航空券3往復とホテル3泊で36,000円 HafH×JALの航空サブスクを使い倒した【レポート】

日本航空(JAL)とジャルパック、KabuK Styleが提携し、航空券とホテルがセットとなったサブスクの実証実験が実施された。KabuK Styleが運営する宿泊サブスクサービス「HafH(ハフ)」のスタンダード会員以上を対象に、8月に300名限定で販売された。その後、追加販売がされたものの、すぐに上限に達した人気のサービスだ。

筆者は、実際に航空券3往復とホテル3泊で36,000円の、いわゆる「航空サブスク」に登録し、使い倒してみた。

「航空サブスク」の使い方

対象路線は、東京/羽田発着札幌/千歳・釧路・山形・小松・南紀白浜・高知・長崎・宮崎・沖縄/那覇・宮古の10路線。単純往復が基本であるものの、南紀白浜を利用の場合のみ、復路は大阪/伊丹・大阪/関西とすることもできる。各路線の直行便1往復と指定ホテル1泊をセットとして、利用者本人が3セット利用することが出来る。

「航空サブスク」を実際に利用するためには、3回の各旅行申込時と、実際に旅行をする際に、月額9,800円の「HafH」のスタンダード会員以上であることが必要であった。このため、少なくとも2か月間スタンダード会員以上であることが必要であり、実際にかかるコストは36,000円に加えて、19,600円以上の月会費支払いが必要ということになる(実際は8月からサービス終了の11月までスタンダード会員以上を維持した利用者が多いのではと推察する)。

スタンダード会員になると、月3泊の利用が可能。宿泊に必要な「コイン」が200コインも付与され、所持する「コイン」の範囲内で好きな宿に宿泊することができる。「航空サブスク」の利用には100コインが必要なので、月会費と「航空サブスク」の料金を切り離せるわけでもない。

…といった塩梅で、実際にサービスを利用していない人に理解してもらうにはいささか複雑な設計となっているのがこの「航空サブスク」であるが、ここから先は、話をなるべくわかりやすくするために、36,000円で航空券3往復・ホテル3泊の「航空サブスク」を使い倒した体験談として話を進めていこう。

「サブスク」なので土日も3連休も、人気の便も定額

この「航空サブスク」での魅力の1つは、空席・空室がある限り、追加料金なく利用できる点であると考える。例えば、土日の1泊2日で旅行すると、通常のツアーでは平日に比べて料金が高く設定される。土曜日の午前中に出発して、日曜日の夜に帰ってくるような便を設定すると、さらに追加料金が設定されるのがツアー"あるある"だ。

しかし、この「航空サブスク」では、追加料金はない。どの時間帯の便を選んでも、土日や連休のホテルをチョイスしても、その料金はすべて定額のサービスのうちに含まれるという太っ腹なサービスだ。

通常のツアーと同様にマイルがたまる

ジャルパックなどのツアー商品と同様、積算率50%でマイルがたまり、上級会員の判定に用いられるFLY ONプログラムのFLY ONポイントも積算される。

最長距離となる東京/羽田〜宮古線を利用した場合、片道あたり579マイル貯まる。JALカード会員を対象とした「JALカード ツアープレミアム」の登録者は積算率が100%となることから、片道1,158マイル、3往復で6,948マイルが獲得できる計算となる。上級会員は最大130%(JMBダイヤモンド)のボーナスマイルも付くことから、片道1,911マイルを獲得できる。

また、上級会員資格の獲得に必要なFLY ONポイントも獲得できる。東京/羽田〜宮古線の場合には片道あたり1,158FLY ONポイントが獲得できることから、3往復で6,948FLY ONポイントとなる。サブスクサービスの料金のみを考慮した場合、1ポイントあたりの単価は5.18円とかなり割安になる。この代金に宿泊料金が含まれているので、実質的な単価は更に下がる。

上級会員資格獲得のために搭乗する、いわゆる"修行"は、効率も重視されるので、どの行程が最適なのかの答えはない。ただ、ホテルに泊まってのんびり旅をするスケジュールの余裕(と羽田発着で旅行ができること)が条件になるが、じつは"修行僧"の選択肢に充分に入るサービスだったのだ(宮古行きは運賃が高く一般的に"修行"ルートではないため、"修行僧"も少なく、新鮮な"修行"になったのではないか)。

相場と比べて非常に安価

この「航空サブスク」、1回の旅行のコストは12,000円。最長距離となる東京/羽田〜宮古線でみると、ツアー商品では直行便よりも安価となる経由便を利用することが多い。JALダイナミックパッケージで同じ条件で比較すると、12月11日〜12日を旅行日程とすると、1人83,800円と表示された(11月27日照会)。先の日程で比較しても、人気の高い宮古に、1日1往復しかない直行便を利用するとなると、1泊2日で1人5万円程度の日程が多い。

