【社会人野球】選抜V捕手が航空自衛隊で野球を続ける理由 補強選手として掴んだ都市対抗初出場

北海道ガスの補強選手として都市対抗野球に出場した佐藤大貢【写真:中戸川知世】

佐藤大貢捕手は補強で北海道ガスへ加わり、都市対抗初出場

自衛隊が社会人野球チームを持っていることをご存じだろうか。特に北海道の航空自衛隊千歳基地にあるチームはクラブではなく「企業チーム」として登録されており、2012年には日本選手権本戦に出場した実績もある。開催中の第92回都市対抗野球では、佐藤大貢捕手が北海道ガスに補強され、初めて東京ドームのグラウンドに立った。佐藤は2011年の選抜甲子園で優勝した東海大相模の主将。意外なところで、今も野球を続ける理由とは。

11月30日に行われたセガサミーとの1回戦で、佐藤は念願の都市対抗本戦出場を果たした。1点を追う5回、1死三塁のピンチ、投手が左腕・夏井康吉(JR北海道クラブから補強)に交代するタイミングで、一緒に試合に入った。流れを変えることを期待されての起用だ。

ただ砂川哲平内野手に三塁手の後ろへ落ちる適時打を許し、7回には決定的な5点を失った。普段は敵として対戦する4投手を相手に苦心のリード。「もっと僕が投手に寄ってあげられれば良かったんですが、いっぱいいっぱいでした……」とほろ苦いデビューとなった。

佐藤のここまでの実績は輝かしい。2011年の選抜甲子園で「4番・捕手」さらに主将という重責を担い、東海大相模を優勝に導いた。進んだ東海大では出場機会に恵まれず、航空自衛隊でプレーするようになって6年目。自チームは予選の壁に跳ね返されることが続いている。「北海道でなかなか自分のチームが勝ちあがれない中、ここに立たせていただいたことに感謝しています。基地の皆さんも背中を押してくれたので」。普段の活動はもちろん任務が最優先。佐藤も航空機支援機材の整備という職に就く。

2011年、東海大相模の主将として選抜甲子園で優勝【写真:中戸川知世】

今なお熱い“相模魂”「負けていられないという気持ちで」

東日本大震災直後に行われた選抜での優勝は忘れられない思い出だ。チームの中核を担っての快進撃、さらに俳優・柳葉敏郎の甥であることも話題になった。チームメートには田中俊太(DeNA)や菅野剛士(ロッテ)など、後にプロ野球へ進んだ仲間もいる。佐藤が決してプレー環境に恵まれているとは言えない今も野球を続ける原動力は何なのだろうか。

「自分の代には現役で活躍している選手も多いですし、個人的には続ける励みにしています。そして何より、東海大相模高校が選抜などでいい結果を出している。負けていられないという気持ちでやらせていただいています」

北海道ガスは創部4年目の若いチーム。今回は補強で加わった佐藤と夏井が最年長だった。初の全国出場を叶えた年下のチームメートからは「1人1人考えて野球をやっていますし、その上での言い合いが凄い」と大きな“教え”を受けた。長い冬が待つ北海道で、自分のチームにも伝えていくつもりでいる。

航空自衛隊千歳は、新興の北海道ガスと伝統あるJR北海道クラブ、室蘭シャークスを倒さなければ全国大会への出場を果たせない。佐藤はその先にある世界に触れ、強烈な印象を受けた。「北海道で1位を取っても、関東のチームとやるとこういう大差負けになってしまう。もっともっと上を目指してやらないと」と向上心を忘れない。今も熱く燃え盛る“相模魂”で次に目指すのは、もちろん自チームの青いユニホームでドームへ戻ってくることだ。(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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