JR東北本線の豊原駅で18年にわたって電車通学する児童に付き添っている那須町交通指導員の磯由起子(いそゆきこ)さん(62)が、JR東日本大宮支社から「社長感謝状」を贈呈された。子育てや酪農の仕事の傍ら、地域の子どもたちを優しく見守ってきた磯さんは「小さいことでも続けてきてよかった」と感激している。
「おはようございます」。3日朝、一列に並んで歩いてきた黒田原小の児童が駅に到着し元気にあいさつした。「宿題やった?」「忘れ物ない?」。磯さんは一人一人に声を掛け、人数を確認。ホームに到着した電車に子どもたちを乗せ、手を振って見送った。
町から交通指導員を委嘱されたのは2003年12月。80代だった前任者の引退に際し、知り合いだった職員から「次にやってくれないか」と頼まれたのがきっかけだった。
当時高校3年、同1年、中学3年だった息子と娘の弁当作りに加え、酪農の仕事も忙しかっただけに迷いはあったが、子どもたちから「お母さんのような人が駅にいてくれたら小学生はうれしいと思うよ」と勧められ決断した。
駅での見守り活動は登校時だけとはいえ年間約200日。「制服を着ると自然としゃきっとする」。子どもの引っ越しや冠婚葬祭を優先したことはあるが、体調を崩して休んだことは一度もない。
時にはけんかを止めたり、悩み事を聞いたり、保護者の代わりに忘れ物を届けたことも。「小さい子が日に日に成長していくのが楽しみで」。今年11月、JR東日本大宮支社の大西精治(おおにしせいじ)支社長から感謝状を受け取った。
黒田原小6年藤田海音(ふじたのあ)君(12)は「駅で磯さんの顔を見ると安心する」と感謝する。磯さんは「子どもたちのおかげで私も元気でいられる。この仕事に定年はないので、できる限りやっていきたい」と話した。