居酒屋の倒産 年間では過去2番目に達する見込み(2021年1-11月飲食業倒産動向)

 2021年1-11月の「飲食業」倒産(負債1,000万円以上)は、累計596件(前年同期比24.7%減)となった。コロナ関連倒産は275件と約半数(構成比46.1%)を占め、コロナ禍の影響が長引いている。
 10月以降、新規感染者が激減し、営業制限の解除が進んだ。11月の飲食業倒産は39件(前年同月比37.0%減)と、今年に入り2月(37件)に次ぐ、2番目の少なさとなった。ただ、消費者の生活様式はコロナ禍で大きく変化し、コロナ前に戻ることは難しい。飲食店は感染対策だけでなく、価格、商品構成を含む事業再構築への対応を迫られている。
 業種別は、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」が137件(前年同期比15.4%減)に達し、通年(1-12月)では2012年(141件)を超えることは確実となった。このペースで推移すると2020年の174件に次ぎ、過去30年間で2番目を記録する可能性が高い。また、コロナ関連倒産は80件で、居酒屋倒産の約6割(構成比58.3%)を占めた。
 9月末で緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が全面解除された。だが、新たに変異株「オミクロン」の感染拡大が懸念され、不安材料を抱えながら飲食業は年末年始の書き入れ時を迎えた。
 東京商工リサーチが10月に実施したアンケート調査では、企業の7割が「忘新年会を開催しない」と回答している。居酒屋をはじめ飲食業界は、まだ厳しい状況が続きそうだ。

  • ※本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2021年(1-11月)の倒産を集計、分析した。

飲食業の倒産は約半数がコロナ関連

 2021年1-11月の「飲食業」倒産は累計596件(前年同期比24.7%減)で、11カ月累計では3年ぶりに前年同期を下回った。11カ月累計で500件台は、2016年同期(586件)以来、5年ぶり。通年でも2016年(639件)以来の600件台にとどまる見通しとなった。
 飲食業は2019年9月以降、消費増税や人手不足による人件費上昇が負担となって倒産が急増していた。さらに、2020年以降は新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が相次いで発令され、休業や時短営業などの要請で2020年の倒産は過去最多の842件に達した。
 2021年はコロナ関連支援策の効果で、倒産は抑制されている。ただ、コロナ関連倒産は11カ月累計275件に達し、約半数(構成比46.1%)がコロナ禍の影響を受けている。
 コロナ関連倒産の月別構成比は、1月43.3%、2月35.1%、3月43.6%、4月53.7%、5月49.0%、6月38.3%、7月52.5%、8月48.2%、9月55.7%、10月44.8%、11月38.4%だった。

飲食業

【業種別】居酒屋は30年間で2番目の多さ、持ち帰り飲食サービス業は低水準

 業種別は、最多が日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店などの「専門料理店」の159件(前年同期比17.1%減)。次いで、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」137件(同15.4%減)、「食堂,レストラン」111件(同39.6%減)の順。
 居酒屋は、過去30年間では2020年同期(162件)に次ぐ2番目の多さだった。通年でも、2012年(141件)を超え、過去2番目となることがほぼ確実となった。
 また、倒産に占めるコロナ関連倒産の構成比は、居酒屋は58.3%(コロナ関連倒産80件)と約6割を占め、業種別では最高だった。
 一方、コロナ禍で浸透した「持ち帰り飲食サービス業」は15件(前年同期比40.0%減)にとどまり、通年では2016年(18件)以来、5年ぶりに10件台の可能性が出てきた。

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【原因別】『不況型』倒産が9割

 原因別の最多は、「販売不振」の509件(前年同期比24.4%減)。以下、「既往のシワ寄せ」が31件(同8.8%減)、「事業上の失敗」が22件(同26.6%減)の順。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は540件(同23.7%減)で、飲食業倒産に占める構成比は90.6%(前年同期89.3%)と、前年同期より1.3ポイント上昇。もともと業績低迷が続いていたところに、コロナ禍での売上不振が事業継続を断念するきっかけとなったケースもある。

【負債額別】唯一、「5億円以上10億円未満」が増加

 負債額別では、「5億円以上10億円未満」が11件(前年同期比22.2%増、前年同期9件)で、唯一、前年同期を上回った。コロナ関連支援策が全体の倒産件数を抑制した一方で、中堅規模の飲食業には支援効果が浸透せず、倒産件数を押し上げた可能性がある。
 ただ、「1千万円以上5千万円未満」は446件(前年同期比28.0%減、構成比74.8%)と、小規模倒産を中心とした推移に変化はない。
 一方、「10億円以上」は4件(前年同期比33.3%減、前年同期6件)発生した。

【都道府県別】 増加13、減少28、同数6

 都道府県別では、増加が13県、減少が28都道府県、同数が6県だった。
 増加は、青森(3→5件)、岩手(1→3件)、山形(1→3件)、茨城(6→15件)、栃木(9→14件)、長野(4→7件)、石川(8→9件)、兵庫(44→49件)、鳥取(1→2件)、島根(2→4件)、山口(10→15件)、香川(1→2件)、長崎(2→4件)。
 一方、東京(129→74件)、愛知(76→36件)、大阪(146→94件)の東名阪ほか、北海道(18→16件)、広島(20→15件)、福岡(39→26件)など都心部は、軒並み減少した。
 地区別では、全地区で前年同期を下回った。ただ、東北(前年同期比6.2%減)と中国(同4.7%減)は、減少率が1ケタにとどまっており、地域によって格差が生じている。

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