収穫量を多くしない選択で、胸を震わせるようなワインを

2021年10月、三笠市にワイナリーを開いた宮本ヴィンヤードの宮本亮平さん。三笠市は近年、ワイン用のブドウ畑が増えている北海道のマチのひとつ。「ヴィンヤード」とは、ワイン用のブドウ畑のこと。宮本さんは2012年に三笠に移り住み、2015年からは宮本ヴィンヤードの名前でワインをリリースしています。

宮本亮平さん

宮本さんは福岡県出身。料理人の道を歩むうちにワインの魅力にはまり、長野、ニュージーランド、フランスでぶどう栽培と醸造を学びました。「自らの手でワインを」と、長野や山梨、北海道で土地を探していましたが、三笠の環境にひかれ移り住むことを決意しました。現在は3カ所に分かれた合計3ヘクタールの畑で、ピノ・ノワール、ピノ・グリ、シャルドネの3種類のブドウを育てています。

移り住んだ当初は、他のワイナリーの栽培や醸造に携わりながら、自らの手で畑を切り開き、2020年は6トンのブドウを収穫し、約6,000本のワインを出荷。宮本さんのワインは、初リリースから5年ながら、ピノ・ノワールを使った「ヴォロンテ」を中心に瞬く間に人気となり、すでに入手困難な作り手として知られています。

人気のヴォロンテ

「自分が造りたいワインのイメージが最初にあって、そこに到達するにはどういう木を選んで、どういう台木を選んでどこに植えたら良いかっていうのを想像しながら計画します」と語る宮本さん。ブドウの育て方の特徴は、自然を尊重するだけではなく、「収穫量を多くしない選択」をとっていること。

中でも宮本さんが一番好きなピノ・ノワールの畑は、やせた土地にあえて弱めの台木を使うことで、実の味を凝縮させたワインができると言います。畑がある三笠は、かつて海の底だった場所。海由来のミネラルがブドウの味に良い影響を与えていることは言うまでもありません。宮本ヴィンヤードの土質は重粘土だといいますが、礫(小さな石)が混じっているため、水はけがよく、実の味の凝縮につながっているそう。とは言え、予想以上に収穫量が少なく、思うようなブドウが採れる畑の形にするのには、5年もかかったと言います。

ピノノワール

宮本さんこだわりのピノ・ノワールを使ったワインが「ヴィーニュ・シャンタント ヴォロンテ」(2019年産は6,500円)。果実の凝縮感を物語る濃い色調に、なめし皮のような香り。果実感と酸味、うまみのバランスが取れた味わい。5年以上寝かせても、出荷直後でも、どちらもそれぞれの楽しみ方ができるワインです。

知人と共同で建てたワイナリー

今年、自前の醸造所を知人と共同で建てた宮本さん。今までとやるべきことは同じと言いますが、「集中して自分の思いを注げる」と、新たな挑戦にも意欲を見せます。現在は3ヘクタールですが、今年は1ヘクタール、来年は0.5ヘクタールの畑を増やし、新しい品種やスパークリングワインにも挑戦したいと言います。夏場、高温で少雨だった2021年は収穫が2週間早く、病気の発生がほぼなく、出来が良いと言います。今から2023年の出荷が楽しみです。宮本ヴィンヤードのワインは、春先にインターネットでのみ販売。毎年4月には完売するそうです。

(2021年12月11日放送 テレビ北海道「土曜旅館 今知っておくべき北海道のワイン」で取材させていただきました)

© テレビ北海道