このような集会を規制することを目的として、香港島周辺の開催が見込まれる エリアに数千の警察官が配備された。コーズウェイベイ(銅鑼湾)はその中でも特に警戒されていた地域の一つであった。

梁は働いており、両親と暮らすごく普通の人物であったと後に香港メディアが明らかにしている。彼が残した遺書には、香港国家安全維持法や2019年施行の逃亡犯条例改正をきっかけとする抗議デモを警察が弾圧する際、数百人に及ぶデモの参加者が負傷したことへの抗議が記されていた。またデモの参加者が、警察を襲撃した罪、デモに参加した罪、デモを扇動した罪、国家転覆罪などのような重罪犯として逮捕、起訴されたことを警察庁の職権乱用によるものだと批判する内容も記されていた。

ソーシャルメディア上では民主化を求めるネット市民が梁のことを、正義を求める人(義士)や自己犠牲のヒーロー(烈士)などと呼び、コーズウェイベイ(銅鑼湾)には彼の死を悼むためたくさんの市民が訪れた。

香港の人々は、梁が胸を刺して自殺した場所に静かに立ち、白い花を供えようとした。しかし警察はこの地域に規制線を張り、ポイ捨てと新型コロナウィルス感染症対策の名目で罰金を科した。そのため、人々は事件現場近くに花を供えた。

警察当局は、梁の死を哀悼することは「テロを支持することに他ならない」との声明を発表し、国家安全警察当局がこの事件についてさらなる調査を行うことを強調した。

John Lee said he has “seen people online inciting support for the murderer who tried to kill a police officer…including by so-called mourning and laying flowers.” Anyone inciting or advocating terrorism may violate the national security law, Lee said.

このような行為は更なる憎悪を生みます。社会は分断され、やがて社会秩序は崩壊し、治安は乱れ、香港の人々を危険にさらしてしまう……国民は真実を見定め、暴力を見過ごしたり美化したりするのはやめて理性的であり続けるべきです。誤った情報が次の世代を迷わせ、最悪の場合テロリストの道へと導いてしまう、そのようなことがあってはなりません。

新任の政務官ジョン・リーは彼のブログの中でも、この事件に哀悼の意を示すことがテロを誘発する、あるいはテロを支持していると解釈される可能性があることを示唆している。フリージャーナリストのアーロン・ニコラスは、リーのこのコメントをツイッター上でこう取り上げた。

ジョン・リーは「警察官を狙った殺人犯のためにオンライン上で支援を訴える人々がいる……彼の死を悼み、花を供えるといったような人も同じことだ」と言っていた。

テロを扇動、擁護する誰もが香港国家安全維持法に違反する可能性がある、と言っているんだ。

しかし、犯罪学の専門家は「単独テロ」というレッテルを貼ることが民主派の香港市民から更なる反感を買い、警察との溝を深めるのではないかと懸念する。テロリズムの専門家ラファエロ・パントゥッチによれば、レッテルを貼る事によって「終わりのない問題を生みだす」危険性があるという。

リッチ・スコットフォードのようなフリージャーナリストの多くは、新疆ウイグル自治区で行われているような弾圧が、香港でも導入されるきっかけになるのではないかと不安視している。

香港警察「お前はテロリスト、そしてお前も、そしてお前も! 我々を支持
しない奴は全員テロリストだ!」

注:これが香港に適用される基本的な新疆ウイグル自治区の政策だ

新疆ウイグル自治区では、2018年から100万人以上のウイグル人が恣意的に再教育施設に収容されたが、中国当局は、これに対して、この政策はテロや過激思想に 対する効果的な措置であると正当化した。

弾圧が強まるだろうという見方に根拠が無いわけではない。7月4日、警察当局は ソーシャルメディア上に、人を焚きつけるようなメッセージを投稿したとして20歳の女と26歳の男を逮捕した。一説によると、この投稿は警察官を殺害し、警察署に火を放つよう扇動するものであったという。警察は何が書かれていたのか詳細を明らかにしていない。


校正: Kazuhiko Hamaguchi, Motoko Saito

原文 Oiwan Lam 翻訳 Mihoko Tsuji · 原文を見る [en]