航空券単体でも直行便の場合2万円以上することが多く、この航空券+ホテル1回あたり12,000円の「航空サブスク」がいかにお得か、おわかりいただけるだろう。

筆者は、宮古へ2回、沖縄/那覇へ1回利用したが、36,000円分以上使い倒した自信がある。また、筆者の場合、3回の旅行でJALマイルが約10,000マイル付与されたため、実質的な旅行費用はさらに下がった。1マイル1.5円程度で換算すれば、3回の航空券+ホテルの利用が20,000円程度で済んだ計算になる、つまり1回の旅行が6,000円強ということだ…

ここまで、この「航空サブスク」について、(マイラー視点の)メリットを中心にまとめてきた。一方で、実証実験ならではの、疑問に感じた点もまとめていく。

観光向き? ワーケーション向き? 見えぬコンセプト

サービス紹介では「いつもの旅とは違う“新たな旅のスタイル”をHafHとJALが応援します。どう使うかは、あなた次第。多様な“移動”のあり方を、ぜひ私たちに教えてください。」とあるが、サービス開始時の8月は減便ばかりで自由に便を選ぶことが難しかった。1日1〜3便程度に便数が絞られているため、「あなた次第」ではなく「JALがどれだけ運航してくれるか次第」だったのが率直なところだ。

筆者は当初ワーケーションを目的に、宿のチェックインに合わせた航空便を予約したいと思ったが、例えば宮古を目的地とした場合、往復の利用便は、往路は宮古に午前10時ごろに到着する便、復路が午後7時過ぎに出発する便に限定される。

宮古島内の移動は路線バスが便数が少なく、観光客向けではなく不便なので、レンタカーの移動にほぼ限定される。レンタカーを利用すると運転して島内を回りたくなってしまうので、ワーケーションをする時間は、宿に滞在している間のみとなってしまった。

ホテルもアーリーチェックインなどのオプションが用意されていないため、宮古空港では長時間の時間つぶしが困難で、必然的に移動を強いられる。着いてそうそう、ワーケーションはあきらめて観光にシフトせざるを得ない。行程の自由度が制限されてしまっている中で「移動のあり方を教えてほしい」と言われても、無理があるのではないか。

次の問題としては、1人利用を前提とした「航空サブスク」では、観光もしづらいという点だ。

1人旅には慣れている筆者だが、割り勘出来ないゆえに、レンタカーを利用すると予想以上に現地での滞在費、ガソリン代などがかさむ。せっかく現地までお得に行けたのに、ガソリン高騰なども重なって、現地で予想以上に滞在費がかさむのは辛い。1人旅であれば鉄道や乗り合いバスなどで観光しやすくする仕組みも欲しかったというのが、(贅沢かもしれないが)率直なところだ(宮古島の観光の場合、個人的にはレンタルバイクがおすすめだが、天候が良いときに限る)。

そうでなくても、青春18きっぷのように、1人で3回旅行に行く権利に限らず、3人で1回旅行に行くこともできるような、3回(人)分の権利を提供するサービスでも良かったのではないかと感じる。1回は1人で利用して、残った2回分は2人で旅行…とできれば、旅行の可能性は大きく広がったのではないか。

あくまで実証実験として、一定の制約を設けた旅行プランを提供し、現地での過ごし方を利用者に委ねるというのは悪くない。今後のサービス展開に期待したい。

案内不足が露呈する場面も…

サービスを利用していると案内が不十分だと感じることもあった。

今回のサービス提供では、利用者は「HafH」が設けたサブスクの事務局を通して、ジャルパックに対してツアー(航空券+ホテル)の予約を行う。この予約の際、汎用フォームを埋める形で予約をすることになり、空席・空室状況は事前に確認できない。新型コロナウイルスの感染状況によって減便・運休・時間変更が行われているが、これらの状況も反映されていない。さらには、比較的利用しやすい臨時便は選択することができない。

利用時に事務局に問い合わせたところ、事前に臨時便のリクエストをメールで連絡すれば対応するとのことだったが、もう少し案内があってよいのではないかと思わずにいられなかった。

そして、もう1つ案内に不十分な点があったのは、「空席・空室があれば予約できる」わけではないという点だ。あくまでジャルパックが予約を行うため、希望する航空便の空席があり、希望日程でホテルに空席があっても、ジャルパックが確保している座席・客室に在庫がない場合は、予約することができないこともわかった。この点も利用者に対して周知することなくサービスを提供しており、正確な情報を利用者に伝えるべきだっただろう。

第2弾はあるのか…?今後のサービスに期待

後半は少々辛口のコメントが続いたものの、今回の「航空サブスク」サービス自体には、主に価格や独自性を良く評価出来るサービスであり、問題点は改善を期待したい。

「HafH」運営のKabuK Styleとピーチ・アビエーションが提携し、ピーチが販売する1か月乗り放題チケット「Peachホーダイパス」をHafH会員向けにも販売するなど、様々な動きを見せている。彗星のごとく現れたサービス「HafH」の今後の展開からは目が離せなさそうだ。

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