16歳差のDINKs夫婦はいくらあれば同時リタイアして地方移住の夢を叶えられる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、妻37歳、夫53歳のDINKs夫婦。夫が60歳で定年退職するタイミングで、地方に移住したいと考えている相談者。移住先では夫婦ともに働かずに暮らすことを希望していますが、夫婦揃ってリタイアすることは経済的に可能でしょうか? FPの飯田道子氏がお答えします。


私37歳、夫53歳の歳の差があるDINKs夫婦です。夫の定年退職のタイミングで、地方に移住したいと考えています。移住先では働かないことを前提に、数年前から本格的に貯蓄に取り組んでいます。

ただ、夫の定年退職時点で自分(妻)はまだ40代なので、老後資金の観点から、夫婦揃ってリタイアすることに経済的な不安があります。同時リタイアをしても老後の生活は賄えるのか、それとも、自分は働き続けてもっと貯蓄を増やしてから移住に踏み切るべきか、それとも、同時リタイアで移住し、移住先でパートなどをしながら暮らすのが良いのか、アドバイス頂ければ幸いです。

子どもを持つ予定は今後もありません。夫の定年退職は7年後(60歳)、移住先で住宅(3,000〜4,000万円程度)を一括購入、リタイア後の生活費は年間400万円程度を想定しています。

【相談者プロフィール】

・女性、37歳、会社員、月収手取り40万円

・夫、53歳、会社員、月収手取り60万円

・住居の形態:賃貸(神奈川県)

・毎月の世帯の手取り金額:100万円(給与以外の収入はなし)

・年間の世帯の手取りボーナス額:300万円(夫180万円、妻120万円)

・毎月の世帯の支出の目安:70万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:20万円

・食費:12万円(外食含む)

・水道光熱費:2万円

・保険料:1万円

・通信費:3万円(携帯料金×2、ネット、新聞、NHKなど)

・お小遣い:20万円(各10万円ずつ、平日ランチ代や交際費、服飾費など)

・その他:日用品1万円、交通費1万円、娯楽費(主に旅行・帰省の月割分)10万円

・毎月の貯蓄額:30万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:250万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):2,000万円(銀行普通預金)

・現在の投資総額:3,000万円(投資信託)

・現在の負債総額:住宅ローン、奨学金なし

・老後資金:

年金/夫月20万円、妻月10万円

退職金/2人で2,000万円(同時リタイアの場合)と仮定

飯田:今回は、歳の差DINKs夫婦の妻からの相談です。夫の定年退職を機に、地方に移住を考えているようですが、夫婦揃ってリタイアすることに経済的な不安があるとのこと。現在のお悩みとしては、同時にリタイアをしても、老後の生活は賄えるのか、それとも、ご本人である妻は働き続けてから移住するべきか。その他、移住先で働いた方が良いのか知りたいとのことです。今回の歳の差DINKs夫婦の場合、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。また、地方に移住するとき、気を付けておくべき点についてもお話しします。

夫が定年退職するまでにいくら貯められる?

まず、押さえておくべきことは、夫が定年退職するまでの残り7年間でいくら貯められるのか? ということです。

現在の貯蓄額は、普通預金2,000万円、投資信託3,000万円です。また、7年後に同時リタイアした場合の退職金は2人分合わせて2,000万円ですので、手持ち資金は仮定として、7,000万円とします。

現状のまま貯蓄をした場合、毎月の貯蓄額は30万円ですので、7年間で2,520万円。ボーナスは年間250万円貯蓄しているとのことですので、7年間で1,750万円です。

これらを合計すると、退職金を含めて7,000万円+2,520万円+1,750万円となりますので、同時リタイアする際には、1億1,270万円が手元にある計算になります。

リタイア後の支出を考えてみましょう

リタイア後の支出は年間400万円。その他、移住先での物件購入費として4,000万円とした場合は、年金を考慮しない場合、30年間の生活費のみで1億2,000万円となり、1億6,000万円の支出が見込まれます。

年金を考量した場合、それぞれが65歳から受給した場合は、夫の年金額は20万円のため、25年間で6,000万円。妻の年金は、16年遅れて10万円受給するため、9年間で1,080万円ですので、リタイア後の世帯収入は7,080万円です(年金のみの場合)。

単純計算で1億1,270万円+7,080万円-1億6,000万円=2,350万円となるため、同時リタイアをして住まいを一括購入しても、生活に困ることはなさそうです。ただし、同時リタイア後30年間の金額ですので、途中で一度、見直しも必要でしょう。

お金以外で、地方移住する前に見極めるポイント

経済的な点のみなら、移住先でマイホームを購入しても問題ありません。ただ、必ずしもその場所になじめるとも限りませんし、交通の便によっては、新たな住み替えが必要になることも考えられます。移住をする場合には、「おためし移住」をし、リタイア前にある程度まとまった日数を滞在し、その場所での暮らしを体験することが必要です。

移住する場合は、「行きやすく、帰りやすい」状況をつくることも必要です。いきなり物件を購入するのではなく、本当にそこで暮らしていけるのかを見極めてから、購入すると良いでしょう。

【移住する前に見極めるべきポイント】
・交通の便はどうか?(マイカーを持たなくても生活できるか)
・近隣に医療施設は整っているか?
・周辺住民との交流の有無はどうなっているのか?
・地域の特性になじめるか?
・物価は高いのか?安いのか?
・自分たちが思い描く目標が達成できそうか?
・その他

妻のリタイアのタイミングは柔軟に

現状の支出の内訳に保険に関する支出がありませんでした。未加入であれば、医療保険にのみ加入しておくと安心ですね。

また、現在、世帯年収が高いため、毎月の支出も多くなり気味です。リタイア後を想定し、お小遣いや食費を少しずつ減らして、来るべき生活に慣れる準備をすることが必要です。

相談者様である妻のリタイアのタイミングですが、どのようにしたいのか、ご本人の気持が一番大切です。夫と一緒にリタイアしても良いですし、働きたいと思えば、移住するタイミングを先送りして働き続けても良いでしょう。

経済的な面では問題はないのですが、相談者様は7年後でも44歳とまだ若く、働き盛りの年齢です。今の会社でそのまま働き続けても良いですし、移住先で働いても良いでしょう。

社会と関わり続けることは、生活を豊かなものにします。夫婦の暮らし、自分の生きがいを総合的に考えて、ライフプランを選択してください。素晴らしいセカンドライフになると良いですね。陰ながら応援しています。

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