花の82年組 伊藤かずえ、大映ドラマの女王はアイドル歌手でもあった!  12月7日は伊藤かずえの誕生日

花の82年組のひとり、伊藤かずえ

伊藤かずえといえば、80年代に次々と出演した大映ドラマをはじめ、時代劇や特撮もの、2時間ドラマのサスペンスものなど、現在に至るまでバリバリの女優さんのイメージ。実際にそうなのだが、バラエティ番組でお茶目な面を発揮したり、最近では30年乗り続けているという愛車シーマがレストア作業に入った話題や、メルカリにハンドメイド作品を出品するなど、親しみやすい人柄を感じさせてくれる、タレントとしての顔もお馴染みではないだろうか。

かといって、ご本人にどれだけの愛着があるかどうかは判らないけれど、アイドル歌手時代を無視するわけにはいかない。事実、筆者が初めて伊藤かずえの存在を知ったのは、1982年4月に出された歌手デビュー曲「哀愁プロフィール」のシングル盤を手にした時だった。そう、彼女も数々の人気アイドルが輩出された “花の82年組” のひとりだったのだ。

ただし、実はそれ以前にも “神奈かずえ” 名義で1978年に出されたプレデビュー盤「ひとりぽっちの村祭り」が存在する。美空ひばりや水前寺清子に曲を提供していた大作曲家、米山正夫の作品であった。などと書くと、伊藤のキャリアがいかに長きにわたるかが強調されるが、その時まだ彼女はまだ11歳。アイドルデビュー時も15歳ながら、ジャケット写真の表情はかなり大人っぽい。

歌手デビュー曲「哀愁プロフィール」は、荒木とよひさ×三木たかし

札幌生まれ、横浜育ちの伊藤は子供時代とても内気な性格だったそうで、それを変えるために母親の勧めで東映児童演劇研修所に入ったという。初の大役となったのが1979年に東宝系で公開された映画『花街の母』だった。金田たつえのヒット曲を受けての歌謡映画で、その時は本名の伊藤和枝名義。そしてその2年後の1981年、『江戸を斬るⅣ』で本格的なドラマ出演を果たし、さらに東映映画『燃える勇者』のオーディションに合格して真田広之と共にダブル主演を務める。約2万人もの応募者の中から選ばれたシンデレラガールであった。そこから改めての歌手デビューという流れになったのである。

デビュー曲「哀愁プロフィール」は、荒木とよひさ×三木たかしコンビによる、歌謡曲テイストのメランコリックな作品。それに対してB面の「ガラスのテンダリー」は林哲司の作曲・編曲による、ポップな楽曲で、当時はA面とB面でずいぶんイメージが違うなと思わされた。ジャケット写真はセーラー服姿である。それより5ヶ月前にやはり女優先行で歌手デビューして「セーラー服と機関銃」をヒットさせた薬師丸ひろ子の影響が少なからずあったに違いない。

その薬師丸が主演した映画のテレビドラマ版『ねらわれた学園』が同年10月から始まり、主演の原田知世と共に注目を集めることとなる。伊藤の役は主人公のライバルとなるエスパーで、終始クールな表情の演技で美少女ぶりを発揮していた。それから7年後、映画『彼女が水着にきがえたら』で、すっかり大人になった二人が共演するのを観て、実に感慨深い想いにとらわれたのだった。

大映ドラマへの怒涛の出演、並行して続けられた歌手活動

1983年の『高校聖夫婦』を皮切りに、いよいよ大映ドラマへの怒涛の出演が始まる。殊に、1984年の『不良少女とよばれて』で演じたツッパリ少女の役が話題になった。翌年の『ポニーテールはふり向かない』では、遂に初主演を果たす。

並行して続けられた歌手活動で印象深いのが、岡田冨美子×芹澤廣明による1984年のシングル「ヨコハマ LONELY CAT」。ドラマ同様に大人の顔を見せ始めた作品で、久保田早紀(現・久米小百合)作曲によるB面曲「別れの場面」も映画の1シーンが切り取られた様な佳曲である。

次作となった1985年の「17歳のテロル」も、少女と大人の間で揺れ動く葛藤が歌で表現されており、女優らしさを感じさせる曲だった。売野雅勇×後藤次利の作。他にも上田知華や加藤和彦らによるいろんなタイプの曲を歌い、1986年秋にはそれまでのコロムビアからフォーライフへ移籍する。KAZUE ITOH名義で出された「星屑のイノセンス」はその後時代を席巻する小室哲哉の作曲で、さらなる展開も期待されたが、結果的にそれが現状でのラストシングルとなり、女優活動に専念することとなった。

つまり平成以降は新曲をリリースしていないわけで、ちょっともったいない気もする。ベテランとなった今、大人の女性しか歌えないような作品を聴かせて欲しいと思ってしまう。まもなく歌手デビュー40周年を迎えることだし、ここでまた原田知世と、今度は歌でのコラボが実現したら面白いのだけれども。

カタリベ: 鈴木啓之

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