高齢者の困り事、住民が手助け 時津町全体へ“ささえ愛”の広がり期待

高齢女性の依頼を受け、寝室に掃除機をかける「はこべらの里・ささえ愛たい」の田中さん(左)=時津町

 長崎県西彼時津町で、高齢者の生活の困り事を住民同士で支え合う動きが活発になってきた。高齢者有志による有償ボランティアの一つ、「はこべらの里」は、ごみ出し支援など具体的な取り組みをスタート。町全体への広がりが期待されている。

□「手助け必要」

 11月上旬、同町浜田郷に住む1人暮らしの80代女性宅。「はこべらの里」の生活支援を担う実動隊「ささえ愛たい」メンバー、田中町子さん(71)が訪れ、女性に指示を仰ぎながら約30分、寝室や居間などに掃除機をかけた。一通り掃除が済むと、女性は「気持ちがいい」と声を弾ませ感謝した。
 女性は腰と手首に痛みがあり、掃除機をかけるのが苦手。以前は長与町に住む70代の妹が来てくれていたが、バスの便が悪いのが気の毒で「ささえ愛たい」に頼むことにした。利用は2回目。「なるべく施設に入らず、自分一人ででも生活しようと思っている。そのためには手助けが必要。助かる」と女性。田中さんも「喜んでもらえてうれしい」とほほ笑んだ。
 国は2025年をめどに地域包括ケアシステムの構築を目指している。同町はこれに向けて「地域支え合いのまちづくり」を実施しており、「はこべらの里」の活動もこの一環。町内四つの小学校区ごとに住民主体の協議体を組織し、それぞれ活動する予定。
 はこべらの里は時津東小校区でモデル地域に指定されている。17年から協議体のメンバーで地域内のニーズ調査など準備を重ねてきた。20年6月、住民が気軽に集える居場所「はこべらの里・茶屋」を開所。70代を中心に約30人で「ささえ愛たい」を結成し、10月からお年寄りの生活支援などを始めた。
 対象は、単身か夫婦のみの高齢者世帯。買い物代行や電球の取り換え、掃除など日常の困り事をサポートする。利用に際し介護度認定は必要なく、料金は30分200円のチケット制。ただ利用者は現在まだ2人にとどまる。
 はこべらの里の代表、相川繁春さん(73)は「私たちの活動を知ってもらいたい。元気な高齢者が、手助けを必要とする高齢者を支えることで、住み慣れた地域で楽しく生活してほしい」と願う。

□介護予防効果

 支える側も多くは高齢者だが、体を動かし、「地域や社会から必要とされている」と実感することなどで介護予防につながるという。住民同士で支え合う「互助」。町全体の生活支援コーディネーターを務める町地域包括支援センター保健師、石丸友子さん(58)は「無理なくできることをできるときに、が基本。皆さん楽しそうに活動しているのがうれしい」と話す。
 町内では、時津北小校区でも協議体「つんなむの会」が発足。残る時津小、鳴鼓小校区でも来年度までに協議体ができる予定。今年10月末現在、時津町の総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は26.9%。全国平均28.7%(20年9月)より低い。
 石丸さんは「(高齢化率が)低いからこそ、支え手側が多く、住民が支え合う文化をつくれるチャンス。『自分ができるときに手伝っておこう』という気持ちが、世代交代しながらうまく循環していってほしい」と期待する。


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