大潟区の「大潟の子どもを育てる会」(井部孝一会長)は、同区の子ども向け郷土食資料集『大潟の食と郷土料理』を完成させ、授業で活用されている。現在は第2弾として、第1弾の食材と結び付けたレシピ集出版に向けて準備を進めている。地域で古くから親しまれてきた食文化を冊子にして残し、現在の子どもたちや親世代に継承しようとしている。(報道部・山賀康平記者)
大潟区の良さ食通し知って
同会は子ども体験事業などを行う「地域の絆部会」、登下校見守りなどを行う「安全安心対策部会」、あいさつ運動などを行う「生活習慣改善部会」の3部会で構成されている。今回の冊子は生活習慣改善部会副部会長の高橋道代さん(49)=同区土底浜=が製作の中心となった。
高橋さんは同区の食生活改善推進員の代表を務め、区内の学校へ出向いての食育授業なども行っている。これまで同部会は食をテーマとした活動をあまり行っておらず、新たな取り組みとして「食を通じて大潟の良さを知ってもらいたい」(高橋さん)と企画した。
資料集活用し小中校で活動
第1弾は主に小学生の視点に立ち、食材や料理の写真を大きく掲載。気になったことを自発的に調べてもらえるよう、文章は少なめにした。高橋さんが大潟漁港や畑へ出向き、取材をし、自ら料理を作った。
この冊子を活用した郷土食作りは、すでに小中学校で行われていて、高橋さん指導の下、11月には大潟町小の児童が自ら育てたサツマイモを使い、サツマイモご飯とつるきんぴらを作った。つるまで食べたことのある児童は少なく、食べ物を無駄にしない昔の生活に触れたようだ。
冊子は各校の他、希望する地域住民にも配布された。その中で、郷土料理の作り方を詳しく記したレシピ集の要望が、住民や保護者、教員らから多数寄せられ、現在、出版に向けて準備が進められている。
10月には食生活改善推進員7人が集まり、レシピ集に掲載する料理を作った。知識が豊富な推進員でも知らない食材や、手間のかかる料理があり、高橋さんは「ちまきの巻き方など、知りたかったことを質問できた」と、貴重な経験になったという。
大人が対象の教室開きたい
内容は第1弾に続き、子どもが見ても興味を引くような内容にし、家庭で調理の中心となる大人に向けたものになる。調理工程を写真と文章で説明し、調理のポイントを押さえる。来年3月ごろに完成し、第1弾と同様、希望者に配布される予定。
高橋さんは今回の2冊の役割を「消えかけていた食文化を書いて残したこと」と捉え、「古くからの作り方をそのままやる必要はなく、レシピを基に各家庭で今風にアレンジしてほしい。それが家庭の味、郷土の味になっていく」と話す。
冊子完成後は子どもたちに向けた調理実習だけでなく、大人向けの料理教室も開きたいという。また、同区を出て関東近郊に住む出身者にも送り、「古里の味を懐かしんでもらいたい」と願っている。