引退せまる?EF66 27(ニーナ)

EF66 27 (P:服部敏明)
東海道本線 南荒尾(信)-関ヶ原 2021.11.15
NikonD5 AF-S NIKKOR 70-200mmF2.8G ED VR-Ⅱ 1/1250 f4 ISO100

JRの機関車で鉄道ファンに絶大な人気のあるEF66型27号機(通称ニーナ)に引退の危機が迫りつつある。自動車の車検にあたる全般検査(通常6年周期)からすでに6年半が経ち、最後の台車検査(2年周期)からも2年が経過しており、いつ運用離脱してもおかしくない状態だ。

ニーナは1973年8月15日に落成され、48年間貨物牽引一筋に稼働。

昭和・平成・令和と三つの時代を駆け抜けてきた。

同じ形態のEF66がブルートレイン牽引の先頭に立ち長年活躍、2009年の「富士・はやぶさ」の引退とともに下関機関区のEF66が全機廃車となり、唯一無二の国鉄特急色を堅持するEF66としてファンの羨望を集めてきた。

私もこの機関車に惚れ込み、ここ10年程はこのニーナ一筋に撮影してきた。

EF66 27 (P:服部敏明)
東海道本線 近江長岡-醒ヶ井 2019.7.23
NikonD5 AF-S NIKOOR ED 200-500mmF5.6G 1/800 f4 ISO160

ニーナは東海道・山陽本線を中心に日本の大動脈を東奔西走。

吹田機関区の所属でありながら、関西を昼間に通過する運用は少なく、京都市在住の私は27号機を追って何度も東海や関東エリアまで足を伸ばした。

未明、早朝の通過が多い貨物列車ゆえ、撮影への出発は未明の2時起きは当然で、とても苦しくも楽しい日々であった。

その撮影は、たった1両ゆえ困難を極め、自分の休日と撮影機会が合うことは稀。

ましてや運よく撮影に行けたとしても。天候条件に恵まれるとは限らない。

複線や複々線の列車被りや裏被り、他車との並走のリスク、また貨物編成が短かったり、空のコンテナが多いと写真としても締まらない。さらに、直前の運用差し替えや列車の運休もあるので、なかなか撮影予定が立てられない。

更に2018年夏の西日本豪雨の影響で、2019年のダイヤ改正では、東福山以西への入線が皆無となってしまった。好撮影地の点在する東福山以西の撮影が出来なくなったのは本当に痛かった。

それでも休日に少しでもチャンスがあると、どんなに天気が悪くてもニーナを求めて昼夜を問わず撮影に出掛けた。

EF66 27 (P:服部敏明)
山陽本線 塩屋-須磨 2020.12.9
NikonD5 AF-S Nikoor ED 500mmF4 D 1/1000 F4 ISO100

撮影地で待っている時の緊張感は格段に高く、貴重な被写体ゆえに、上手く撮れた時の喜びは計り知れない。

撮影で心掛けていることは、まず撮影地でベストポジションを確保する事。

遅くとも2時間前、早ければ5時間前に現地へ到着する。どんなに広い撮影地であってもベストポジションは限られ、30センチカメラ位置が動くだけで写真が変わってくる。

あとは、映り込む不要な人工物は極力排除する事。一本のポール、ひとつの電線でもカットする事で写真がスッキリし画面に緊張感が出る。更に極めるなら、串パン(機関車のパンタグラフと背後のポールの重なり)回避は当然として、機関車のワイパーの位置、乗務員のマスクの有無等、自分ではコントロール出来ない事まで執拗に拘ってきた。

不要物を排除できない場所では撮らないし、ベストポジションを確保できないなら、他へ移動するという事を徹底している。

写真の優劣を決める最も重要な要素の「光」にも最善の努力を傾けてきた。ニーナに関しては、どんなに天気が悪くても撮影には行くが、晴れていると格段に気合が入る。

EF66 27 (P:服部敏明)
城東貨物線 吹田貨物ターミナル―神崎川(信) 2021.6.3
NikonD5 AF-S NIKKOR 24-70mmF2.8G ED 1/1000 F4 ISO100

朝夕に通過する事が多いニーナには斜光線を生かした写真を撮ることを信条としている。

これほどまでに情熱を傾けたニーナとの別れは突然訪れる事になった。

2021年11月26日、新鶴見から稲沢へ3075レを牽引してきたニーナが稲沢機関区で小休止、次の運用に就く予定が突如差し替えられた。

機械室で大きな故障が発生したようで、吹田機関区へ無動力回送になった。

今までも幾度もの故障を乗り越えてきた機関車だが、果たして「不死鳥伝説」の第三章、奇跡の復活はあるのだろうか。

【著者】服部敏明

1959年 京都市生まれ 京都市在住 小学6年生より、当時のSLブームに乗り最後の現役蒸気機関車を求め、北海道、九州など全国を旅する。 1976年 蒸機全廃後は急速に鉄道への熱が冷め、学生時代はラグビーに 熱中する。 1988年 北海道の蒸気機関車C62 3復活を機13年のブランク を経て鉄道趣味にカンバック。 1995年 C62 3運転休止後は国鉄型車輛を中心に撮影を続け 「余部鉄橋」「日本海」「EF66 27」等にハマり、鉄道雑誌への カラーグラフ、撮影ガイド等掲載は数十回を数える。

■主な著書 「NORTHDRAFT」光村印刷刊 「四季 余部鉄橋」 神戸新聞総合出版センター刊 「蒼き疾風 ~EF6627に魅せられて~」Kindol刊

■NPS(Nikon Professional Services)会員

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