脳脊髄液減少症 病気と症状に理解を 外傷性と突発性と 確実な診断法乏しく

 脳や脊髄、それらを包む膜の間(脳脊髄液腔)を満たしている液体(脳脊髄液)が、何らかの原因で漏れ出す「脳脊髄液減少症」という病気がある。頭痛や首の痛み、めまいなどを引き起こす。交通事故やスポーツによる接触・衝突といった外傷性のものと、原因不明の突発性があるとされている。発症プロセスや原因には不明な点が多く、確実な診断方法は乏しい。脳脊髄液減少症の治療を続けている上越地域の患者は「多くの人にこの病気と症状を知ってもらいたい」と話す。

交通事故後に発症 上越在住50代女性

 上越地域在住の50代女性は、10年ほど前に交通事故に遭い、その後、脳脊髄液減少症と診断された。頸椎や腰椎の痛みが現在まで継続している。ひどい頭痛に悩まされ、1日中横になっていないとならない日もある。「朝起きてから夜眠るまで、ずっと(頭が)痛い日もある」

 脳脊髄液減少症の診断を受けたのは事故の翌年。症状について相談を受けた友人が指摘し、同年から静岡県(現在は神奈川県)の病院を3、4カ月に1度受診するようになった。

 女性が最もつらかったと振り返るのは、地元の病院では正確な診断がされなかったことと、病気に対する理解が家族からも得られなかったこと。「(脳脊髄液減少症と)まったく異なる診断をされたことがある。症状を説明しても、医師に理解してもらえなかった。家族からも、起きていられないから横になっているのに『なまけている』と叱られることもあった。仕事にも就いたことがあるが、いすに座って毎日仕事することができず、結局長く続けられなかった」

 治療としては、安静にして水分を補給し、経過観察をする方法、硬膜の外に患者本人の血液を注入して固まらせ、硬膜からの髄液漏れを防ぐ方法(ブラッドパッチ)などがある。しかし、いずれも完治には至らず、根本的な治療方法はないのが現状だ。女性もかかりつけの病院でブラッドパッチなどの治療を行っているが、完治には至っていない。

 脳脊髄液減少症で出現する症状のほとんどは客観的に評価できず、詐病と診断され放置されるケースも珍しくない(国弘幸伸・相馬啓子、シンポジウム『めまいの新しい疾患概念』2011)。女性は「医師からは、うまく付き合っていくしかない、と言われている気がする。できれば治って社会に復帰したいと思うし、治ると思っている。症状はつらいが、前向きに生きていきたい」と話す。

診療実施、可能県内12病院 県が公表

 県のまとめによると、現在、脳脊髄液減少症の診療を行っている病院で、県が公表しているのは新潟市民病院(新潟市中央区)をはじめ9病院。希望者がいれば対応が可能としているのは県立十日町病院(十日町市)をはじめ3病院。上越地域には公表されている病院はない。

 女性は「脳脊髄液減少症は交通事故やスポーツでの激しい接触でも起き得る。何らかの症状があっても、脳脊髄液減少症という病名までたどり着けず、つらい思いをしている人もいる。この病気について、一人でも多くの人に知ってほしい」と話している。

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