対馬に漂着する「海洋ごみ」調査船ロボ開発 長崎大・山本副学長ら

海洋ごみの調査船ロボットを開発した山本副学長=対馬市美津島町久須保

 対馬の沿岸や海底に大量に漂着している海洋ごみの観測調査の効率化を図ろうと、長崎大の山本郁夫副学長(ロボット工学)ら研究グループは、衛星利用測位システム(GPS)を活用して自立航行できる調査船ロボットを開発した。来年秋ごろから、希望する行政や環境団体などに貸し出し、活用してもらうことを目指している。
 対馬沿岸は季節風や海流の影響でポリタンクなど大量の海洋ごみが漂着している。市によると、その量は年間約2万~3万立方メートル。観光業や生態系、漁業への悪影響が懸念されている。
 山本副学長によると、海洋ごみの観測調査はこれまで目視などで実施されてきたが、道路のない海岸や潮流が速く危険な海域は調査が困難だった。
 調査船ロボットは、長さ1.4メートル、幅1.1メートルで重さは30キロ。バッテリーで約4時間稼働し、最速で時速10キロ程度で航行する。調査範囲を指定するとGPSを駆使して自立航行し、1キロの範囲で遠隔操作もできる。
 調査船には360度回転する水上カメラに加え、海中カメラを備えた小型ロボットを搭載。遠隔操作で船から分離して海中を自由に動く。撮影した画像と映像は即時に地上へ送られる。
 画像や映像を基に海洋ごみの量や分布を把握し、データ化して海底、沿岸部の3Dマップを作製。潮流シミュレーションと組み合わせると、ごみがどこに流れていくかを推測できる。魚類の成育確認などにも応用できるという。
 山本副学長ら研究グループは11月28日、同市中部の美津島町久須保の潮流が速い海域で調査船ロボットを試験し、小型ロボットが稼働可能なことを確認した。
 今後、調査船ロボットの技術を生かし、海洋ごみを無人で回収できるロボットの開発を目指す。山本副学長は「海中の“見える化”を進め、環境問題の解決にロボットを役立てたい。対馬以外でもニーズはあるのではないか」と話した。


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